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テリー・ギリアムのドン・キホーテ【映画】

2020/02/05


 スペインの田舎町で撮影を行なっていたCM監督のトビー・グリソーニは、ひょんなことから10年前に学生の頃の自分が撮った「ドン・キホーテを殺した男」のDVDを手に入れます。それを撮影した当時の村が近いことを知ったトビーは、独りでそこへ出かけます。そこには自分をドン・キホーテだと思い込んだ男が待っていました。彼は学生だったトビーがキホーテ役に抜擢した靴職人の老人ハビエルでした。トビーと再会したハビエルは、彼のことをドン・キホーテに仕える従者サンチョ・パンサだと思い込み、彼を流浪の旅へ誘います。
 なんとか仕事に戻りたいトビーですが、次々と災難が降りかかり、それがまたハビエルにとってドン・キホーテの冒険そのものになってしまいます。
 様々な偶然の出来事が、ドン・キホーテの旅を再現してしまいますが、森の中から中世の王妃と侍従たちの隊列が出現した時には、トビーも自分の目を疑います。しかしそれは、酒造で財を築いたロシア人アレクセイ・ミシュキンが催した仮装行列でした。
 ドン・キホーテは王妃を守る騎士となり、意気揚々と隊列についてゆき、トビーもそれに従うしかありませんでした。行く手に物々しい城が出現し、仮装パーティがドラマ仕立てで催されていました。
 トビーたちが入城すると、プロデューサー(ボス)が彼の帰りを待ちわびていました。ボスは富豪のミシュキンのご機嫌を取り、スポンサー契約を取りつけるつもりです。
 ミシュキンは、自分をドン・キホーテだと思い込んでいるハビエルを歓迎し、彼を芝居に参加させます。ところがそれは彼を愚弄する結果となり、トビーはそれに腹を立てます。
 トビーは、ミシュキンが囲っていたアンヘリカと共にハビエルを連れ出し、城から脱出しようとします。

 テリー・ギリアムは、この映画を完成させるのに構想から30年を要したそうです。1998年に製作が始まってからも災害や病気による役者の降板などが相次ぎ、映画化に8回失敗しています。そうしてようやく完成したのがこの作品です。でも、ドン・キホーテ(ハビエル)役にジョナサン・プライスを起用し、映画が完成したことはひじょうに良かったと思います。彼はテリー・ギリアム監督の名作「未来世紀ブラジル(1985)」でも主役のサム・ラウリー役を務めています。
 トビー・グリソーニ役は、スター・ウォーズ・シリーズのカイロ・レン役のアダム・ドライバーです。

 撮影のためにスペインの荒涼とした田舎町を訪れたCM監督のトビーは、ジプシーの男が自分が学生時代に撮って映画のDVDを売っているのを見つけます。たまたまその時の撮影現場が近くであることに気づいた彼は、その村を訪ねてみることにします。村は変わり果て、それは彼がそこで映画を撮ったせいだと解ります。撮影当時の様子が現実とクロスオーバーします。そして彼の登場、自らをドン・キホーテと思い込んでいる靴職人のハビエルです。彼もまた撮影のおかげで人生をゆがめられてしまった男でした。
 トビーを従者のサンチョだと思い込んだドン・キホーテは、再会を喜び彼を旅に連れ出します。厳しい自然環境の中をさすらううちに現実味が薄れ、中世の世界が広がってゆきます。
 トビーは旅の最中に、アンジェリカ(アンヘリカ)と再会します。彼女は学生時代のドビーが映画に出演させた地元の女性です。彼女もまたトビーのせいで人生を狂わされたひとりでした。女優として華やかな世界を夢見た彼女が行き着いた先は、ウォッカで財を築いたロシア人に囲われた生活です。生活は華やかではあるものの彼女はかごの鳥でした。

 原作の「ドン・キホーテ」は17世紀初頭にミゲル・デ・セルバンテスが著した小説で、主人公のアロンソ・キハーノが、騎士道物語に読み耽るあまり自らを騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャだと信じ込み、流浪の旅に出る物語です。風車を邪悪な巨人と思い込んで戦いを挑むシーンは有名ですが、本作でもそのシーンが出て来ます。

 知ってます?「未来世紀ブラジル」。原題が「Brazil」で、ブラジルは関係なくて、近未来の話しだけどひじょうにレトロな雰囲気で、テーマ曲がサンバ「Brazil」だという映画です。要するにブラジルというタイトルのサンバに乗って、レトロでシュールな未来世界が描かれた変てこな映画なのです。
 変てこだけどひじょうに考えさせられるし、ハラハラドキドキの大冒険だし、目を見張るような鮮烈な映像の連続です。あとでひじょうに尾を引く作品ですね。筆者は今でもサンバ「Brazil」が頭から離れません。お気に入りの名作の1つです。
 で、「未来世紀ブラジル」のテリー・ギリアム監督作品と聞くだけで、すさまじい磁力となって筆者を引きつけるわけですが、彼が8回映画化に失敗し、構想から30年ぶりについに完成させたなどと言われれば、体が勝手に映画館に向いてしまいます。

 靴職人のハビエルは、トビーの映画に誘われて以来、自分をドン・キホーテだと思い込み、騎士道の世界に迷い込んでしまうのですが、彼以上にファンタジーな世界の迷い人になってしまったのはじつはトビー・グリソーニ自身だったりします。
 彼をこの奇妙な冒険に誘ったのは、ハビエルですが、そもそもの原因を作ったのは、彼のDVDを持っていたジプシー男です。この男は度々登場し、トビーをファンタジーの深みへと追い込んでゆきます。この男の正体は何なのでしょうね。じつは彼こそは人を惑わすいたずら妖精なのでしょう。
 周りの人々には普通の世界に見える現実が、トビーには自分を陥れる巧妙な罠だったりします。

 これは想像力の物語です。セルバンテスの原作がそうであるように。人は子供の頃は誰しも想像の世界で遊ぶことがありますが、じつは大人になってもその世界への入り口は常に目の前に開いています。それは常軌を逸した狂気の世界であると思われがちですが、じつは大勢の人たちが永遠の少年少女であったり、癒えることのない中二病だったりし、現実とファンタジー世界の間を自在に行き来する魔法使いです。
 そのことを忘れてしまうことの方が、じつは恐ろしいことだと思います。久しぶりにテリー・ギリアム作品に出会えてよかったと思います。

原題:The Man Who Killed Don Quixote。
2018年イギリス/スペイン/フランス/ポルトガル、133分、2020年日本公開。
原作:ミゲル・デ・セルバンテス。
監督、脚本:テリー・ギリアム。
脚本:トニー・グリソーニ。
出演:ジョナサン・プライス、アダム・ドライバー、オルガ・キュリレンコ、ステラン・スカルスガルド、オスカル・ハエナーダ、ロッシ・デ・パルマ、ジェイソン・ワトキンスほか。

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