kepopput.jpg

高校事変掘攵説】

2019/11/29


 優莉結衣が武蔵小杉高校事変以前に起こした暴力事件が発覚し、彼女は葛飾東高校を退学に追い込まれます。しかし暴力沙汰の証拠となるビデオは、ディープフェイクというソフトを用いたCG加工で、結衣はそのことに気づいていながらあえて反論しませんでした。彼女を救済すると称し、塚越学園の学園長の角間良治が彼女を訪れます。塚越学園は一応矯正施設になっているものの高校卒業の資格も取れる学校法人校であると説明します。結衣は現在の施設で親しくなった嘉島理恵やその姉の奈々未のことが気になりましたが、塚越学園の見学を承諾します。結衣には長く離れ離れになっていた妹がいましたが、彼女優莉凛香が突然コンタクトを取って来て塚越学園のことを話していたことも見学を決意する理由になっていました。
 角間と共に車で堀越学園に向かう途中、車は人気のない工場跡に侵入し、そこで武装勢力による襲撃を受けます。角間は殺され、結衣も催眠ガスで眠らされてしまいます。

 目が覚めた時には、結衣は赤道直下の熱帯林の島にいました。そこはチュオニアンという学校施設になっており、武装した熟練の兵士たちが生徒児童を監視していました。授業の内容は日本のそれと変わらず、教師も日本人でした。下は幼い小学生上は高校生までが同じ学校で一貫教育を施されているようでした。
 700人に登る生徒たちはすべて日本人で、いずれも家庭や学校で問題を抱えた子供たち、いわゆる親にも見放された生徒児童たちでした。親たちにしてみれば、子供たちが全寮制の堀越学園に入れられ、しっかり管理されていると信じ、それ以上の関心は示さないようでした。
 広大な施設内は監視カメラがくまなく配置され、生徒児童は厳重な管理下に置かれているはずですが、バイクに乗った暴走族や残忍ないじめが横行し、それらを教師も黙認しているようでした。
 結衣は施設内を一巡し、監視カメラのないエリアを見つけます。そこで醍醐律紀(だいごりつき)という生徒に出会いますが、彼も従順を装って施設内を調べているようでした。
 監視カメラにより違反行為が発覚すると、減点が告げられ、それが一定数に達すると隔離棟に送られます。結衣はそこで激しい暴力に遇い重傷を負っている妹凛香と再会します。

 隔離棟にいても通常の施設でも、消灯時間になると不思議とぐっすりと眠れました。それが催眠ガスのせいだと気づいた結衣は、呼吸を浅くしてガスを吸わない練習を繰り返し、覚醒状態で夜を迎えることに成功します。寝静まった子供たちはキャリアーに乗せられ、別の施設へと運ばれてゆきます。結衣も眠っているふりを続けていると、医療施設のようなところに収容され、そこでひとりひとりMRI検査を受けていることが判ります。
 どうやらこの施設では、子供たちを意図的に眠らせ、夜ごと脳の様子を観察しているようでした。日中、理不尽な暴力が野放しにされていたり、特定の子供が意図的にいじめられる立場に置かれたり、あるいは隔離棟で異常な暴力が行なわれたり、過度の校則違反を起こした生徒の公開処刑が行なわれたりするのは、そうした状況下で脳にどのような変化が現れるのか、実験をしているようでした。

 すきを突いて逃げ出した結衣は、あらかじめ調べておいた発電施設を破壊して停電をもたらし、夜陰に紛れて反撃に転じます。醍醐律紀をはじめ有志を募り、武器の扱いをレクチャーすると、収容されている生徒児童の救出作戦を展開するのでした。

 これまでの事件で超人的な能力を発揮し、軍人も暴力団も打ち負かし、警察も手玉に取ってきた優莉結衣ですが、今回は赤道直下の国籍も判らぬ絶海の孤島に投じられてしまいます。そこはひじょうに練度の高い軍人たちに厳重に監視され、しかも彼らはアジアのどこか判らぬ国の言葉を使っています。
 日本人で幹部の檜蘇によると、武蔵小杉高校事変に差し向けられた兵士たちもここの出身で、ここにいる兵士たちは彼らよりも優れた軍人なのだそうです。
 彼らは、この施設で大勢の子供たちを集めて、何をしようとしているのでしょう? 鍛え上げてスパイとして育て上げようとしているのでしょうか。それにしては管理の仕方があまりにも奇妙です。

 孤立無援の状況下で結衣は反撃を開始します。唯一頼りになりそうな醍醐律紀は、武蔵小杉高校事変の際に総理を警護していたSPの息子だと知れます。それ以外の子供たちはまったく頼りになりそうにありません。結衣は、武器も持たず大人たちに身を守ってもらえるのは日本人だけの常識、世界には小さな子供でも自ら武器を持ち自分の命を守るのが当たり前のところがたくさんある。私たちは今そういう状況に置かれただけだと生徒たちを説得します。
 武器の使い方を学び、敵に遭遇した時の対処法を教えられた生徒たちは、意外な活躍を見せます。まったく無防備な子供たちによる反撃など兵士たちは想定していないので不意を突くことも不可能ではない、結衣のその言葉が現実となります。チュオニアンではいじめられ続ける立場にあった桐谷陽翔(きりたにはると)もサバゲーの経験を活かして戦闘能力を発揮し、他の生徒児童の救出に成功します。

 武器を持って敵を殺さなければ生きてゆくことができないという異常な状況が、ここでは常識となり、その中で子供たちは友情と信頼関係を築きます。日本にいるときは問題児だった彼らが、模範的な生徒児童となって帰国することになります。
 図らずも、問題児の矯正が成功するわけですが、政府としてはそれを後悔するわけにはゆきません。精神の健康と健全を取り戻した大勢の生徒児童たちの社会復帰を認めないわけにはゆかないものの、彼らが孤島でとった行動を公表するわけにもゆかない、なんとも微妙な判断を政府は強いられることになるわけですが、当の子供たちは何事もなかったかのように社会へ、元の学校生活へ戻ってゆきます。

 このエピソードを肯定すると、戦争賛成論ということになりかねません。政府もそれを回避せざるをえないわけですが、読者としても思いは複雑です。戦場下で殺人を余儀なくされた子供たちが健康な精神を取り戻し、強く明るく生きる術を会得したという結果を、どう捉えればよいのでしょう。
 物議をかもしそうなテーマですね。皆さんはどうお考えですか?

2019年、角川文庫。
著者:松岡圭祐。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


索引 韓流映画&番外編





1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< December 2019 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES










recent comment

links

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM