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賭ケグルイ【映画】

2019/05/23


 創立122年を迎える私立百花王学園は、政界財界で人の上に立つべき逸材が集まる名門校です。そこでは勝ち組人生に必須の駆け引きや強運を養うためにギャンブルが導入されていました。桃喰綺羅莉会長を頂点とするカースト制が敷かれ、生徒たちはギャンブルによって階級分けされていました。勝者には富と名誉が与えられ、敗者は家畜として財産も人権も剥奪されます。
 家畜たちが人としての権利を取り戻すチャンスは少なく、生徒会が主催する公式戦で生徒会相手に一発逆転を狙うしかありません。
 こうした制度に反駁し、旧校舎を根城に集まった集団ヴィレッジは、家畜にされた生徒たちを救済し仲間を増やしていました。ヴィレッジのリーダー村雨天音は、ギャンブルを否定していますが、かつて桃喰会長にギャンブルで勝ったことがあるとウワサされていました。
 生徒会はヴィレッジをつぶすために風紀委員の実行部隊を送り込み、実力行使でこれをつぶそうとします。その一方で、生徒会の新しいメンバーを決める総選挙を行ない、全校生徒の参加を強制します。立候補者は2人1組でギャンブルトーナメント戦に挑み、他の生徒たちはこれに投票することになります。投票資金として無利子で1000万円が貸し与えられ、生徒たちは自身の資金を増やすために候補者に投票し、その支持率が勝敗に反映されます。
 このギャンブルに参加しなければ退学になるので、ヴィレッジは窮地に立たされます。かつて生徒会長に敗北してヴィレッジの幹部となった歩火樹絵里は、ヴィレッジを守るために校内のアウトロー的存在である犬八十夢と組んで立候補するのですが、決勝まで勝ち進んだところで犬八十夢が行方をくらませてしまいます。窮地に立たされた樹絵里を救ったのは村雨天音でした。そして村雨の出場は
桃喰会長が望んだことでもあったのです。
 対戦者の蛇喰夢子は、無類のギャンブル好き転校生で、危険を顧みずに次々と勝負に挑み頭角を表してきた謎めいた存在でした。夢子がパートナーに選んだのは家畜の鈴井涼太。夢子は、絶望的に不利な状況でも不敵な笑みを絶やさずここまで勝ち進んできました。彼女は生徒会にもヴィレッジにも与することなく、純粋にギャンブルを楽しんでいるようなのですが、その真意は謎のままです。

 ギャンブルや殺し合いゲームに青少年が巻き込まれるドラマは、最近では当たり前のようになってきました。筆者もこれまでにそうした作品をいくつか見てまいりましたが、この作品には他にはない新鮮な感銘を受けました。全校を巻き込んだギャンブル制度、この設定自体は今ではそれほど目新しいものではありません。将来政界財界を担う、いわゆる人の上に立つ人間としての素養を積むためにギャンブルが大々的に導入され、それが学校の秩序にまでなっているというのは、現実社会が非道なギャンブルそのものではないか、という原作者の痛烈な社会批判を伺わせます。
 多くのギャンブルを題材にした作品では、主人公が艱難辛苦を乗り越えてサバイバルを勝ち残るというものでしたが、この作品にはもっと別のテーマがあって、それが不鮮明であるところがおもしろいのです。女帝とも言うべき生徒会長桃喰綺羅莉は、終始冷徹で、生徒たちの浮沈を淡々と見守っています。登りつめてしまった彼女は、自分の立場に退屈しているようにさえ見え、生徒会の立場が危うくなるような波乱を待ち望んでいるわけです。そんな彼女の望み、彼女の飢えを充足させてくれるものは、かつて彼女をギャンブルで負かせたことがあるという村雨天音の参戦。生徒会を守るために勢力を拡大しつつあるヴィレッジをつぶすというよりも、村雨天音を選挙戦という大舞台に引きずり出すことが、彼女の望みだったようですね。
 そしてそこへ蛇喰夢子という新たな要素が加わります。彼女はいかなる危険も顧みずギャンブルを楽しむ賭ケグルイ。ピンチであればあるほどそれが彼女のご馳走になるのです。そんな彼女が敗北者である鈴井涼太を伴って参戦します。哀れ涼太は終始彼女に振り回されっぱなしで息切れ寸前のまま決勝戦の大舞台に立たされます。勝者となるか、2億円の借金持ちというどん底になるかという大勝負を課せられるわけです。
 そこであろうことか夢子は自分が不利になることも顧みず、このギャンブルに仕組まれた参加者それぞれの思いを解明し、それをぶちまけてゆきます。もはや彼女が勝つためにゲームをしていないことを知り、涼太は顔面蒼白です。
 けっきょく夢子の真意はなんだったのか、よくわかりません。筆者がこの作品のテーマ性が不鮮明だと言った所以であるわけですが、それがひじょうに斬新でおもしろいのです。それがリアルでもあるのです。

 強大すぎて虚無の中に沈んでいる桃喰綺羅莉。彼女を凌駕するほどの力を持つ村雨天音、しかしその過去が暴かれいつまでもクールではいなれなくなってゆきます。聖者然とした歩火樹絵里の豹変も見ものです。彼女のキャラは会長とヴィレッジのリーダーという2強を食っている、そんな感想さえ抱きました。素晴らしいです。そして謎の存在、蛇喰夢子。すべてを見通した目で相手を見つめるその表情には背筋に冷たいものが走る思いをさせられます。しかし彼女は桃喰会長のような一貫した冷徹キャラではありません。狂気の笑いを発したり、無垢な少女のように動揺したり感激したり、次々と豹変するのです。その多面性がすごいです。姫カットの清楚な印象に秘められた彼女の本当の姿はまったく計り知ることができません。少女の仮面の下に老練な人生経験が詰まっている、そんな気がしてきます。

 百花王学園の赤いブレザー制服は、カジノのルーレットのディーラーを彷彿させました。ギャンブルで負けて勝負するお金さえなくなってしまったいわゆる家畜たちが首から下げている札にはポチ(男子)、ミケ(女子)と書かれてあります。可愛いですね。
 ギャンブルシステムなるものの発想はひじょうに単純明快なのですが、そのおかげで学園内には狂気が蔓延し、反乱やヴィレッジのような反駁勢力が横行し、風紀委員は武装を余儀なくされています。この構図が現実の人間社会そっくりなところが怖いです。作中のコミカルなシーンの数々に笑いながら、観客は笑えないリアリティに震撼することになるのです。

 原作コミックに始まって、アニメ化、実写ドラマ化とメディア展開が拡がっていて、この劇場版によってさらに多くのファンを動員することはまちがいありません。筆者もすでにそれらすべてを鑑賞する気満々です。

2019年、119分。
原作:河本ほむら、尚村透。
監督、脚本:英勉。
脚本:高野水登。
出演:浜辺美波、高杉真宙、宮沢氷魚、福原遥、伊藤万理華、松田るか、岡本夏美、柳美稀、松村沙友理、小野寺晃良、池田エライザ、中村ゆりか、三戸なつめ、矢本悠馬、森川葵ほか。

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