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スナッチャーズ・フィーバー 喰われた町

2019/11/18


 大学生のテリー、ダン、ジェフ、べスの4人は、課題の取材を行なうためにカメラを携えて町に出ます。取材には長距離の移動を伴うため、車で有料道路を使いますが、料金所は不在で遠くにいるひとりの係員はこちらに背を向けたまま微動だにせずにたたずむという奇妙な行動をとっていました。
 最初の取材は小学校で、ひとりの児童の弁当に動物の生の内臓が入っていました。教師は文化のちがいで親のすることに口出しできないとあしらいます。
 移動中の休憩先でベスは旧友のアンと偶然再会しますが、なぜかアンの記憶は曖昧で逃げ出すように去ってしまいます。アンはトイレで彼女の居る個室の前で立ち止まる人影とその怪しい行動に戦慄します。アイスを買いに入ったスーパーでは商品が散乱したままになっており、レジ係の女性は引きつったような笑みを浮かべ、アイスが溶けかけているからバックヤードから取ってくるようにベスを促します。ベスは逃げるようにその場を出ます。
 車に残っていたテリーは、背を向けてたたずみ動かない少女に声をかけますが、突如瞬間移動の速さで車に飛びついてきた少女は、人ならぬ不気味な表情をしていました。
 次の取材は歯科医院、そこで一行は、表情を硬くして固まっている少女に出くわします。取材の許可を得て治療室に入った一行は、父親から離れた少女に助けを求められます。あれは父さんじゃないと訴えてくる少女に結局なにもしてあげられませんでした。
 夜はモーテルで部屋を取りましたが、予算の都合で女性のベスも一緒です。テレビのニュースではキャスターが不在で、翌朝には携帯の電波が届かなくなりました。
 隣室の女性が訪ねてきて、騒いでいたことを指摘しますが、彼女は苦情を訴えるのではなく、騒いでいたことで正常であると判ったと言います。彼女の夫はもはや人ではなく、夫のようになってしまった人たちは顔を隠すために背を向けた立っていると言うのでした。しばらくすると彼女の身内の人間が複数で押しかけてきて彼女を強引に連れ去ってしまいます。
 数々の奇妙な出来事に怯える一行ですが、とりあえず次の取材までは続けることにします。しかしその先にはゆくべきではなかったのです。

 最近のホラー映画にしばしば用いられる POV(Point of view)を駆使した作品です。POV すなわち主観ショットでは、登場人物がカメラを携え、物語を撮影してゆきます。カメラ好きの人間が動画を撮り続けていて、たまたま事件に巻き込まれ、恐ろしい映像が撮れてしまったという設定で、ドキュメンタリーのようなリアリティ効果が得られ、大がかりなセットやトリックがなくても生々しい恐怖が演出できるという優れものですね。撮影者は撮影を続けながら走るわ、逃げるわ、叫ぶわ、転ぶわで、カメラ酔い必死のブレブレグルグル映像が繰り返されるわけですが、この作品は POV に徹するわけではなく、取材シーン以外は客観視点できちんと撮られていました。
 筆者はカナダ版ゾンビ映画を期待して観たのですが、その予想は裏切られました。「スナッチャーズ・フィーバー 喰われた町」なんていうB級感むきだしの愚題がついておりますが、スナッチャーが熱狂するわけでも町が喰われるわけでもありません。ほんとセンスのかけらもない日本のクソ題にはうんざりさせられますね。なにがフィーバーなんだか、こっちが恥ずかしくなるわ。
 スナッチャーと聞いた時点で、切り刻まれたり引きちぎられたりして血しぶきがドバドバ噴出する映像が目に浮かぶわけですが、そんなスプラッターなシーンはありません。音と映像で脅すタイプのホラーではなく、奇妙で不可解なシチュエーションがじわじわと迫って来るホラーです。

 最初に登場する怪異は、有料道路の料金所で後ろ向きに立っている係員。なにかするわけでもなく襲ってくるわけでもありません。次の後ろ向き人間はテリーが遭遇します。気づけばいつの間にかそこにいて、後ろ向きに立ったまま微動だにしません。怖いですねぇ。襲ってくるなら逃げもしますが、何もせずに立っているので思わず見入ってしまいます。声をかけてしまいます。すると瞬間移動の素早さで接近し、車の窓ガラスに激突します。
 彼らはただ立っているだけではありません。ベスが遭遇したそれは、彼女の入った個室の前で足を止めます。ようやく立ち去ったので扉を少し開けて見てみると…。
 スーパーのレジ係はベスに笑いかけますが、口角上がりすぎです。こんな表情人間じゃできませんて。

 インフルエンザ・ウィルスが耳から入ると奇行に走るのだそうです。周りの人間が化け物に見えるカプグラ症候群という意見も。前者の場合は罹患した人間の異常ですが、後者だと見ている側の問題ということになります。4人はあれこれ推測しますが、いずれもちがうようです。彼らが経験していることはもっと異常で深刻です。
 後ろ向きで動かない人間、過去の記憶のない旧友、生の臓器を食べる子供、自分の身内が人じゃないと訴える少女や女性、口角を吊り上げて恐ろしい形相をする人間。これら一貫性のない奇妙な現象は何に原因し、何が起こっているのでしょう。
 夫が人でなくなってしまったと訴える女性は、やつらは人に寄生し変えてしまうというようなことを言っていますが、一行が次に向かった銀行では、スタッフのひとりが口から何か出してました。

 寄生生物にせよ宇宙人にせよ細菌にしろ、それはやがて大々的に人類にダメージを与え、被害が広がってゆきます。主人公の4人も集団で襲われる悲運に見舞われることになります。しかしそこは POV のグチャグチャ映像でごまかされてしまいます。みんな襲われておしまいかぁ、と思いきや、恐怖はさらに続くのです。
 仲間のダンが変質してしまい、テリーが豚の面を被った子供とお姉さんに襲われます。腕力で自分が勝ると敵を脅すダンですが、お姉さんは簡単に車のドアを引きちぎってしまいます。

 なんとか逃げ延びたジェフとベスですが、当然ながらそれで済むわけはありませんよね。寄生にせよ侵略にせよ感染にしろ、危険地帯を脱出すればハッピーエンドになるほど現代のホラーは生やさしくありません。逃げるよりも速くワーッと拡がっちまうのです。
 この手のホラーでは、最後は収拾がつかなくなって、みんな仲良く滅びを迎えるとか、暗黒時代に突入するとか、そんなエンディングがほとんどですが、さりとてこれほど拡散してしまったものを会心の一撃でやっつけちまうとか、特効薬が魔法のように現れるといったハッピーエンドも何だか薄っぺらいですよね。
 どうしたものでしょう。この作品がどうなるかは、お楽しみということで。

 後ろ向きでつっ立ったってる人、突然変顔する人、知らぬ間に変質している隣人、それらはあからさまに恐ろしい化け物よりも、別の恐怖を観客に植え付けます。その印象はひじょうに強烈です。きっと夢に出て来ますよ、後ろ向きの人とか。
 いろいろ考えさせられる作品でした。秘蔵コレクションに加えたいと思います。

原題:THERE ARE MONSTERS。
2014年カナダ、95分、2016年日本公開。
監督、脚本:ジェイ・ダール。
出演:クリスティン・ランジール、ギイ・ジェルマン、マシュー・エイミット、ジェイソン・デイリー、マット・アムヨット、キャサリン・マコーマック、ロレッタ・ユーほか。

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