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空母いぶき【映画】

2019/06/10


 今より少しだけ未来のお話し。日本は初の航空機搭載型護衛艦いぶきを就役させ、専守防衛の強化を図りますが、いぶきや潜水艦、イージス艦で構成される第5護衛隊群が小笠原諸島沖で訓練航行中、謎の武装集団によって波留間群島初島が占領されるという情報が飛び込んできます。政府は第5護衛隊群をただちに初島へ向かわせますが、ロシア製のミグ戦闘機が飛来し、艦隊に対して攻撃を加えます。
 初島を占拠したのは国家共同体の東亜連邦で、その際に日本の自衛官を捕虜にしています。第5艦隊は仲間を救出するために初島へ向かいますが、敵は戦闘機を40機搭載した空母と数隻の潜水艦を配備し、魚雷やミサイルによる攻撃をしかけてきます。
 空軍出身のいぶきの艦長秋津竜太一佐は、自衛隊はここで力を見せつけるべきだという考えですが、副長の新波歳也二佐は戦闘は極力避けるべきだと主張します。秋津はここで敵を撃退することは国と自衛隊が越えなければならないハードルであるとし、新波は戦後1人の自衛官の死者も出していないことが自衛隊の誇りだと言います。
 敵の攻撃は次第に激しくなり、防戦一方では攻撃を防げなくなり、ついに いぶきから戦闘機が出動する事態になります。そして1機の戦闘機を失い、魚雷を受けた船が炎上する事態となります。
 訓練の取材でたまたま いぶきに乗船していたネットニュース記者の本多裕子は、新聞記者の田中俊一とともにその様子を目撃し、動画を衛星電話で本社に送信します。第5艦隊の戦闘の様子は、ネットを通じて世界中に報道されることになります。

 敵からの攻撃を受けてもまったく動じることなく、むしろ戦闘を楽しんでいるかのように口の端に笑みを浮かべている秋津一佐の表情が印象的です。一方、副長の新波二佐は戦闘には慎重で、戦後自衛官に戦死者がないことが国の誇りだと主張します。これに対して秋津は、国民に死者を出さないことが誇りであり、そのために死んだとしてもそれは自衛官の名誉だと反論します。かといって秋津が戦争を望んでいるというわけではありません。自衛隊が自国を守るに充分な力を持っていることを示さなければ、今後も同様の心理略を許すことになり、それが戦争の引き金にもなってしまうと考えているようです。
 垂水総理大臣率いる内閣の中にも、現地に援軍を派遣すべきだという意見と、戦闘には慎重になるべきだという意見が対立します。しかし自国の戦闘機や船舶に被害が出、しかも敵が攻撃の手を緩めないことから、総理は戦後初の防衛出動を決断することになり、記者会見が開かれます。
 これはもはや戦争ではないのか、日本が いぶきを就役させたことが戦争の発端になったのではないのか、記者からそんな質問が飛び出し、総理はもっぱら日本は戦争をしない、戦闘は戦争ではないと主張します。

 熾烈な破壊と殺し合いが展開されるハリウッド映画を見慣れている者にとっては、第5艦隊が遭遇する戦闘は散発的で激しさがありません。人命はひじょうに重く、1人の戦死者が出ることが重大な事態につながります。敵戦闘機を撃墜しても脱出した敵兵があれば全力を挙げて救助します。日本ではこれがリアルな戦闘なのでしょう。そして戦闘と戦争はちがうのだそうです。
 救助した敵パイロットに秋津は語ります。今日はクリスマスイヴだ。日本では信仰とは別にみんなでこれを祝う習慣がある。君の国ではどうだ? 冬の海は冷たかっただろう。
 戦闘は散発できですが、激戦と変わらぬ緊張感があり、ハラハラさせられます。

 劇中では、戦闘と戦争はちがうということが主張され、戦闘は自衛権の一端であると説明されます。自衛権には自国を防衛するための個別的自衛権と、自国以外の同盟国の防衛のために戦闘を行なう集団的自衛権があり、後者が行使された場合はそれはもはや戦争と言えるでしょう。
 古来より武力の介入しない外交は存在しないに等しく、戦争が行なわれないものの国家は武力を備えます。日本はかつて自ら侵略を行なう戦争を行ない、その敗戦国となって以降は戦争行為は憲法で禁じられています。戦略核兵器を保有しませんし、その研究もしません。空母を保有することも憲法違反ですから、この映画のタイトル「空母いぶき」は法に抵触する呼称です。
 劇中で いぶきは航空機搭載型護衛艦と呼称され航空母艦すなわち空母と呼ばれることはありません。空母とは呼ばれないものの実質的には F-35 戦闘機15機を搭載し、その発着が可能な滑走路もあります。カタパルトがあるかどうかは分りませんでしたが。そう呼ばないだけで空母じゃね? という疑問がわいてきますが、いぶきは架空の船舶なのでご安心ください。ところがヘリ搭載型護衛艦というのが実在し、いずも型護衛艦の長さ245mのヘリ甲板は、戦闘機の発着も可能と思われます。この艦が集団的自衛権に用いられたらと思うと背筋に冷たいものが走ります。

 この映画では、戦後初の防衛出動が発令され、国民は戦争が始まったと思い込み、商店には少量や備品の買い出し客が殺到します。ひじょうに緊迫した状況が全国を駆け巡るわけですが、戦闘に直面している艦隊も内閣も、戦争にはあくまで否定的です。軍人も政治家も国民の平和を願ってやまないことが強調され、戦闘シーンを目の当たりにしながら何だか安心させられます。
 しかしながら、戦争を否定しながらも自衛権と武装の必要性をこの映画は主張しています。
 経済がグローバリズム時代を迎えてから、戦争行為が経済に有益に働くことはないことを政界財界の人たちも知っていますが、前述のように武力を介さない外交があり得ないというのも事実です。難しい問題です。

 筆者は、戦争には反対です。平和ボケだとか、戦時中に比べておかしな人間が増えたなんていう意見も大嫌いです。変態が山ほど増えたところで、国が殺人を命令し奨励する国民総変態よりもずっとましです。
 だからと言って自衛隊をなくせとは申しません。世界が競争社会である限り、争いごとはなくなりませんし武装蜂起をなくすことも難しいでしょう。それに敵はテロリストだけではありません。災害も起こりますし、ゴジラだって出現します。
 国防とは、戦争への加担ではありません。人々の平和が脅かされた際の機動力そして必要なのです。自衛隊のイメージが軍隊ではなく救助隊へとシフトしてゆくことが理想だと筆者は考えます。
 いろいろ考えさせられる映画でした。原作のかわぐちかいじ先生には、次回は救助隊としての自衛官のドラマを作ってほしいものです。

2019年、134分。
原作:かわぐちかいじ。
監督:若松節朗。
脚本:伊藤和典、長谷川康夫。
出演:西島秀俊、佐々木蔵之介、本田翼、小倉久寛、高嶋政宏、玉木宏、戸次重幸、市原隼人、堂珍嘉邦、片桐仁、和田正人、石田法嗣、平埜生成、土村芳、深川麻衣、山内圭哉、千葉哲也、金井勇太、加藤虎ノ介、三浦誠己、工藤俊作、横田栄司、岸博之、渡辺邦斗、遠藤雄弥、橋本一郎、後藤光利、山田幸伸、綱島郷太郎、袴田吉彦、井上肇、藤田宗久、中井貴一、村上淳、吉田栄作、佐々木勝彦、中村育二、益岡徹、斉藤由貴、藤竜也、佐藤浩市、伊達円祐、岩谷健司、今井隆利ほか。

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