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罪の余白【小説】

2020/02/24


 卓越した美貌を持ち成績も優秀な木場咲は、学校内では群れることもなく孤高の存在を維持していました。ただ同じクラスの安藤加奈と新海真帆にだけは気を許していて、3人はよく一緒にいました。咲に夜の盛り場に誘われた際、加奈は男で1つで自分を育てた父を心配させたくなかったので先に帰宅したのですが、それから先は加奈に冷たくなり、やがて咲と真帆による加奈への陰湿な攻撃が始まりました。
 テストで咲よりも点数が低かった加奈は罰ゲームを課されることになり、教室のテラスの柵に立ち、そのまま足を滑らせて転落してしまいます。
 娘を亡くしたショックから立ち直れない安藤聡は、大学の講師の仕事にもゆかなくなり自宅に引きこもります。同じ大学の先輩で助教授の小沢早苗は、安藤の母親に頼まれたこともありかいがいしく彼の世話を焼きました。
 しばらくしてひとりの少女が安藤を訪ねて来ます。彼女は、加奈がいじめによる自殺の証拠となるような遺書等を残していないか偵察に来た木場咲でしたが、安藤には別の生徒だと偽りました。
 娘のパソコンにログインすることに成功し、残されていた日記から、彼女がひどいいじめに遇っていたことを知った安藤は、咲と真帆を殺してやると宣言します。そして少女に2人を殺害するための計画を打ち明けます。
 安藤さえいなくなれば、自分のやったことはなかったことにできる、そう信じた咲は、罠にかかったふりをして真帆と共に安藤のマンションを訪れます。彼女には真帆もろとも抹殺してしまう意図がありました。

 先に観た同名映画の原作小説です。映画では木場咲はひじょうに強かな悪女で、安藤に正体がばれ、詰め寄られても平然とし、学校では他のあらゆる生徒を見下しています。親友の真帆さえ使える道具としか見ていませんでした。しかし原作ではそれほど類型化されておらず、彼女も悩み多きひとりの少女であることが解ります。アイドルとして芸能界入りを目指す彼女は、汚れた過去を残さないために加奈の日記とそれを知る父親、いじめに加担した真帆を抹殺する必要がありました。彼女は彼女で必死でした。
 小説では、見出しごとに語り手が代わり、それぞれの心境が克明に描かれます。その中で咲が怖いもの知らずの超然とした存在ではないことが解り、映画版よりも人間らしさが加わります。
 映画では、木塲咲が早苗を愚弄するシーンがありますが、あれは原作にはありません。映画では咲が大人をも手玉に取る大胆不敵な悪女として演出され、安藤聡の心理戦を盛り上げていますが、小説版の咲はもっと人間的でリアルです。

 安藤を一方的に世話する小沢早苗も、能面のように無表情の下に様々な苦悩が隠されていることが解ります。彼女は自分が他人とちがって状況を上手く把握できないことを自任しており、アスペルガー症候群や高機能自閉症の可能性を疑い医師の診断を受けていますが、明確な答えを得られませんでした。
 早苗は自分がせっせと世話を焼くことが安藤の心の負担になっていることにも気づけず、彼の邪険な態度に疑問を持ちながらも、世話を続けます。そんな彼女に安藤も心を開くようになり、彼女を信頼し頼るようになります。

 映画は咲と安藤の心理対決として描かれ、何事にも動じず安藤を嘲笑し続ける咲を、果たして安藤が出し抜くことができるのか、という構成になっていますが、小説では、加奈を追い詰めたとは言え殺したわけではない咲にどうやって一矢報いるかという安藤の一方的な攻勢に対し、彼の策を事前に察知した咲が、その裏をかこうとする展開になっています。

 ストーリー的にも小説の方がおもしろかったですが、小説では映像では描けない各キャラの心理が浮き彫りにされ、それも良かったです。総じて小説の方がおもしろかったかな。でもこれは筆者の感想であって、映画版の咲の魔性の美少女ぶり、悪女ぶりに魅せられた人も少なくないと思います。

2012年、角川書店。
著者:芦沢央。

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