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ししりばの家【小説】

2019/03/18


 小学生の五十嵐哲也は、級友の純と功と共にお化け屋敷の探検に出かけます。もうひとり先生から一緒に遊ぶように依頼された比嘉琴子も一緒です。今は空き家になっているその家は、かつて級友だった橋口の家で一家は夜逃げをしたとのもっぱらのうわさでした。
 子供たちは誰もいるはずのない家で砂の流れるような音を聞き、何者かの目を目撃しますが、純と功は死に、哲也は頭の中を流れる砂に付きまとわれ家に引きこもるようになってしまいます。
 おとなになってからも哲也は唯一の外出と言えば犬の散歩くらいで、彼は時折、お化け屋敷の前を通ってみたりしていました。そこには平岩という新たな住人が住んでいました。

 夫の転勤で東京に越してきた笹倉果歩は、偶然に幼馴染の平岩敏明と再会し、彼の家に招かれます。東京暮らしに馴染めずにいた果歩を敏明と妻の梓、寝たきりの祖母は歓待し、果歩は晴れやかな気分になります。仕事で夫が留守がちなことに乗じて果歩は平岩家を何度も訪れるようになりますが、その家には奇妙なことがありました。家のいたるところに砂が積もっているのです。そのことを訪ねてみても敏明はそれを当然のこととして受け止めています。そんな彼の態度に悩んでいた梓もある頃から砂があることを当たり前だと受け入れるようになりました。そして果歩の頭の中にも砂が流れ始めます。
 果歩が何度目かに平岩家を訪ねた時のこと、犬を連れた神経質そうな青年に声をかけられます。あなたはここに住んでいるのですか。青年の態度はここに住人がいることなどありえないと言いたげでした。

 比嘉姉妹シリーズ第3弾です。こんなふうに言うと、敏腕の巫女姉妹が次々と怪事件を解決するシリーズのように聞こえますが、比嘉姉妹が一緒に事件に立ち向かうことはほとんどありません。前作、前々作では妹の真琴が活躍しましたし、前作では亡くなった美晴も登場しています。そして今作で活躍するのは姉の琴子です。
 前半では気が小さく自分の異能を持て余している小学生の琴子が描かれ、後半でいよいよ大人になった琴子の巫女としての活躍が見られます。しかしながら、前々作「ぼぎわんが、来る」の終盤で見せた絶大な能力を備えた日本屈指の霊能者の面影はありません。本作は琴子がまだ新米だったころのお話しなのでしょうか。しかしながら彼女は妖怪退治に爆弾を使用し、それを警察が不問に伏すていどの人脈は持っているようです。

 比嘉姉妹シリーズに登場するのは、悪霊や怨霊というよりも妖怪のようです。筆者の認識では、妖怪と言えば河童や人魚のような生物学的にはあり得ない魔物といった存在でしたが、もっと実体のないもの、霊的な存在も含まれるようですね。で、今回登場する“ししりば”はどんな妖怪かと申しますと、ちょっとネタバレになってしまいますが、家にとり憑き家族の守り神として怪異をもたらすもののようです。守り神がついているなら家族も安心と思いきや、ししりばは家族構成を守るだけです。欠員ができたら誰かを取り込んで家族にしてしまい、不用な侵入者は呪い殺してしまいます。とにかく、ししりばが納得できる家族構成を維持しなければならないようです。
 橋口家が夜逃げしてしまったあと、そこに忍び込んだ純と功はししりばに呪い殺されてしまいましたが、哲也と比嘉琴子は生き残りました。果歩も殺されずに済んでいます。ただし、哲也と果歩は頭の中を流れ続ける砂に苦しめられます。琴子は霊能者であるせいか、無事だったようですね。

 今回は待望の琴子ちゃん大活躍だったわけですが、ちょっと残念な点もありました。彼女の活躍が釈然としないというか、哲也君の方が頑張っていたというか。守り神と砂の関係もよく解りませんでしたし、哲也君が長年砂に悩まされ、社会生活にも支障を来すほどたったことの意味もよく解りません。橋口家が夜逃げして家族に欠員ができなのなら、哲也君を家に取り込むべきではなかったのかか、それとも彼が成長して家族構成としてふさわしい年齢になるのを待っていたのか。
 ししりばには苦手なものがありました。彼をここに封じ込めておくために、あるもの(神社などでよく見かけるもの)が置いてあったのですが、それを敷設した人は誰だったのでしょう。謎です。そのあるものにちなんだ誰かさんが今回大活躍しますよ。

 家というものは、家族を風雨や外敵から守り、心底くつろげるプライベイト空間であったりするわけですが、家は家族を失うと抜け殻になってしまいます。老朽化が進んだ家でも誰か住む人がいる限り倒れないらしいですよ。で、住む人を失うと倒壊してしまうそうです。家は人と共にあるものなんですね。
 そんな家に守り神がとり憑いて、誰でもいいからとにかく家族構成を維持し、それを守るなんてやられたら、家族は家に隷属する人形になってしまいます。恐ろしいですね。平岩家の夫婦とおばあちゃんは、ししりばの虜として守られていたわけですが、その前の住人の橋口さん一家は、どうやって家から抜け出したのでしょう。また、平岩家が住むまでの空き家の間、ししりばはどうしていたのでしょう。ししりばの気持ちはよく解りませんね。
 妖怪の気持ちって考えたことあります? 人に害成す恐ろしい妖怪は、どんな思いで怪異を起こすのでしょう。妖怪は、一方的な情念の塊で、人間のような意思はもたないのでしょうか。でも、前々作のぼぎわんは、ひじょうに知能程度が高くて、高い学習能力を持っていました。ぼぎわんはししりばよりもずっと狡猾で執念深く、恐ろしい相手でしたが、ぼぎわんの方が話せば解るんじゃないのか、ふとそんなことを思いました。

2017年 KADOKAWA。
著者:澤村伊智。

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