kepopput.jpg

魔眼の匣の殺人【小説】

2020/03/25


 裟可安湖の集団感染テロに巻き込まれた葉村譲と剣崎比留子は、テロの首謀者と目する斑目機関の謎を追って山間の寒村好見を訪れます。もう50年以上もむかし、斑目機関はここで秘密の研究を行なっていたらしいのです。しかし好見には人が見当たりません。
 バスの中で偶然に出会った高校生 十色真理絵、茎沢忍と共に辺りを捜索するうち、赤い派手な装いの朱鷺野秋子に出会います。彼女は墓参りでここを訪れた好見の元住人でした。そしてさらに車のトラブルで近くをさ迷っていた大学教授の師々田厳雄とその息子で小学生の純、ガス欠で動けなくなった王寺貴士、ジャーナリストの臼井頼太が合流することになります。一行は、朱鷺野秋子の案内で丸木橋を越えて真雁という土地に入ります。
 真雁には、真雁の匣(はこ)と呼ばれる古い施設があり、そこにはサキミという老婆が独りで住んでいるとのことでした。
 真雁の匣には好見の住人で神服泰子という女性がサキミの世話をしていました。彼女は淡々とした調子で一行を迎え入れ、サキミとの面談を取り次いでくれます。
 サキミは大そう高齢で、かつてここで斑目機関の研究の被験者だった過去を打ち明けます。彼女には予知能力があり、当時超能力の研究をしていた斑目機関の恰好のターゲットでした。そして最近になって彼女は、11月最後の2日間に、真雁で男女が2人ずつ4人死ぬという予言を公表し、好見の住人たちは難を恐れて一時的にこの地から大挙していたのでした。そして一行が真雁を訪れたのが、まさにその日時でした。
 そうこうする内に、真雁と外界をつなぐ唯一の丸太橋が焼け落ち、一行はそこから出られなくなってしまいます。

 高校生の十色真理絵には奇妙な能力がありました。彼女は突然憑りつかれたように絵を描き始め、その絵が間もなく起こることを予知しているのです。橋が焼け落ちることも彼女はその直前に絵に描いていました。茎沢忍は中学生時代いじめに遇っていて、真理絵の予知能力に救われて以来、彼女にくっついていました。この高校生コンビが真雁を訪ねて来たのは、サキミのうわさを聞いたからでした。
 師々田親子と王寺貴士は、移動手段のトラブルでたまたまここに足止めされました。
 月刊アトランティスというミステリー雑誌の記者をしている臼井頼太は、社に届いた匿名の情報をもとにサキミに取材に来たのでした。
 葉村譲と剣崎比留子は、神紅大学ミステリー愛好会のメンバー、一回生の葉村が明智恭介のあとを継いで会長に、二回生の比留子は大学では先輩であるものの平部員です。しかしながら事件を呼び寄せてしまう体質からこれまで数々の難事件を解決してきた美少女探偵剣崎比留子に対して葉村譲は助手のような立ち位置を払拭できません。譲は明智に対しては彼のワトソンであとうとしていましたが、比留子のワトソン役には葛藤があるようです。それは彼女がホームズとして役不足であると感じているのではなく、むしろその逆で、彼女の卓越した能力と抱えている問題が重すぎることに対する畏怖のような感情でした。一方、比留子の方は譲のミステリーマニアとしての能力を買っていて、しばしば彼に教えを請うています。
 2人のこの関係にはひじょうに好感が持てますし、このいささか複雑な感情的事情を構築する著者の手腕に感心させられます。今村昌弘という作家は、本格ミステリーにゾンビや超能力といったSFじみた設定を大胆に導入しながら、キャラクターにリアリティを与えることに長けていて、そんなところが斬新ですごい作家だなぁと感じます。

 前作では、舞台が大学の合宿ということもあって、物語りがライトな雰囲気に包まれていましたが、今作では謎の斑目機関の歴史や所業の一部が明らかになり、より深刻なミステリーになっています。
 我々が普段目にする日常とはかなりかけ離れたシチュエーションで起きる奇怪な殺人事件をご堪能下さい。

2019年、東京創元社。
著者:今村昌弘。

コメント
コメントする








   

目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


索引 韓流映画&番外編





   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  
<< April 2020 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES










recent comment

links

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM