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HELLO WORLD【劇場版アニメ】

2019/10/24


 2027年京都、高校生の堅書直実は優柔不断で自己主張できない自分の性格を変えたいと思いつつもなかなか思い通りになりません。無類の読書好きであることから周りに押し切られる形で図書委員を引き受けます。
 ある時、3本足のカラスを追いかけて伏見稲荷に迷い込んだ直実は、10年後の未来から来た自分に遭遇します。彼は直実が住むこの世界は、アルタラという量子コンピューターが作り出した仮想現実であり、直実も現実の人間すなわち未来から来た自分の記憶を元に再現されたデータに過ぎないことを告げます。
 未来から来た自分は、直実がこの先同じ図書委員の一行瑠璃と恋人同士になることを予告します。しかし恋仲になって間もなく、瑠璃は落雷事故で死んでしまうというのです。
 未来の自分は、仮想現実の中だけでも瑠璃を生かし続けたいと願い、そのためにこの世界にアクセスして来たのでした。3本足のカラスは直実の手と化し、それは彼の思いを実体化する力を持っていました。直実は未来から来た自分を先生と呼び、実体化の訓練を積みます。先生はこれから起きることを記したノートも所持しており、直実が瑠璃と親しくなるように導きます。
 先生の指導のもと、直実は能力を駆使して図書委員の古本市チャリティを成功に導き、瑠璃と親しくなることに成功します。先生と直実の計画は順調に進み、瑠璃が災害に遇う運命の7月3日が近づいてきます。
 先生の仮想現実への干渉を感知したアルタラの自動修復プログラムが、2人を監視するようになり、それはキツネの面を被った警備員の姿で2人に迫ってきます。運命の瞬間に近づくにつれてどんどん数を増すキツネ面たち。直実はその追撃をかわしながら、瑠璃の命を守るために奮闘します。

 未来の京都、文化保存を量子コンピューターに託したおかげで、そこに住む人々の行動や思いまでもが仮想現実の中に忠実に再現され、仮想現実の中の人々は、自分たちが現実だと信じて暮らしています。
 なんだかゾッとするような話しですが、同様の設定は映画「マトリックス(1999)」とそれに続く3部作が有名ですね。マトリックス・シリーズの主人公ネオは、自分の住む世界に違和感を覚えるうちに、真実を知るものによってその世界が仮想現実であることを知らされますが、本作の場合は、直実は10年後の未来からアクセスして来た自分にそのことを知らされます。
 現実だと信じていた世界がコンピューターによって作られた仮想世界で、自分たちはデータに過ぎない、そのことを知らされたらどうでしょう? とても耐えられないですか? それともうすうすそう感じていた、なんて納得しますか? 人間社会を構築する科学技術、あるいは生物としての人間を維持するための自然環境は、時として人間のためにあるかのように都合よく思えることってありませんか? 世界人口がどんなに増加しても食料は枯渇しないし、科学技術の暴走や指導者の愚行によって人類が滅びることもない。予測不能なほど複雑化した社会がバランスを維持し続けていることも不思議で仕方ありません。もしかしたら地球そのものが、人類より高次元の存在による実験槽なのかもしれない、そんなことを考えたことありませんか?

 直実は先生から自分が仮想現実の中のデータであるという現実を知らされますが、それでも自暴自棄になることなく、先生の指導のもと、瑠璃と恋仲になり彼女を守る努力を続けます。自分がデータに過ぎない、アルタラが機能を失えば自分も消えてしまう、そんな事実に直面しながらも彼は力強く生きようとします。むしろその事実を知ってからの方が、生きる目的を得て活気があふれてきたようです。
 先生に出会うまでの直実は、未来の自分の過去の記憶をトレースしたデータでしかありませんでしたが、そのことを知った彼は、アルタラによる再現の枠を越え、新たな意思で生き始めたわけです。

 アニメ映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊(1995)」では、電脳ネットワークの海の中で生まれた意識体である人形遣いが、生命体としての人権を主張しますが、今後電脳ネットワークが進歩すれば、人の意識が肉体ではなくネットワークに依存して存在するようになる、そんなことも起こりうるかもしれません。
 地球がある限り我々は寿命をまっとうすることができる、アルタラがある限り直実たちも現実と変わらぬ人の営みを続けることができる、両者に大したちがいはないかもしれませんね。

 アニメや映画では、仮想現実に外部からの干渉があり、世界の均衡が危うくなります。本作では先生が瑠璃の運命を変えようとしたことから、自動修復プログラムが動き出します。瑠璃が死なない世界、それは現実の人々の記憶をトレースしたものではなくなるわけです。
 直実は、自分の思いを具現化する能力を授けられることで、世界に干渉し始めます。古本市のチャリティのために集められた本が燃えてしまうというハプニングを、彼は能力を使って修復しようとします。
 こうして直実のいる世界が未来の人々の記憶のトレースではなくなってゆくことで、彼らは自律した意識として生き始めるのかもしれません。

 人の意識ってなんなのでしょう。いろんなことを考えさせられる作品です。これまでにも同じような設定があったにも関わらず、この作品は思いの上でひじょうにリアルでした。
 それと、関西人にとっては京都の街並みや京阪電車がリアルに再現されているところも現実感がありますね。

 そしてラストへ向けて、思わぬどんでん返しがあります。なかなか楽しめる作品です。

2019年、98分。
監督:伊藤智彦。
脚本:野崎まど。
声の出演:北村匠海、松坂桃李、浜辺美波、福原遥、寿美菜子、釘宮理恵、子安武人ほか。

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