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スウィング・キッズ

2020/03/02


 1951年、朝鮮戦争は列強米ソの代理戦争と化し泥沼化していました。韓国の巨済(コジェ)島捕虜収容所には多くの北朝鮮人が収容され、米軍がそれを管理していました。新たに収監されたロ・ギスは、共和国の英雄として捕虜たちに迎え入れられます。
 新任の所長は、収容所で捕虜たちが快適で文化的な生活を送っているというPRのために元ブロードウェイのタップダンサー ジャクソンにダンスチーム結成を命じます。
 オーディションの結果、誤って収監された民間人のカン・ピョサム、太っちょ中国人のシャオパン、慰問に来ていたダンサーで4カ国語を話せるヤン・パンネが抜擢されます。しかしジャクソンは、厄介者のロ・ギスのダンスの実力を見抜いていました。彼はギスにタップシューズを与えます。

 朝鮮戦争は、1948年に朝鮮民族の分断国家として建国された大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国が、朝鮮半島の覇権を巡って勃発した戦争で、1950年6月25日に金日成(キム・イルソン)率いる北朝鮮が北緯38度線を越えて韓国に侵攻したことに端を発しています。これに西側自由主義陣営を中心とした国連軍と、東側社会主義陣営が支持する中国人民志願軍が参戦、戦火は朝鮮半島全域におよび3年間続きました。その後休戦協定が結ばれましたが、北緯38度線はアメリカ軍とソ連軍の分割占領ラインとして現在も北朝鮮と韓国を分断しています。
 本作の中では、ソ連(ロシア)の社会主義とアメリカ資本主義の戦いとも表現されています。
 クリスマスにマスコミを呼んでイベントを開催した際、ジャクソン率いるタップダンスチームには、ピョサム、シャオパン、パンネ、そしてギスが参加しましたが、ジャクソンは演目のタイトルを「ファッキン・イデオロギー」と紹介しています。思想信条のちがいを利用し、列強国が朝鮮半島に大規模な破壊と殺戮を持ち込んだことを、痛烈に批判した言葉ですね。彼は収容所生活で朝鮮民族の惨状を目の当たりにし、1度は思想犯として逮捕されています。

 民間人のピョサム、中国人のシャオパン、収容所に慰問に訪れたパンネ、そして共和国軍の兵士として戦っていたギス、それぞれ立場や考え方のちがいを越えて参加しています。リーダーのジャクソンは米兵でいわばギスたちの敵の立場です。しかし黒人の彼は人種差別に苦しんでおり、彼の目線で見た現地の惨状は、彼に差別や戦争に対する義憤を生じさせます。
 収容所に集まった様々な人間が、団結して音楽に情熱を傾ける、そんな青春ドラマだと思っていたのですが、根底に流れる社会批判はひじょうにどろどろとして痛烈です。最初はワクワク感が高まり、リズミカルな演技とおかしな表現に笑みもこぼれますが、お話しが核心に近づくにつれて笑えなくなってゆきます。

 ロ・ギスは共和国軍の英雄です。その彼が韓国軍に加担するアメリカ人と共にダンスなどできるはずがありません。彼はジャクソンと練習に励むのをひた隠しにしています。しかし収容所の奥底で反乱の機を狙って終結しつつある者たちにそれがばれてしまいます。反乱の指導者はロ・ギスを泳がせ、クリスマス・イベントの渦中に所長を暗殺させようとし、ギスもそれを承諾します。

 朝鮮戦争は休戦に至ったものの今日も終結していません。2018年には朝鮮半島の統一を目指す板門店宣言が発表されましたが、いまだに終戦には至っていません。こうした世情の中で、この作品が公開されたことは大きな問題定義ですね。
 観客の中には、よくこんな映画の公開を政府が認めたものだという声もありました。主人公ロ・ギスを演じたド・ギョンスも勇気ありますね。しかし民衆の目線で反戦や人道主義を唄った作品は、往々にして容認されるものです。これまでにも数多くの反戦をテーマにした作品が作られました。

 ひじょうに重いテーマとは裏腹に、ダンスチームの軽妙なステップはほんとうに素晴らしいです。ミュージカルのような、テンポに乗った演出と痛快なユーモアにも心躍らされます。
 クリスマス・イベントで披露した演目が終了してもなぜかステージを去らないギスが踏み続けるステップに、ジャクソンの脳裏にカーネギーホールの幻影が浮かび上がります。みんなの努力が結実した瞬間です。
 いつかチームでブロードウェイの舞台に立とう、ジャクソンは練習中にそんなことを口にしていますが、朝鮮人や中国人のメンバーはいまいち理解できない顔でぽかんとしているだけでした。
 そして、夢は残酷な現実によって引き裂かれます。

 人間社会は、圧政や戦争、数々の残忍な行ないで満ち溢れています。それを増長させているのは大勢の市民の無関心だと、筆者は多くの作品から教えられました。しかし本作では、市民の戦争への関心が人々を争いに導き、多くの血を流すことにつながっています。社会から争いをなくすというのは難しいことですね。
 戦争は多くの破壊と犠牲を人々にもたらし、遺恨が何代にも渡って残されます。しかしそのことが次の戦争につながらないように、私たちは関心を持ち続けなければなりません。

2018、133分、2020年日本公開。
監督、脚本:カン・ヒョンチョル 。
出演:D.O.(ド・ギョンス)、ジャレッド・グライムス、パク・ヘス、オ・ジョンセ、キム・ミンホほか。

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