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アイドルとアーティスト

2014/11/26

 アイドルという言葉は、偶像という意味の英語の idol に由来するものだそうです。idol の示す偶像には目に見えないものを具象化させたもの、すなわち宗教的な神やそれを描いた絵画や彫刻などがあり、これを崇拝したり信仰したりすることが、いわゆるアイドル礼賛であるわけです。かつてはフランク・シナトラやビートルズが、アイドルとして認知されていたとも言われています。
 筆者が考えるアイドル像は、日常的な人間で周りからもてるといった人材では役不足で、その本来の意味合いのように、手の届かないところにいて万人が知り憧れる、超人的な異彩を放つ存在でなくてはならないといった感じです。アイドルは生身の人間が演じるものではありますが、芸能業界の様々な才能と労力によって作り上げられる理想の存在であり、演じるのは人間であっても作られた存在です。常人では手の届かない一流の美容術、一流のメイク、一流のファンションで飾られ、一流のアーティストが作った作品を完璧に演じ、万人の恋人にして本人のプライベートは極めて小さく、生活のほとんどが衆目にさらされた状態、そうした特異な存在、それがアイドルです。
 電脳ネットワークが充実し、情報化時代とも言われる現代では、プロのノウハウが一般人の生活の中に流出し、芸術の分野ではプロアマの線引きがどんどん曖昧になり、アイドルも業界が作り上げるものとは限らず、地下アイドルといったマイナーな存在もどんどん増え、それがメジャーなアイドルにまで登り詰めることもあり得ないことではなくなって来ました。あまり名のしれない地下アイドルでは、アイドルである時間も長くはなく、プライベートの時間もたっぷり持っているのでしょうが、メジャーな、知名度の高いアイドルになるとプライベートの時間はほとんど持てず、存在が神格化されます。
 筆者は、宗教を信仰したり、アイドルにのめり込んだりするタイプの人間ではありませんが、アイドルに熱を上げ、追いかけたり、せっせとCDやグッズを買い求めたり、情報交換ネットワークに参加し、アイドルの動向を常にチェックし、そのことが生活の重要な部分を占める、というふうにはなれませんが、そのような人たちの気持ちは解りますし、ファンとアイドルの関係も無益だとは考えません。有名なアイドルともなるとひじょうに大勢のファンに愛されていて、その人たちのおかげで、リリースする楽曲がことごとく歌番組等で上位になってしまう、そうした状況を本末転倒のように批判する人もいますが、筆者はそうは思いません。楽曲の素晴らしさとランキングが一致していない、人気アイドルが歌えば平凡な曲でも名曲になってしまう、それで良いと思います。芸能業界が売り出す作品というものは、楽曲と歌手が表裏一体のものなのです。同じ楽曲でも売れない歌手が歌う場合と人気アイドルが歌う場合とでは商品価値すなわち売り上げランキングや歌番組でのファン投票が大きくちがうわけです。
 ジャズやクラシックファンにしてみれば、楽曲よりもアイドル重視の芸能界の有り様を、いかにも俗っぽいと感じるかもしれませんが、クラシックファンとて、有名な指揮者が棒を振る一流の楽団による演奏を素晴らしいと認めるわけです。そこにはアイドル心理に似た感情があるはずです。有名な指揮者や楽団の技術が卓越しているからだとおっしゃるかもしれませんが、ポップス歌手だって様々な面で卓越しているのです。古典的な音楽のような歌唱や演奏の技術のみならず、ルックスや立ち居振る舞い、個性や演技といった、現代の映像表現文化ならではの素養を培って、アイドルという存在を完成させているわけです。
 音楽性というものがいかにも高尚で、アイドル信望が世俗的という概念から、人気アイドルの演じる楽曲が売れる現象を見下す人も少なくありませんが、多くの大衆心理を惹きつけるアイドルを築き上げる現代の芸能業界は、あらゆるジャンルのエキスパートを総動員して万人に愛される人格を完成させるわけですから、言わば芸術の集大成でもあり、単なる若い子だましではありません。アイドル信者に多感な若い世代が大勢引き込まれるから、若い子だましのように見えるわけです。
 最近では、暮らしのゆとりや文化的生活の向上から、年配になってもアイドル信望を卒業しない人、むしろ年配になってからアイドルにハマる人がどんどん増え、アイドルの支持の仕方、アイドルに求められるものも高度になりつつあります。
 アイドルというものを極めてポピュラーなものにし、楽曲よりもアイドルの育成に尽力して、若いファンを獲得しようとしたのは、日本の芸能界でとくに顕著で、アイドルのイメージを平易なも
のにした原因の多くはJ-POPにあるような気がします。歌唱力がなくてもルックスが優れていればアイドルに仕立て上げてしまう、そうしたコンセプトを音楽にくっつけ、レコードの売上を伸ばしちまおうとしたのは、日本の芸能界の大きな特徴です。それは日本で大成功し、歌はいまいちだけど可愛さカッコ良さは抜群といった歌手がたくさんデビューしました。
 その反面、アイドル性、スター性ということよりも、音楽の素晴らしさを演じたいといった、ピュアなポップス歌手も、アイドル歌手と相乗効果的に育まれ、J-POPは、アイドルとアーチストに二分するといったユニークな傾向が生まれました。
 K-POP業界が歌手をアイドルと呼称するのは、おそらく日本の影響が大きいと思われます。韓国でも伝統音楽やドロット、バラードを歌う歌手以外に、アイドルを育てようというコンセプトから現代のK-POPへの傾倒が育まれ、それがさらに発展して一流の音楽プロデューサーが曲を作り、高度なダンステクニックをマスターしかつ歌唱力も備えた歌手にそれを演じさせようという夢のプロジェクトへと発展して行き、それが世界を魅了する音楽ジャンルへと進化を遂げたのでしょう。
 K-POP業界では、同じアイドルと呼ばれる歌手でも技術レベルがちがいます。J-POPではアーティストと呼ばれる人材が、アイドルを演じています。日本人の感覚ではアイドルというとアーティストよりも技術が劣るルックス重視の歌手といった見方がありますが、K-POPでは、アーティストレベルの技量を持った歌手がアイドルを演じるわけです。かつてフランク・シナトラやビートルズがアイドルとして認知されたとするなら、K-POPスターの方がむしろ本来のアイドルに近い姿なのかもしれませんね。
 少女時代が日本の歌番だったかバラエティだったかで、アイドルよりもアーティストと呼ばれたいと言っていたのを聞いた覚えがあります。歌手の音楽への思いや取り組みが言わしめた言葉のように筆者には聞こえましたが、その思いとファン意識、あるいはアイドルを売り出す業界の思惑といったものには、それぞれギャップがあるかもしれませんね。
 ぶっちゃけ、アイドルとアーティストの線引きというものは、曖昧なものなのでしょうし、曖昧なもので良いのでしょう。アーティストがアイドルやっていいですし、アイドルがアーティストを自称しても問題もなければ違和感もありません。歌手自身が自分はアーティストだと思ったところで、大勢のファンが信望すればアイドルになってしまいます。

