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ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝
−永遠と自動手記人形−【劇場版アニメ】

2019/10/04


 19世紀末フランス、C.H郵便社で自動手記人形をしているヴァイオレット・エヴァーガーデンは、イザベラ・ヨークの教育係として全寮制の女学院を訪れます。養女としてヨーク家に引き取られたイザベラは、上流社会の人間としての教養や作法を知らず、それを教育するのがヴァイオレットの務めでした。
 容姿端麗ですべてを完璧にこなすヴァイオレットはたちどころに女生徒たちの憧れの的になり、イザベラは自分がみじめになるばかりでした。不愛想で相互の距離を縮めようとしないイザベラに、ヴァイオレットは苦言をたれることもなく根気よく付き合い、イザベラも徐々に教養を身に着けてゆきました。
 ようやく心を開いたイザベラは、ヨーク家の養子になる前の悲惨な生活と、彼女が拾って妹のように可愛がっていた幼い少女テイラーについて語り始めます。
 学院での短い教育期間を終え、ヴァイオレットはC.H社に戻り、歳月が流れます。ある時ひとりの少女が社を訪ねてきます。孤児院を抜け出してきたという少女は、読み書きもできないのに郵便配達人になりたいと言います。彼女は1通の手紙を携えていました。そこには困ったときにはこの人を訪ねなさいという文面と共にヴァイオレットの名がありました。その少女の名はテイラーと言いました。

 孤児だったヴァイオレット・エヴァーガーデンは、兵士として育てられ戦争に参加しますが、戦場で両腕を失い、義手を着けることになりました。それから彼女はC.H郵便社クラウディア・ホッジンズの許で代筆の仕事を身に着け、自動手記人形という役職に就きます。
 この外伝では、ヴァイオレットが上流社会のお嬢さんだけが通うことを許される全寮制女学院で、イザベラ・ヨークの教育係として就任した3週間とその後日談を描いています。
 戦争で身寄りを亡くした少女イザベラは、荒廃した町でたった独りで悲惨な暮らしをしていましたが、捨てられた幼い少女テイラーと出会い、2人で姉妹として生きてゆくことにします。しかしヨーク家の当主が現れ、たまたまイザベラが血縁関係にあるということで彼女を養女にします。
 突然の高貴な家柄の令嬢になった彼女ですが、それは彼女にとってけっして幸せな境遇ではありませんでした。テイラーの将来を面倒みるという条件で養女になることを承諾したイザベラの生活は、どこへも行けない全寮制の学院に幽閉されること、学校を出たあとはそれなりの家柄に嫁ぎ、世間に知られずひっそりと暮らすことでした。
 イザベラは孤児院のテイラーに何通かの手紙を書きます。字が読めないテイラーは、修道女にそれを読んでもらい、、ヴァイオレットの名前を知ります。

 テイラーは、人々に幸せを届ける"手紙"を配達する郵便配達になりたいと願い、ベテランの集配人ベネディクト・ブルーのもとで修業し、ヴァイオレットに読み書きを習います。そして、かつて姉妹として暮らしたイザベラに手紙を書くことにします。しかし、イザベラの嫁ぎ先は秘密にされ、彼女の行方は判りませんでした。

 京都アニメーション製作のTVシリーズの劇場版外伝です。正編を知らないので、戦争で両腕を失ったヴァイオレットがどんな過去を持つのかは判りませんが、その壮絶な運命とは無縁に見える静かで平穏なお話しです。
 今回は、イザベラという豪族の養女になった少女に、上流社会の作法や教養を教えるために短期就任の専任教育係として派遣されるというエピソードで、ヴァイオレットはまるで感情のない自動人形のように振る舞い、けっして声を荒げることなく根気強く少女を指導します。最初はヴァイオレットを受け入れようとしないイザベラに対しても小言も不満も言わず、彼女の意向に従い、しかし指導は厳しくし、やがてイザベラの心を開き、彼女を一角のレディに育成します。
 自動手記人形とは手紙などの代筆を担当するのが主な仕事であるようですが、ヴァイオレットはあらゆる教養を身に着けていて、ヨーク家直々にイザベラの教育係を依頼されます。ヴァイオレットは顧客に対してあくまでも従順で、感情をあらわにしません。それこそ顧客の期待に添うようにプログラムされた人形のようです。しかし彼女には相手を包み込み冷え切った心を溶かす温かさがあるようです。

 日本アニメ独特のポップな感じのない、静かで上品な作風がいいですね。ポップなものが嫌いなわけじゃありませんが。感情を盛り上げるための大げさな演出も、奇跡のようなドラマチックな展開もありません。絶叫や号泣といった感情の発露もなく、どこまでも静かで控えめな演出です。
 それなのに深い感動がじんわりと染み込んできて心を満たしてくれます。女性が家柄を守るための道具のように扱われていた時代、戦争で多くの孤児が生まれ路頭に迷っていた頃、少女たちはささやかな夢にすがり、力強く生きていました。
 人の思いを乗せた手紙を届ける、読み書きもできず力仕事もかなわないテイラーが夢見た職業郵便配達人、C.H郵便社は彼女の思いを受け止め、彼女が自ら手紙を書き、それを届けたい人のもとへ届ける手助けをします。

 劇場版「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が来年1月公開予定でしたが、本作はそれに先駆けて公開された序章のような位置づけになるのでしょうか。外伝ですから、本編に描かれないヴァイオレットのエピソードなのでしょうけど。しかしながら劇場版正編は公開の延期が発表されています。今年7月に起きた京都アニメーションのスタジオ放火殺人事件がその原因なのでしょう。
 企業が人を育てなくなって久しいこの国で、人の心を大切にする文化を創造する現場が破壊にさらされたことはひじょうに残念なことです。格差社会だの競争だの、勝ち組理論だのといった安易で幼稚で下品な理屈を真顔で語る狂信者であふれかえったこの社会に、アニメは人の心を伝える重要な役割を担っています。
 人類の未来のために、みなさん、アニメを観ましょう。

 劇場版正編も楽しみですが、昨年放送されたテレビシリーズや原作小説もチェックしないといけませんね。

2019年、90分。
原作:暁佳奈 。
監督:藤田春香、石立太一。
脚本:鈴木貴昭、浦畑達彦。
声の出演:石川由依、寿美菜子、子安武人、浪川大輔、遠藤綾、内山昂輝、悠木碧、茅原実里ほか。

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