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リチャード・ジュエル【映画】

2020/01/23


 1996年、アトランタオリンピック開催中のセンテニアル・オリンピック公園は、野外ライヴでにぎわっていました。警備員のリチャード・ジュエルは、会場の片隅で酒を飲んで騒いでいる若者たちを見つけて注意します。警備員の忠告などに耳を貸さないので、リチャードは現場の警察官を呼びにゆきます。彼が引き返してくると、若者たちは誰かが置き忘れたリュックを物色しようとしているところでした。リチャードは若者たちを遠ざけ、遺留品を危険物として取り扱うよう警察官に要請します。
 警官たちは、リュックは単なる忘れ物だと軽視していましたが、リチャードの執拗な要請に不承不承危険物取扱班を呼びます。専門家が駆け付けリュックを調べてみると、中から時限装置付きの爆弾が現れます。
 リチャードは警察官たちと共に人々の避難誘導に当たりますが、間もなく爆弾が爆発します。

 爆発と同時に多数のクギが飛び散る強力な殺傷兵器が起爆したにも関わらず、リチャードの冷静な判断で被害は最小限にとどまり、彼はヒーローとして称賛されることになります。
 ところが事件を担当したFBIは、プロファイリングの結果、リチャードが犯人像と一致するという見解に至ります。ヒーロー願望の強い人物が自作自演で事件をでっち上げてそれを解決するという事例は過去にも存在しました。FBI捜査官のトム・ショーは、聞き込みをするうちにリチャードがそうしたヒーロー願望の持ち主であることを確信します。
 敏腕ジャーナリストのキャシー・スクラッグスは、色仕掛けでトム・ショーに近づくと、FBIがリチャードを調べていることを聞き出し、それを記事にします。やがて他社もそれに追従し、リチャードはヒーローから急転直下凶悪犯罪者として世間の注目を浴びることになります。

 以前にリチャードと職場が同じだったことから彼のことをよく知る弁護士のワトソン・ブライアントは、彼の無実を信じ弁護することにします。
 母のバーバラ・ジュエルと2人暮らしの家は大勢の報道陣に囲まれ、昼夜関係なく騒然とし、そこへFBIの家宅捜査が入ります。朝から晩まで徹底的に調べられ、多くの家財が持ち出されます。リチャードもバーバラもすっかり疲弊し、それをワトソンと彼の助手のナディアが励まします。果たして彼らはリチャードの無罪を晴らすことができるのでしょうか。

 「アメリカン・スナイパー(2014)」「ハドソン川の奇跡(2016)」「15時17分、パリ行き(2017)」「運び屋(2018)」と最近は史実の映画化を手がけてきたクリント・イーストウッドが監督した作品で、これも実際にあった出来事です。
 リチャード・ジュエルは、ひじょうに正義感が強く人の役に立ちたいといつも考えていました。 しかしそのことが災いし、過剰に仕事をし過ぎて失敗することもしばしば。前職の学校の警備の仕事でも、生徒たちを過剰に取り締まったせいで苦情が殺到し、解雇されています。
 彼はまた、武器にも精通しており、射撃の腕もかなりのものでした。FBIの捜査が入った時には多数の銃器が押収されています。爆弾にも詳しく、今回の事件では「若者たちが物色しようとしてリュックを寝かせたおかげで、クギが飛び散ることが抑えられ、被害が少なくなった」と語っています。
 これらはすべて、彼の正義感と人の役に立ちたいという思いの産物なのですが、FBIのプロファイリングではヒーロー願望の強い犯罪者の人物像と見事に一致してしまいました。
 捜査では、真犯人から警察に対して犯行声明の電話があったことが判っており、電話をかけた公衆電話も特定できていました。リチャードが公園にいた時刻からだと犯行声明のあった時刻までに電話機にはたどり着けないことも判っていましたが、FBIは協力者がいたと考えていました。

 この作品で、主演のポール・ウォルター・ハウザーと、弁護士役サム・ロックウェル、母親役のキャシー・ベイツが様々な賞を受賞していますが、アカデミー助演女優賞を獲得したキャシー・ベイツの演技はさすがでした。マスコミに対して息子の無実を訴える記者会見のシーンは、ひじょうに感動的です。
 弁護士トム・ショーは無駄口をたたかないクールな男ですが、じつは情に厚く、旧友のリチャードを絶対に救うという信念に燃えていました。助手のナディアも最初から積極的にこの不利な弁護を勧めていました。これらの人々の根気と情熱が、リチャードの無罪を晴らしたわけです。
 リチャードは、トムに再三口を慎むように厳命されていたにも関わらず、ついつい饒舌になり、FBIの要請で査問に応じた時も一席ぶってしまいます。しかしこれが意外に功を奏したようで、捜査官を絶句させています。

