エスター【映画】
2019/08/26
ジョン・コールマンとケイト夫妻は、教会所属の孤児院からエスターという9歳の少女を養子として迎えます。年齢のわりに聡明で、落ち着いているエスターでしたが、学校へ行くのにドレスのような服装をしたり、首や手首に常にリボンを巻いたりと、ちょっと人と変わった行動を頑なに譲りませんでした。コールマン家には息子のマックスと聴覚障害を持つ娘マックスがいましたが、エスターは兄弟で入浴することを拒み、しかも入浴中は中から鍵をかけるのでした。
ある時エスターが元居た孤児院のシスター アビゲイルが訪ねてきます。シスターはエスターの過去について何かを知っているようすでしたが、エスターによって口を封じられてしまいます。
事故に見せかけてシスターを殺害したエスターは、マックスを脅して死体の始末を手伝わせます。エスターとマックスが離れの別室に出入りするのを認めたダニエルが不信感をいだき、別室を調べようとしますが、すでにエスターの手が回っていました。
エスターはどうもおかしい、異変に気づいたケイトがジョンに相談しますが、彼は取り合おうとしません。しかし一家はそれから恐ろしい体験をすることになるのでした。
幼い少女が殺人鬼と化すホラーです。原題の「Orphan」は孤児の意味。アメリカでは孤児を容姿に迎えることが二本より盛んなようですが、この映画はそんな養子をとる家族に衝撃を与えたのではないでしょうか。
まだ幼い少女がとんでもない問題と凶暴性を抱えていた、それが平和な家族を地獄へ突き落とします。少女はなぜこんな破滅的な行動をとったのでしょう。その謎は本編を観ていただくとして、少女が怪物と化すホラーというのはこれまでにもいくつかありましたが、本作のエスターはひじょうにリアルで、それだけに鬼気迫る恐怖を見せてくれます。
まだ10歳にもならない少女が厚化粧をしてジョンに迫るシーンなどは、凶暴性とはまたちがった恐怖があります。
エスターの真相を知ったケイトは、我が子を守るために謎の少女との死闘を繰り広げることになりますが、DVDにはハッピーエンドと救いのないバッドエンドが用意されています。恐ろしさから申せばバッドエンドの方がずっと上です。恐怖はさらに続くと解釈できる終わり方ですから。
もう10年前の作品になるのですが、今から見ても新鮮ですね。ホラーを見慣れてない方にとってはかなり尾を引く内容ではないでしょうか。幽霊やオカルトではない人間の恐ろしい本性によるホラーをお望みの方には「ミザリー(1991)」や「屋敷女(2008)」もお勧めです。筆者は若い頃は「キャリー(1976)」に始まるブライアン・デ・パルマ監督のサイコ・サスペンスにかなり夢中になりましたね。そしてこれらの原点的作品アルフレッド・ヒッチコックの「サイコ(1960)」はやっぱ名作ですね。この作品がサイコパスによる恐怖を解禁し世に放ったと言えます。
残暑の折り、眠れぬ夜は尾を引くホラーをご堪能いただき、クールダウンしてください。
原題:Orphan。
2009年アメリカ、123分、同年日本公開。
監督:ジャウム・コレット=セラ。
脚本:デヴィッド・レスリー・ジョンソン。
出演:ヴェラ・ファーミガ、イザベル・ファーマン、ピーター・サースガード、ジミー・ベネット、アリアーナ・エンジニア、CCH・パウンダー、 ローズマリー・ダンズモアほか。