 筆者は、中高生の頃からずっとオタクで、オタクという言葉が生まれる前からオタクで、アニソンや電波ソングに親しんでまいったのですが、なぜだかアイドル歌手に入れ込んだことはあまりありませんでした。日本アニメが世界的な文化として成長するにつれ、名だたる歌手がアニソンを歌い、声優がアイドル化したり本格的な歌手になったりし、J-POPとアニソンの線引きもすっかりなくなってしまってからも、日本の芸能業界にはうといままでした。これにはあまり意味がありません。おそらくJ-POPをチェックしているヒマがなかったのでしょう。
 それが、K-POPを聴くようになってから、J-POPのアイドル歌手にもいくらか関心がわくようになりました。日本の可愛いアイドルだって悪くありません。AKBだってモモクロだって良さげな歌がありそうです。
 K-POP歌手は、日本の芸能界のどんどん殴り込みをかけて来ます。日本のレコード会社からどんどん日本語の歌をリリースします。日本とはそのうように密接な間柄なのに、やはり日本のアイドルとは同じではありませんね。可愛い系のアイドルで売っていた GIrl's Day や STELLA がセクシー系に転向して成功したように、私立恵比寿中学 や 乃木坂46 がセクシー系に転向しても成功するでしょうか? セクシー系の AFTERSCHOOL から派生したユニット ORANGE CARAMEL は真逆のパターンで成功しましたが、これも日本のアイドルには真似できそうにない気がします。
 今年日本デビューした APink は一貫して可愛い系を通し、大ヒットを飛ばしましたが、日本のアイドルの可愛い系とはかなり差異があるように思えます。CRAYONPOP からつい最近派生したユニット STRAWBERRY MILK は日本の可愛いに肉薄していますし、INFINITE の妹分としてホットデビューした LOVELYZ も学校制服姿で登場し、可愛い好きの注意を大いに引いたと思われますが、今後どうでしょう? 予測がひじょうに難しいですね。

 音楽が見せるものとして発展してきた現代、歌手がアイドルとして神格化され、音楽性以上にファンの憧れと化してしまった現代、音楽業界をリードするものは、もはや単なる音楽ではなくなってしまいました。音と映像と人々の憧れを融合した芸能を、音楽とはちがった新たな呼び方で呼称するべきではないのか、そんなふうに思ったりもします。それが今のところはアイドルというものであるのかもしれませんけどね。

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