 警察の追及もさりながら、リチャードと母のバーバラを疲弊させたのは執拗で容赦のないマスコミの攻撃でした。予告編ではメディア・リンチという言葉を使っていましたが、ジャーナリストによる追及は本当に恐ろしいです。
 発端を作ったキャシー・スクラッグスは、自ら公園から問題の公衆電話まで歩いて実測し、リチャードが犯行声明の電話を掛けられないことに気づいています。彼女はまたバーバラの記者会見に涙を流しています。

 リチャード・ジュエルは、本当に犯人ではなかったのでしょうか。冒頭では、彼の前の職場での失敗も描かれます。職務に対し異常なまでの熱心さ、悪を正すことへの執念で行きすぎた行動をとってしまうところ、それはFBIのプロファイリングが割り出した犯人像を見なくとも、彼を疑いたくなるような要素であると言えます。彼の経歴を知っている者の多くが、彼ならやっても不思議ではないと思うかもしれません。射撃の腕前や、数々の武器に精通しているところ、爆弾の知識、そして家には驚くほどの武器の数々。
 太っちょの彼は、みんなからバカにされがちで、彼もそのことを解っていました。トム・ショーが彼を人格者として見ていることに、彼は感謝しています。そのトム自身、最初に彼と会った時には、変な奴だと感じていたようです。当時トムが勤めていた職場で、リチャードは雑役を担当しており、自分のデスクを勝手に調べられていたこと、電話の話しを立ち聞きしたことに不信感を抱いています。でも、リチャードはトムが必要なものをちゃんと理解し、机の引き出しに補充し、彼が好きなスニッカーズもこっそり補充していました。
 異常に熱意のあるおせっかい屋のリチャードを、トムは疎ましく思うのではなく、好感を持つようになり、やがて2人は友だちになります。リチャードがもっと人の役に立ちたいと警備の仕事に転職することを決めた時にも、トムはここるからエールを送っています。
 リチャードの弁護を引き受けることになった時、トムはリチャードに、爆破犯はお前ではないなと念を押しています。それは弁護士としての形式的な質問だったのでしょうか。それとももしかしたら犯人かもしれない、過剰に熱意のあるリチャードならやったかもしれない、そう思ったからでしょうか。

 筆者は、職場の友人が会社から犯罪者扱いされ、彼が裁判を起こした際にその応援をしたことがあります。当時組合の役員をしていた筆者の弟は、何度も組合と折衝を繰り返しましたが、弟も正直彼が無罪なのかどうかは分からないようでした。もしも冤罪なら、これほど悪質なパワハラはないし、有罪の自信がなければ配置転換という人事にまで踏み切れないだろう、そう考えたからです。しかし我々は裁判を見守るうちに、会社が方針を敢行するために平気ででたらめをすることを目撃しました。証人喚問でも課長が誰でも判るうそを平然と並べていました。巨悪とはそうしたものです。
 闘いの中で彼を応援する者たちの間で彼を疑う者はまったくいなくなり、みんなの間に友情が深まりました。筆者は今でも彼に対して絶大な信頼を置いています。
 筆者が仕事でミスをして会社から手ひどく糾弾されることになった時も、大勢の仲間に支えられました。
 リチャード・ジュエルの場合、相手はFBIですし、ジャーナリズムによる残忍な攻撃が彼の家族をも巻き込んでしまったわけですから、どんなに恐ろしい思いをしたことでしょう。
 そんな時、人は独りになってはいけません。人は独りでは生きられないものですし、独りでなければ大きな力にも立ち向かうことができます。そのことをこの映画を観て学んでいただけたらと思います。

原題:Richard Jewell。
2019年アメリカ、131分、翌年日本公開。
原作:マリー・ブレナー。
監督:クリント・イーストウッド。
脚本:ビリー・レイ。
出演:ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、オリヴィア・ワイルド、ジョン・ハム、イアン・ゴメス、ディラン・カスマン、ウェイン・デュヴァル、マイク・ニュースキー、チャールズ・グリーン、ニナ・アリアンダほか。

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