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ジョーカー【映画】

2019/10/22


 深刻な恐慌にあえぐゴッサム・シティで、アーサー・フレックは病気の母の看護をしながら派遣会社で大道芸人の仕事をしていました。彼自身も精神疾患があり緊張状態になると笑いの発作を抑えられなくなり、そのことを周りに知らせるためのカードを携行していました。
 彼は市が運営する医療機関でカウンセリングを受けていましたが、財政難を理由にそれが打ち切られてしまいます。
 ある時アーサーは派遣会社の同僚から護身用と称して拳銃を押しつけられます。しかし小児病棟で芸を披露している時に誤ってそれを落としたことが問題になり、解雇されてしまいます。
 失意のまま帰りの電車に乗っていると、男たちが女性に絡んでいるのに出くわし、彼は男たちを持っていた射殺してしまいます。目撃証言からピエロの扮装の男が容疑者として公表されます。
 エリート・サラリーマンの横暴をピエロが制裁したという情報が不況にあえぐ貧困層に流れ、彼は英雄になります。
 そんな風潮をよそに、アーサーは隣人のソフィと仲良くなり、2人でコメディアンのショーが見られるバーに行きます。そして彼自身コメディアンとしてステージに立つことになります。
 病身の母は若い頃、実業家のトーマス・ウェインの屋敷で家政婦として働いていたことがあり、彼女は今でもウェインが自分たちを救ってくれると信じ、手紙を書きます。それを読んだアーサーは、自分がウェインの隠し子であることを知ります。アーサーはウェインに会いにゆく決意をします。
 バーでステージに立った時の映像が、テレビの人気者マレー・フランクリンの目に留まり、マレーはアーサーをジーカーの名で紹介し、アーサーは有名になります。

 ゴッサム・シティのジョーカーと言えば、悪のカリスマにしてバットマンの宿敵として有名ですね。映画「ダークナイト(2008)」ではバットマンを窮地に陥れます。「スーサイド・スクワッド(2016)」では恋人のハーレイ・クインを助けるために警察の厳重な警戒網をやすやすと突破します。ジョーカーは無敵の犯罪王で、あらゆる犯罪者も彼に立てつくことはできません。
 ところが、この映画で描かれるジョーカーすなわちアーサー・フレックは貧困と失業、病身の母親に自らの持病という多くの不幸を抱えたどん底の暮らしの中であえいでいます。大道芸の派遣会社でも仲間たちを束ねるような立場におらず、どちらかというと軽視されています。なんとか芸の道を究めようとするのですが、ちっとも上手くゆきません。それでも自棄になったり激高したりすることもなく、ただ悶々としているだけです。あの無敵のヴィランとはあまりにもかけ離れた、脆弱で虐げられた青年です。
 しかし彼には自分では自覚がないだけで潜在的な能力があったようです。バーでコメディアンとしてステージに立ったり、自分がウェインの隠し子だと知るとそれを確かめにウェイン邸に忍び込んだり、そういった行動力を示します。
 彼がウェイン邸を訪ねた時に、まだ幼いブルースと顔を合わせますが、この少年こそが後のバットマンですね。

 そしてアーサーに転機が訪れたのは、同僚から譲渡された拳銃でした。彼はこの拳銃のせいで失業してしまい、意気消沈して帰る電車の中で女性に絡んでいる商社マンたちに遭遇します。勇気を出して助け舟を出すのですが逆に脅されてしまいます。彼は拳銃を取り出し発砲します。

 この映画では、バットマンについては一切ふれられません。ジョーカーがバットマンの宿敵だと知らない人にとっては、不幸で気弱な青年が銃を手にしたころからダークヒーローに転身する人間ドラマでしょう。ジョーカーが悪のカリスマであることも無敵のヴィランであることも語られません。奇妙な偶然からたまたまひとりの青年が、ヒーローとして脚光を浴びることになった、それだけのお話しです。
 アーサーがヒーローになる要因は、不況にあえぐ貧困層に蓄積した憤懣や怒りですね。ピエロ(ジョーカー)の扮装をした何者かが、富裕層の横暴に制裁を加えた、マレー・フランクリンのテレビにたまたま出演して拳銃を取り出した、それが貧困層に支持されたわけです。
 これまで容疑者のひとりとしてアーサーを疑っていた刑事は、彼のテレビ出演中の出来事で犯人と断定しますが、その時にはピエロのマスクをつけた人々のデモが暴徒化し、手が付けられない状態になっていました。

 いかにして無敵のジョーカーが誕生したか、それを見たかった観客にとってはいささか肩すかしだったかもしれません。でも、この作品はジョーカーのすごさを描くのではなく、普通の青年がいかにしてジョーカーになったか、ゴッサム・シティがジョーカーを誕生せしめる背景に何があったかを描きたかったのでしょう。
 重要なのは、ジョーカーの正体がアーサーであることではなく、アーサーがなぜジョーカーにならねばならなかったかです。
 映画「帰ってきたヒトラー(2015)」の中で、ヒトラーが言っていたように、彼が怪物になったのではなく、民衆がそれを望んだ、それと同じことがジョーカーにも当てはまるのでしょう。ゴッサム・シティが潤っていて人々が豊かにくらしていたら、アーサーも気弱な青年のまま平穏に暮らしていたのでしょう。

原題:Joker。
2019年アメリカ、122分、同年日本公開、R15+。
監督、脚本:トッド・フィリップス。
脚本:スコット・シルヴァー。
出演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、フランセス・コンロイ、ブレット・カレン、ビル・キャンプ、シェー・ウィガム、グレン・フレシュラー、マーク・マロン、ダグラス・ホッジ、ダンテ・ペレイラ=オルソンほか。

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