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犬鳴村【映画】

2020/02/18


 西田明菜は、恋人の森田悠真を伴って有名な心霊スポット犬鳴トンネルを訪れます。近くにある午前2時に鳴るという電話ボックスで待機しているとそれは本当に鳴り出し、明菜がそれに応じると封鎖されているはずのトンネルに進入することができ、その奥で幻の犬鳴村を見つけることができました。
 それ以来彼女の様子がおかしくなり、やがて死んでしまいます。警察が調べた結果死因は溺死でしたが、彼女が死んだのは水とは無縁の電波塔からの転落でした。
 悠真の妹の森田奏は、臨床心理医をしていますが、精神に問題を抱える子供遼太郎のカウンセリングをするうち、遼太郎の夢に出てくるもうひとりの母の影を見るようになります。遼太郎の父圭祐は、奏でに遼太郎が実の子供ではないことを打ち明けます。実の子は死産で、たまたま同じ病院で母を亡くし身寄りのなくなった新生児を妻の優子に内緒で自分の子として引き取ったというのです。
 明菜の葬儀のとき、父親は娘の死を悠真と付き合ったせいにし、悠真の父晃をののしります。晃は妻の綾乃を嫌っており、彼女が産んだ子供たちを恐れていました。奏でがその訳を晃に尋ねても、父は口を閉ざすばかり。やがて野獣と化した母綾乃を目の当たりにし、奏では母の出生の秘密を知ろうと、祖父の隼人訪ねます。隼人は綾のがかつて捨てられていた身寄りのない赤ん坊だったことを打ち明けます。
 隼人が若い頃、近くの山間の犬鳴村と呼ばれる地所に住む民は、犬を狩って常食しているとウワサされ、周りから孤立していました。棄てられた赤ん坊だった綾乃は、犬鳴村の子供だった可能性がありました。
 奏は、その村を訪ねてみようと思い立ちますが、隼人によると村はダム建設のために湖底に沈んだとのことでした。
 幻の犬鳴村に関心を持ち詳しく調べている人物がもうひとりいました。それは小学生の奏の弟康太でした。奏は康太を伴って犬鳴トンネルへと向かうのでした。

 この映画の題材となった福岡県の旧犬鳴トンネルは、実在する心霊スポットだそうです。トンネルの向こうには政府の統治が及ばない犬鳴村という集落があり、そこへ立ち入った者は生きて帰れないそうです。その場所にはダムが建設されていて犬鳴村は地図にも載っていません。
 犬鳴村は実在したのでしょうか。この映画で語られるようにダム建設のために湖底に沈められてしまったのでしょうか。
 好奇心から心霊スポットの動画を撮るべくトンネルを訪れた明菜は、この先は日本国憲法が及ばないと書かれた看板を見つけ、嬉々とします。そしてその先に立ち入ってはいけない場所が出現します。明菜はそこで恐ろしい体験をして気がふれ、やがて死んでしまいますが、それ以降この件に関係した者たちが何人か死に、いずれも死因は溺死でした。
 犬鳴村と溺死になんの関係があるのか不思議でしたが、後に隼人の証言で村がダム建設のために湖底に沈んだことが解ります。

 奏は幼い頃から霊感の強い子供でしたが、それは母綾乃の血を引くからでした。明菜の父が彼女の死を悠真と付き合ったせいだと晃を責め立てたのは、彼が綾乃の出生について何かを知っていたからかもしれませんね。そして綾乃の血を引く康太も、まだ小学生だというのに心霊スポットに異常な関心を持ち、犬鳴村について詳しく調べています。
 赤ん坊だった綾乃は犬鳴村が湖底に沈む前にそこを脱し、普通の家庭に育てられ、やがて晃と結婚して3人の子供にも恵まれます。しかし犬鳴村の呪いはいつまでも彼女を追いかけてきました。晃が恐れていたのはそれだったんですね。
 そして長男の悠真が付き合い始めた明菜が犬鳴トンネルの都市伝説に興味を示したのも、その呪いのせいだったのかもしれません。

 母の出生の秘密を知った奏は、今は存在しない犬鳴村へ行ってみることを決意します。そして彼女は犬鳴村の住人成宮健司と籠井摩耶に出会います。母綾乃がどうして犬鳴村を脱出したのか、その全容が明らかになります。

 この映画について知った時、都市伝説に魅せられた若者が恐ろしい呪い体験をする、そんな類の映画だと思いました。冒頭の明菜と悠真が動画を撮影するシーンも主観映像を用いたフェイクドキュメンタリーあるいはモキュメンタリー映画のような感じを受けました。
 でも、実際にはそんなこけおどしホラーではなく、古い伝承にまつわる悲しい人間ドラマでした。旧犬鳴トンネルは、現在映画と同じように閉鎖されて立ち入ることができないのでしょうか。もし立ち入ることができれば、犬の遠吠えのような物悲しい風鳴りが聞こえて来そうですね。
 犬鳴村の人たちは犬を食べるとうわさされ、周りから隔絶され、そこには日本国憲法も及ばないとされていました。そしてダム建設の推進者たちによって、村の娘は犬と交わっていると伝えられました。これらの醜聞は、村をダム湖の底に沈めてしまうための政府と工事を請け負った業者によるでっち上げだったのかもしれませんね。
 人来の絶えた山間の寒村など、国益のために沈めてしまえばいい、そんなことはよくある話しだ、隼人も奏にそう語っています。
 村は水の底に沈み、その存在は根も葉もない昔話になってしまった。しかし没する前に村を脱した赤ん坊によって村人の恨みは現世に蘇ったわけです。

 国家は、国益という大義のためにしばしばひじょうに残忍になります。その最たるものが戦争ですが、人に滅びをもたらし幾多の悲劇を産むこうした権力の脅威を、人間社会から取り除く手立てはないものでしょうか。そうやって犠牲になった人々の呪いというものが本当に存在するのなら、権力者に憑りつき死の恐怖をもたらしてほしいものです。

英題:HOWLING VILLAGE。
2020年、108分。
監督、脚本:清水崇。
脚本:保坂大輔。
出演:三吉彩花、坂東龍汰、大谷凜香、古川毅、宮野陽名、奥菜恵、須賀貴匡、笹本旭、田中健、海津陽、寺田農、石橋蓮司、高嶋政伸、高島礼子ほか。

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