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などらきの首【小説】

2019/05/01


 比嘉姉妹シリーズ第4弾。このシリーズのユニークなところは、比嘉姉妹の存在がひじょうに控えめで、妖怪退治は比嘉姉妹にお任せ!といった構成にはなっていないことですね。劇場版「来る」で警視庁も一目置いている国内屈指の霊能者として登場する琴子ですが、小説の中ではそれほど目立つ活躍をしません。劇場版の琴子を知っている人にしてみれば、小説版を読み進める度に、次はどんな活躍を見せてくれるのかと期待に胸が膨らむわけですが、このシリーズは彼女たちの活躍を前面に出してくることはありません。彼女たちの幼少の頃を描いていたり、時には被害者になったりします。それがこの作品のリアリティであり、読み手も次第にそれを学んでゆくわけです。
 そして本作は、シリーズ初の短編集です。比嘉姉妹が関わった数々の怪事件が6編収められています。

 ゴカイノカイ:とある雑居ビルの5階にだけなかなかテナントが定着しません。新たに入ったテナントはしばらくすると出て行ってしまうのです。ビルの経営者はあれこれ調査しますが原因が解りません。わらにもすがる思いで知人に勧められ比嘉真琴に調査を依頼したところ、意外な原因が浮上します。「ずうのめ人形」を読んだ人は、前作を彷彿させるエピソードではないでしょうか。

 学校は死の匂い:雨の日になると小学校の体育館で、白い服の少女の霊が投身自殺を繰り返します。地縛霊としては何とも奇妙な行動ですが、その当時6年生だった比嘉美晴がその謎を解明します。少女の霊は生前、ここでどんな体験をしたのでしょうか。

 居酒屋脳髄談義:居酒屋で、会社の上司や先輩に囲まれ、セクハラに耐える女子職員のお話し。列席した男性社員たちはいずれも女性を見下し、理論で女子職員を言い負かそうとするのですが、状況はいつもとちがい、地味でおとなしいはずの彼女が平然と理屈で巻き返しを図ります。女子を言い負かして良い気分に浸るはずが、どんどん形成が悪くなってゆきます。それどころか、自分たちの存在そのものが危うくなってゆくのでした。

 悲鳴:大学の映画サークルで学生たちがホラー映画を撮り始めるのですが、OBである監督の過度のこだわりで何度もNGが出て撮影が進みません。じつは撮影現場が心霊スポットとしても知られているところで、そのうちひとりの学生が女性の悲鳴が聞こえると訴え出します。

 ファインダーの向こうに:かつて巨匠と言われた落ち目のカメラマンに、ギガ出版の若手たちが振り回されます。そして巨匠が撮った心霊スポットの写真にまったく別の風景が写っており、それが巨匠を忘れてしまった過去へいざないます。野崎と真琴との出会いも描かれています。

 などらきの首:まだ高校生だった野崎が、などらぎ様を封印した洞窟の謎に挑みます。当時の彼は心霊現象など信じておらず、子供の頃にそこで恐ろしい経験をしたという同級生を伴って洞窟へ赴きます。子供時代いじめっ子の従兄に無理やり連れられて訪れた洞窟には、絶対に入ってはいけないと大人たちから厳禁されていました。そのむかし勇敢な武士によって成敗された妖怪が封印されていて、はねられた首を取り返すために洞窟に進入する者の首を狩るというのです。幸いにも彼は首を狩られることはなかったのですが、今でも忘れられない奇怪な現象に遭遇していたのでした。

 それぞれの短編は、比嘉姉妹すなわち、琴子、美晴、真琴たちの体験談になっています。表題作の「などらきの首」は高校時代の野崎のエピソードですが。彼はこの経験以降オカルトの世界にはまっていったのでしょうか。本作「ファインダーの向こうに」でオカルト誌を扱うギガ出版で仕事をし、不思議な現象に遭遇すると共に霊能者の真琴と出会います。
 よく言われる幽霊や怨霊などとはまた異質の怪異に触れ、野崎はそれを受け入れるようになります。これはこのシリーズを読み進める読者にとっても同じで、このシリーズを通じて心霊現象に対する認識がすいぶん変わります。妖怪や霊的現象というものを人の住む世界の中で自然に受け入れるべしという著者の思いが伝わってきます。

 今回の短編集は、ホラー要素はそれほど強くなく、謎解き、落ち話しの色が濃いです。それは短編には欠かせない要素でもあるのでいわば必然性でしょう。その中で表題作はなかなか恐ろしく過去3作の雰囲気を踏襲しています。

 人が住み、様々な思いが渦巻き、それらがものや土地に、言葉や伝承に蓄積されてゆき、その特異な例として奇怪な現象が人の精神や暮らしを脅かすようなことがあるのでしょう。そうしたことに実際に遭遇したことはありませんが、なんとなくあるような、そんな気がしています。

2018年、角川ホラー文庫。
著者:澤村伊智。

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