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さよならくちびる【小説】

2019/07/03


 映画「さよならくちびる」のノベライズです。全編ハルの独白で綴られています。一部レオやシマの視線で語られるパートもあります。映画ではのっけから不愛想な顔をして互いにまともに口も利かないハルとレオですが、小説版ではそんな彼女たちの表情の裏側に隠された熱い思いが伝わってきます。
 2人の女の子が路上でギターの弾き語りをやっていたところへ、元ホストのシマが声をかけ、ライヴのための会場を手配したりツアーを企画したりして、2人の本格的な音楽活動を支持するようになります。私たち別に有名になりたくて音楽やってるわけじゃないし、そういう2人ですが、シマは最初は誰でもそう言うんだよといってどんどん企画を進めてゆきます。そんなシマに乗せられて、目指せメジャーデビューと歓喜する2人ですが、シマと3人になってからお互いの関係がギクシャクしてゆき、ハルレオの全国ツアーの時にはライヴ以外は別行動になるまでの険悪な関係になってしまいます。
 ストーリーのメインがこの全国ツアーですから、2人は終始むっつりとしたままです。そんな2人に手を焼きながらもシマは情熱的にハルレオをサポートし続けます。そしてこのツアーがハルレオにとっては解散ツアーでした。
 レオはシマに思いを寄せ、シマはハルのことが好きになります。それがハルレオの人間関係を壊してしまった、映画ではそんな印象が強いです。シマはハルレオの音楽活動を大いに飛躍させ、マスコミの取材でも飛ぶ鳥を落とす勢いと絶賛されるほどにまでなるのですが、人間関係は完全に冷え切っていました。チーム内で恋愛禁止だから、そう言ったハルのセリフは映画ではスタートしては当然からくらいに受け止めていましたが、小説版ではもっと意義深いものになってきます。
 シマはじつは人生の半分を音楽活動に費やして来て、前のバンドではレコードを出すまでになったのですが、彼の異性関係のもつれでバンドは解散してしまいました。なので彼は異性関係で失敗したくないと思いつつもハルへの思いを止められないのでした。

 バイト先のクリーニング店でハルとレオが出会った頃は、2人はもっと輝いていました。レオは人づきあいが不器用で、ハルに声をかけられた時も、今とあまり変わらない不愛想な態度でしたが、ハルから音楽を学びギターを教えてもらい、歌も楽器もどんどん上達して、ライヴではハルよりもファンから名前を呼ばれることが多くなるまでになります。そしてそんな状況をハルもうれしく思っていました。そこにハルのレオに対する思いがあります。
 映画で見る険悪でしらけ切ったムードとは裏腹に、ハルとレオの心の中に流れる熱い感情が小説版ではひじょうによく解ります。ハルはレオの後ろ姿が好きだと言います。後ろから見ている分には自分の感情を読み取られずにすむからだと。いつも自暴自棄で悪い男に引っかかってアザを作ってくるようなレオは、じつはハルの思いに気づいていていました。
 そんなだから、それほど思い合っていたから修復不可能なまでに関係が壊れてしまったのでしょうか。

 そうして迎えた函館での最終公演。ハルレオの解散はすでにファンに知れていて、感動のフィナーレになります。小説版ではそれはほとんど描かれません。ライヴよりも彼女たちそしてシマの日常がメインになります。
 この構成はアリなのかもしれません。音楽も映像もない小説版でライヴの模様を再現したところでどうしようもない、著者はそう判断したのかもしれませんね。

 マネージャーでローディのシマは言わばスタッフなのですが、ライヴではなぜかステージのすみっこにすわって、うつむき加減でタンバリンを振っていたりします。あれ、いらなくね? なんて思っちまうのですが、傍らにはギターがあったりして、じつは彼のホローがなかなか重要であることが小説版で解ります。
 最終公演が迫ったとき、そして公園のあと、シマはことさら解散を強調し、今後は俺たちは赤の他人だからと繰り返します。じつはそこに彼のハルレオに対する熱い思いがあります。
 映画のラストシーンでは、この3人の今後について観客は想像を巡らせるしかないのですが、小説ではもう少し具体的にそのあたりのことが描かれます。小説版はなんかすごくホッとさせられるエンディングで、読後感はとてもさわやかです。

 ハルは本名を久澄春子、レオは西野玲緒、シマは志摩一郎であることが小説版では判ります。この3人の“それから”がどうなるのか、“これまで”は実際のところどうだったのか、ぜひとも小説版で確かめてみてください。

2019年、徳間文庫。
著者:相田冬二、塩田明彦。

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