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O嬢の物語【映画】

2020/05/25


 恋人のルネに連れられてロワシーの館に入ったOは、そこで男たちに凌辱され、調教を施されます。そこでは何人かの女性が同じように拘束されており、男たちの玩具になっていました。
 約1ヶ月の後、解放されたOは従来のファッション写真家の暮らしに戻りますが、ルネからステファン卿という男を紹介されます。ルネはOをステファン卿に譲渡し、Oもそれを受け入れます。
 ステファン卿の所有物となったOは、さらに激しく調教され、尻に焼き印を押されます。そしてセレブが集まる夜会に、全裸でフクロウの仮面を付けた姿で参加します。

 1954年に刊行されたフランスのポルノ小説を映画化したもので、ストーリーは原作を忠実に再現しています。原作小説は1955年にドゥ・マゴ賞(フランスの歴史ある文学賞)を受賞するなど、文芸作品として高く評価されました。作者のポーリーヌ・レアージュは、女性名ですが、筆者がこの映画を観た頃はまだ正体不明の作家とされていたように思います。映画化に際して起用された監督は「エマニエル夫人(1974)」で一躍有名になったジュスト・ジャカンで、彼はパリのファッション写真家としても有名で、物語の主人公Oと職業がかぶっています。
 O嬢を演じたコリンヌ・クレリーは、元ファッションモデルで、この映画を機に女優として名を馳せ「007 ムーンレイカー(1979)」でボンド・ガールも演じています。
 ホームビデオとレンタルビデオショップの普及により、映画館で上映されるポルノから客が遠のき、日活ロマンポルノが製作休止となるまでは、街や書店にはポルノがあふれていました。街のそこここにポルノ映画のでっかいポスターが貼られていて、筆者らは子供の頃から当たり前のようにそれらを目にしていました。映画「男はつらいよ」を見に行けば、一般作品に加えて成人映画の予告編が上映されました。
 映画好きだった筆者らが毎月のように買っていた「スクリーン」や「ロードショー」といった洋画専門雑誌には、日本公開される海外ポルノが写真入りで紹介されましたし、本作や「エマニエル夫人」はポルノではないけれど18禁の文芸作品という枠組みで大きなカラー写真で数ページに渡って紹介されました。
 一流映画館でも18禁であっても青春ドラマや芸術作品はどんどん上映されましたし、一般映画でその予告編を見ることができました。封切公開期間を終えた旧作を上映する二流館は、筆者ら高校生も一言注意するだけで18禁映画上映中も入館させてもらえましたから、筆者は洋画雑誌でこの作品を知り、高校生なのに映画館でこの作品を観ました。
 当時は女性のヌードが街に氾濫し、テレビでも23時以降は裸祭りでしたが、アンダーヘアの露出は厳禁でしたから、劇場で観た本作は、映倫のスタッフがせっせとヘアをスプレーで消したフィルムで上映され、裸婦が小さく写っているシーンでは、ぼかしのせいで足と顔しか見えないじゃん、みたいなことになっていました。現在DVD版で入手できるものは、ヘア解禁版です。
 SM文化については、日本でもけっこう歴史があり、日活ロマンポルノでは人気のジャンルでしたし、SM雑誌や写真集も刊行されていました。本作で触発された筆者が古書店でその手の雑誌を入手したところ、グラビアページは美しいものでしたが、投稿写真や経験談のページには大いに幻滅されられました。SM汚っ、悪趣味、けものかよ。げんなりした筆者は、そこから遠ざかってしまいました。
 最近のAV作品はひじょうにハードな内容のものでも綺麗な映像になっていて悪くないですね。

 映画の話しに戻りますが、監督が写真家で主演がモデル出身ということで、ひじょうにファッショナブルでセンシブルな映像です。ロワシーの城館はセレブの世界ですから、設備も豪華で芸術的です。まるで絵画が動いているような映像に魅せられます。
 Oは恋人のルネに求められるままにロワシーで激しい調教を受け、そこを出るとステファン卿に譲渡されてしまいます。その境遇を彼女はすべて受け入れ、屈辱に身を委ねます。でも、彼女は俗にいう奴隷になったわけではないようです。ロワシーで彼女に鞭打つ係だったピエールが交際を申し込むと、自分の意志できっぱりと断りますし、ステファン卿に対してさえ、しばしば毅然とした態度を取ります。
 ステファン卿はOを所有し、欲しいままに凌辱していながら、いつに間にか彼女の虜になっています。女性を虐待しながら、その美しさに崇拝され支配されてゆくという耽美思想は、日本の緊縛にも通ずつものがありますね。SMはじつはひじょうにフェミニンな文化であり、男性は女性に隷属する脇役です。

 美しい映像に圧倒されますが、ピエール・パシュレによる音楽もひじょうに美しいです。彼は「エマニエル婦人」ほかのジュスト・ジャカン監督作品でしばしば音楽を担当していますが、O嬢のテーマがやはり最高です。

 のちに「O嬢の物語・第二章(1984)」が製作されました。スタッフもキャストも一新され、前章の数年後を描いていますが、これは原作にはないオリジナルストーリーです。さらに「新・O嬢の物語(2003)」がアメリカで制作され、O嬢の物語を現代(2000年代)に置き換え、ストーリーも改変されましたが、これは不評でしたね。お話しのコンセプトはじつに良かったのですが。

 2011年、官能小説「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」が発表され、大変な話題になりました。2015年には同名で映画化され、その後3作が映画化されました。O嬢の再来なるかと期待したのですが、特異な性癖を持つクリスチャン・グレーの罠にはまったアナスタシアの物語で、2作目3作目と進むにしたがって事件性が強くなり、おしゃれでエロチックなサスペンスといった作品になってゆきました。
 O嬢は今でも官能作品の金字塔で、これを越えるものはいまだに存在しませんね。

原題:Histoire d'O。
1975年フランス/カナダ/ドイツ、105分、翌年日本公開、R18+。
原作:ポーリーヌ・レアージュ。
監督:ジュスト・ジャカン。
脚本:セバスチャン・ジャプリゾ。
出演:コリンヌ・クレリー、ウド・キア、アンソニー・スティール、ジャン・ギャバン、クリスチアーヌ・ミナッツォリ、マルティーヌ・ケリー、リ・セルグリーン、アラン・ヌーリーほか。

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