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バイス【映画】

2019/04/24


 1960年代、粗暴で酒ぐせの悪い青年ディック・チェイニーは、恋人のリンに手厳しくたしなめられ、更生して彼女が望む政界入りを目指します。後の国防長官ドナルド・ラムズフェルドの部下になって政治のからくりについて学んだ彼は、次第に頭角を表すようになり大統領首席補佐官にまで昇進します。その後は大企業の CEO に選任されますが、大統領選に出馬したジョージ・ブッシュに懇願され、共に選挙を闘い、ブッシュが大統領になると当時に副大統領になります。
 チェイニーは、ブッシュを全面的に補佐すると称して多くの権限を手に入れ、2001年9月の同時多発テロを皮切りにアメリカをイラク戦争へと導いてゆきます。

 自ら表舞台に立つことなく大統領を裏で操り、アメリカを戦争に駆り立てたチェイニーは、後にアメリカ史上最強で最凶の副大統領と呼ばれるようになります。映画のタイトル VICE は悪徳や悪習を意味しますが、VICE PRESIDENT とすると副大統領の意味になるらしいです。ジョージ・ブッシュを陰で操るチェイニーのための名称のようにも思えますね。常に国民の前に立つ大統領は単なる形骸で、本当に政治を操っている権力者は別にいて、その者は存在を消しているのです。
 人間社会は、とくに政治経済の世界は質の悪い冗談のようなものだと、筆者はむかしから考えていましたが、この映画はそのことを証明してくれているように思えました。政治とは選ばれた権力者が社会を自分たちの都合の良いように変えてゆくシステムで、それは民主主義の世の中になっても変わりません。世の中を動かすためには権力が必要です。世の中を良くしようと欲しても、権力を握らなければ何もできませんから、政治家に必要なものは、政治的手腕よりも政界財界でどれだけ人脈を持つことができるかにかかっています。競争に勝たなければ何もできないし、勝てば何でも思い通りです。そして政治家の仕事の多くが保身や政敵を蹴落とすことに費やされ、世の中を正しく統治することは二の次で、激しい政権争いに身を置くことこそが本分になってしまいます。
 人間社会は、権力者のために格差が設けられ、富は権力者に独占されるようになっています。権力の横暴と富の独占は、人類滅亡の直接的な要因なのですが、誰もこれを変えようとしません。
 自国の権力が収束されれば次は、世界における権力です。強いアメリカを誇示するためにチェイニーは国民を戦争へと駆り立て、それは国民が望んだことであるとしています。中東のテロリズムから国民を守るために必要不可欠な手段であったと豪語しています。
 高邁な理想によって国を戦争へ導くという構図は、大昔から同じですね。残忍な独裁者と言われた多くの権力者たちも、大量死を目的として独裁政治を行なったわけではなく、理想を達成する手段として邪魔者の駆逐を行ない、それを国民が望んだことだとしています。

 国家間の交渉には武力がつきもので、武力を背景にしない折衝はまず成功しません。実際に武力が行使されれば武力による報復が必須になり、そうした武力外交は今でも世界の常識です。国内であれば騙し合いや汚職、暗殺といった犯行が政治手腕として行使されます。
 そりゃおかしいやろう、口があるなら話し合えよとは、一般市民の常識で、識者ほど武力や暴力を背景にした政治、いわゆる権力争いを当然として認めています。
 では、世界情勢は恐怖政治(テロリズム)の上に成り立っているのかと言えば、そうしているのは市民による無言の同意に依るところが大きいのです。市民の無関心という名の同意が恐怖政治を招いています。そのことを少しでも多くの市民が理解し、声が大きくなれば、恐怖政治は遠ざかってゆきます。そのことを理解する市民が足りないことが人類の悲劇です。学校では力を付け他人を蹴落とすことしか教えず、協調性についてはそういう言葉があるというていどしか教えませんしね。

 ディック・チェイニーという VICE の名を地で行くような権力者を生んだ背景には、政界が政権争いの場として開かれていることと、もう1つリンという女性の存在も小さくなかったでしょう。1960年代、彼女は自分が女性であることから政界入りが果たせないことを悔しく思い、恋人のチェイニーの尻を叩きます。やがて2人は結婚し、2人3脚で政界を登り詰めてゆきました。2人にとって VICE の地位は、大統領よりもうま味があったかもしれません。
 チェイニーはブッシュを裏で操っていましたが、そのチェイニーを陰で焚きつけていたのはリンだったのでしょうね。
 権力に魅了された者たちによる“質の悪い冗談”は今後もまだまだ続きます。

原題:Vice。
2018年アメリカ、132分、翌年日本公開。
監督、脚本:アダム・マッケイ。
出演:クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、スティーヴ・カレル、サム・ロックウェル、タイラー・ペリー、アリソン・ピル、ジェシー・プレモンスほか。

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