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フルメタル・パニック! せまるニック・オブ・タイム【小説】

2019/08/30


 前回、ニケーロでレナード・テスタロッサを追い詰めるも今一歩というところで取り逃がしてしまった相良宗介は、そこで残党と化した西太平洋戦隊のメンバーと合流することになります。この戦闘に新たに投入された機体レーバテインも、宗介の合流によりミスリルの有力な武器となりました。部隊は各地に散らばったミスリルの残党をアマルガムの攻撃から守りつつ、次第に勢力を整えてゆきました。
 テレサ・テスタロッサは、ソ連の旧実験施設のあるヤムスク11に、宗介やクルツを伴って向かいます。
 今や廃墟と化した施設の深層部へと降りてゆくテッサと宗介。そこで2人は奇妙な既視感を繰り返し経験することになります。ウィスパードであるテッサにとってはそれは予測された現象でしたが、宗介は慣れない経験に戸惑います。
 テッサたちミスリルの残党が、ヤムクス11の秘密に迫ろうとしているその時、期せずしてアマルガムの部隊も同地に迫っていました。外で見張りをしていたクルツが敵の接近を感知した時には、彼らはすでに大勢の敵に囲まれているのでした。

 ヤムクス11に迫るアマルガムの部隊には、ミスリルを裏切ったカリーニン少佐やクルツの師であるカスパーといった名将が顔をそろえているほか、千鳥かなめを伴ったレナードも参加していました。ミスリルVSアマルガムの要人たちがソ連の旧基地に顔をそれたわけです。テッサがここを重要視しているようにレナードにとってもここは絶対に抑えておかねばならない拠点でした。

 奇妙な既視感に戸惑う宗介に、テッサはブラック・テクノロジーの原理的なことを説明し出します。ASをはじめとする現在の軍事技術を支えるブラック・テクノロジーはいつどうやってもたらされたのかも解らぬまま利用され、数々の超ハイテク機動力を世にもたらしているわけですが、その原理に最も近いところにいるのが、世界に数名しか存在しないとも言われるウィスパード(ささやかれるもの)です。
 ブラック・テクノロジーは、オムニ・スフィアと言われる人の精神領域を科学技術に取り込んだもので、大局的には人の思いをパワーに換える技術と言えるでしょう。
 テッサが言うには、人は誰でも念動力やテレパシーといった超能力を有しているが、その力は計測不可能なほど微弱なのだそうです。それを増幅して技術に用いることができれば、ひじょうに精度の高い機動や破壊が可能になるほか、信頼度の高い未来予知も可能になるようです。
 ASが武器の積載制限や隠密性の不利を抱えてまで人型をしているのは搭乗者のイメージを機器に反映させるのに有利だからだそうです。そしてその最たるものがラムダドライバで、これは限られたパイロットと限られたAIを搭載したASでのみその効力を発揮することができます。

 かつてソ連は国家事業として超能力の研究に力を注いでおり、ここヤムクス11では TAROS(オムニ・スフィア転移反応)の実験が行なわれていました。そして初期 TAEOS の暴走という事故により誰も感知しない精神波が世界中に拡散しました。タウ波と呼ばれるその波動が世界に拡散した数分間の間にごく一部の新生児がその影響を受けたのです。それが千鳥かなめであり、テッサとレナードの双子の兄妹でした。
 こうして誕生したウィスパードは、時を超えて人と人とが感応し合うことができます。彼らにより現代社会は本来あるべきではない科学技術がもたらされることになりました。ヤムスク11の事故によってウィスパードが誕生し、本来ありえない科学技術がもたらされた世界、それがフルメタに描かれた現代というわけです。

 ブラック・テクノロジーを利用して世界の覇権を握ろうとするアマルガムとそれを阻止しようとするミスリルの戦い、そう思われてきたフルメタの世界観が、本作で大幅に変更されます。明確な縦割り体制を持たないネットワーク上の組織アマルガムはじつは真の目的を持たず、レナードをはじめ各幹部がそれぞれの思惑で行動していたようです。
 レナードは宗介に言います。ウィスパードによってゆがめられた世界を本来あるべき姿に戻す。ミスリルを裏切ったカリーニン少佐も彼に賛同してアマルガムに着いたのかもしれませんね。
 では、それを知りながらアマルガムを止めるために奮戦し続けるテレサ・テスタロッサの思いとは何なのでしょう。ソフィアの意思に従うという かなめの思いとは? ソフィアとは、いったい?

 本作はシリーズ中最も長編でしかも内容も充実しています。読者もフルメタの世界観というものを改めて見つめなおすことになります。そして今回も死地からの脱出のための壮絶な死闘が展開します。本作はまだアニメ化されていませんが、この緊迫感はアニメでは描き切れないかもしれません。アニメ版は原作の映像化ということではことごとく成功していますが、本作に限っては映像化はかなり難しいと思います。戦士たちの心理とその背景にある彼らの生き様や歩んできた道のりが、1発の弾丸にこめられます、それをどれだけ映像で再現できるか……。ここは小説ならではの迫力と臨場感を堪能してください。

2008年、富士見ファンタジア文庫。
著者:賀東招二。

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