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アド・アストラ【映画】

2019/10/11


 地球が大規模なサージ電流に襲われ、世界中で多大な犠牲者が出ます。衛星軌道の基地で作業中に爆発事故に見舞われたロイ・マクブライド少佐は、かろうじて地上に逃れ一命をとりとめますが、そのあとすぐに上層部に呼び出されます。そして今回のサージの原因が海王星の軌道上にある反物質装置であることを知らされます。
 16年前、地球外生物の探査のために太陽系の最外縁部に向かったチームがこれを設営しており、そこに今でも生存しているクルーがいる可能性が示唆されます。
 探査チームのリーダーだったクリフォード・マクブライドはロイの父であり、その彼が現在も生きているというのです。ロイは息子としてクリフォードに通信を行ない、サージを食い止めるように呼びかける任務を帯び、火星へ向かいます。火星の地下基地はサージの影響を受けておらず、現在も機能を保っていました。ロイはそこからレーザー通信で父に呼びかけることになりました。
 息子の呼びかけに対して父から返答はありませんでした。それを繰り返すうちに次第に感情的になるロイは、その任を解かれ地球に帰還することになりますが、ロイは上層部が用意していたもう1つの計画、すなわち海王星に直接人を送り込む計画に便乗し、父に会いにゆくことにします。

 人類が月や火星に基地を作り、地球外生物を探査するリマ計画のために太陽系の果てに人類を送り込む、そんな時代のお話しです。突如としてサージ電流が太陽系を覆い、地球上でも多くの施設が破壊され、4万人の犠牲者がでました。これが繰り返されれば人類は滅びることになる。大任を帯びたロイ・マクブライドは、どんな状況下でも冷静な判断力を失わない優れたパイロットでしたが、父のことになると心がもろくなるのでした。16年前、リマ計画に参加した父が消息を絶ったのを機に、周りの人間関係が上手くゆかなくなり、妻のリヴとも別れることになりました。
 ロイにとって父はひじょうに影響力のある存在だったようです。
 そして突如勃発したサージ事件、太陽系が大量の大波電流にさらされ人類は滅亡の危機に瀕することになります。原因はリマ計画で使用された反物質装置の異常。この大災害が皮肉にも父の生存の可能性をロイに知らせることになりました。
 ロイの胸中はおそらく穏やかではなかったのでしょうが、彼は沈着冷静を維持し、使命を果たすために火星に向かいます。それどころか、長距離宇宙船に乗り込んで実際に父に会いにゆきます。
 地球から40億キロ以上も離れた天体、海王星。その宇宙の果てで孤独に地球外生物の探査を続けるというのは、どういうことなのでしょう。考えただけでも恐怖で足がすくみます。リマ計画が何年前に始まったのかは判りませんが、クリフォードは16年前に消息を絶ったとされています。つまり16年よりも長きに渡り彼は宇宙の果てですごしているわけです。彼は地球とも交信せず、再び地球に帰らぬ覚悟で探査を続けてきました。もはや彼は研究に憑りつかれた怪物です。今回のサージや人類の危機も彼にとっては無縁のことなのでしょう。彼は自分が使っている装置が原因で災害が発生したにも関わらず地球など見ておらず、太陽系さえも彼の目には留まっていないのでしょう。
 そんな彼に会いにゆくロイの心境も考えればなんだか恐ろしくなります。しかし彼は、あくまで冷静に反物質装置を破壊して地球を救い、父を連れ帰ろうとします。

 宇宙服や軌道上施設、ロケットなどは現在のものとそれほどかけ離れたものではないように見えます。しかしながら宇宙船の推力はすさまじく、海王星までそれほど時間がかからないようです。それにしても現代人の我々にとっては気が遠くなるような宇宙の彼方です。木星が近づき、土星を過ぎると、どんどん孤独感がまします。帰還の可能性が急速に失われてゆくような思いにさいなまれます。その様子がひじょうにリアルです。
 太陽系の果てに思いを馳せると、言い知れぬ恐怖を覚えますが、この映画を観て、宇宙開発も想定できる距離に近づいてきた、そんな気がしました。

 この作品では、クリフォードの研究テーマすなわり地球外生物の探査はほとんど問題にされません。彼の息子が彼に会いにゆく遠大な距離が生々しく描かれます。宇宙開発時代には、こうした経験に遭遇する人も出てくるのでしょうね。すでに1970年代にアポロ計画でアクシデントに見舞われ宇宙で孤立したパイロットが実在しています。彼らの奇跡の帰還は大きなニュースになりました。
 地球を巡る月との間の宇宙空間でも大変な孤独との戦いなのに、太陽系の果てへの旅とはどんなものなのでしょう。それでも人類はいずれそれを成し遂げるのでしょうね。

原題:Ad Astra。
2019年アメリカ、123分、同年日本公開。
監督、脚本:ジェームズ・グレイ。
脚本:イーサン・グロス。
出演:ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズ、ルース・ネッガ、リヴ・タイラー、ドナルド・サザーランド、ジェイミー・ケネディ、ジョン・フィン、キンバリー・エリス、ボビー・ニッシュ、リサ・ゲイ・ハミルトン、ジョン・オーティスほか。

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