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アルキメデスの大戦【映画】

2019/08/14


 1933年、大日本帝国海軍省は、深刻化する欧米列強国との対立に備え、新造軍艦の増強を考えていました。嶋田繁太郎海軍少将は、平山忠道造船中将が設計に携わり提案する巨大戦艦の新造を支持、新型戦艦建造計画会議を統括する大角岑生海軍大将もこの案に傾倒しつつありました。しかし今後の戦争には航空機を主力とした空母の増強が重要であると考える山本五十六海軍少将はこれに反対し、永野修身海軍大将と共に平山案に異を唱えます。
 しかしながら平山案は、山本五十六が支持する藤岡喜男造船少将の建造案よりもずっと低コストでの建造が可能であることから、山本らは窮地に立たされます。そんな折り、彼は元帝都大学の学生で数学の天才の櫂直と出会います。尾崎財閥のひとり娘尾崎鏡子の家庭教師をしていた櫂は、彼女と密通していたと父の留吉に誤解され家庭教師をクビになるのみならず大学も退学させられたのでした。平山案の安すぎる見積もりには裏があるとにらんだ山本は、櫂に戦艦建造の正確な見積額を算出させ、不正を暴くことによって平山案を不採用に持ち込もうと考えます。大学を辞めさせられアメリカ留学に道を見出していた櫂は、山本の依頼を断ります。しかし巨大戦艦の建造が実現すれば日本は戦争への道を突き進むことになるとの山本の言葉で考えが変わります。
 海軍主計少佐に抜擢された櫂は、補佐官に任命された田中正二郎少尉と共に戦艦建造の見積額算出に着手しますが、櫂が求める情報はすべて田中によって軍の機密であるとはねつけられます。そこで櫂は田中に依頼して軍港に赴き、戦艦長門の乗船を取りつけ、小さな巻き尺ひとつで船の各部を実測し始めます。櫂の不遜な態度と奇行に最初は嫌気がさしていた田中ですが、その情熱に心を打たれ、櫂に期待し協力するようになります。

 予告編にもあるように数学で戦争を止めようとした22歳の数学の天才の奮戦記です。造船に関してはまったくの素人であるうえ、必要な情報はすべて軍の機密で閲覧できない、しかも建造計画会議の決定まで2週間、そんな状況で天才櫂は、とんでもない方法で巨大戦艦の建造見積もりを算出します。戦艦長門の各部を実測したデータと、にわか仕立てで叩き込んだ造船の知識で、彼は正確な新造船の図面を完成させます。しかしその建造に必要な材料の調達や人件費を算出するには、情報がまったく足りませんでした。
 櫂にひそかに思いを寄せていた鏡子は、以前に父の会社と関係があった大里清ならなにか判るかも知れないと櫂に進言します。渡りに船と、櫂と田中は大里造船のある大阪まで汽車で向かいます。かつては軍艦の製造のも携わっていた大里ですが、過去の苦い経験から櫂たちへの協力には首を縦に振りません。それでは残された時間がないなか大阪まで出向いた意味がありません。櫂たちは再びピンチに陥ります。

 平山造船中将が提案する巨大戦艦は言わずと知れた大和です。2番艦武蔵とともに唯一46センチ砲を実装した世界最大の戦艦で、広島の呉軍港で極秘裏に製造されました。その後連合艦隊旗艦の旗艦として数々の海戦に参加していますが、一般的に有名なのは1945年の特攻作戦で、米海軍の艦載機の攻撃を受けて坊ノ岬沖に沈没したというエピソードですね。3000名あまりの兵士と共に、壮絶な造船技術が、国民の多大な犠牲の上に捻出された資産が、あえなく沈みました。このシーンは冒頭に迫力の映像として描かれています。

 物語では、戦艦より空母んも必要性を主張する山本五十六派が正義で、尾崎財閥と結託して戦艦の建造費を偽装した平山忠道が悪者ということになっています。櫂は正義を成すために持ち前の才能を駆使して平山の不正を暴くわけですが、平山には不正に手を染めても貫かねばならない正義というものがありました。それがこのドラマの思想の中核とも言うべき考え方になっています。
 そしてこのエピソードは、史実に基づくフィクションとされています。山本五十六や長野海軍大将、嶋田少将は実在の人物ですが、主人公の櫂直や平山忠道は実在しません。大和建造の真相は、艦と共に深海に沈んだまま解らないということです。

 戦争という人類の愚行は、その異常性ドラマ性において小説や映画の題材としてひじょうにおいしいものです。その中で描かれるヒーローの姿に我々は魅せられます。しかしながら、その背景にある残忍性、非人道性、非生産性、大勢の人々の犠牲と未来に残す遺恨、そういったものを忘れてはなりません。平和ボケなとどいう平時を愚弄する言葉がありあすが、権力者が市民を生きた将棋の駒のように扱う変質ぶり、国民がこぞって異国民を殺傷しようとする変態ぶりに比べたら、何人変質者が現れようともマシです。戦時中はみんな忠実だった、おかしな奴はいなかった、なんていう老害の話しは愚考であるばかりか危険思想でさえあります。ひとにぎりの変質者よりも戦争という一国総変態の方がいいなんてふざけた話しはありません。
 チャールズ・チャップリンは映画「殺人狂時代」の中でこう言っています。保険金殺人で数名を殺した自分(主人公)は死刑囚だが、戦場で何十人も殺した兵士は英雄だ。

 戦争は、国家による壮絶な犯罪です。しかしながら地球上に多国が存在し、経済の概念がある限り戦争や軍備をなくすことはできません。筆者は国から軍備をなくすことを望んではいませんし、自衛隊の平和維持活動も高く評価しています。災害救助活動には本当に頭が下がります。
 戦争の直接的な原因になりうる武力の存在を批判するよりも、我々がすべきことは人間同士がいがみ合わないこと、国家間の文化交流による相互理解を深め、武力を行使させない努力を続けてゆくことであると思われます。

2019年、130分。
原作:三田紀房。
監督、脚本:山崎貴。
出演:菅田将暉、柄本佑、浜辺美波、笑福亭鶴瓶、小林克也、小日向文世、國村隼、橋爪功、田中泯、舘ひろしほか。

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