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移動都市/モータル・エンジン【映画】

2019/03/08


 60分戦争で世界の文明が滅んだあと、人々は移動式の住居で暮らしていました。危険が生じた際には家や商店をキャタピラ付きの駆動部の上に格納し、一目散に逃げます。人々にとって最大の脅威は、都市まるごとキャタピラに乗せたロンドンでした。今日もまたロンドンの接近を知ると人々は大急ぎで逃げ出しました。そうして逃げ遅れたものは捕獲されロンドンに取り込まれてしまいます。
 取り込まれた人々は、最低限の私物以外を没収され、以降はロンドンの最下層の市民として暮らすことになります。ロンドンはそううやって狩りを続けて食い膨れ、資源や食料を調達していました。彼らのもうひとつの目的は、世界の方々に散らばった旧時代のテクノロジーを集めることでした。
 歴史家として研究施設を牛耳るサディアス・ヴァレンタインは、旧時代の兵器を蘇らせる研究をしていました。彼に刺客が迫りますが、危ういところで命拾いした彼は、刺客がヘスター・ショウという長年彼を付け狙っている女性であることを知ります。暗殺に失敗したへスターは何とかロンドンを脱出しますが、暗殺を妨害するも彼女と一緒に放り出されたトム・ナッツウォーシーと放浪することになります。
 トムはへスターと旅を続けるうちに、彼女の母も歴史研究家で、過去にヴァレンタインに重要な科学技術を奪われたうえ殺されたことを知ります。
 2人は人身売買を生業とする部族に捕らえられてしまいますが、ジヘという東洋系の女性に危機を救われます。飛行艇を自在に操るアナ・ファンは、2人を空中都市へ連れてゆきますが、そこへへスターを狙った人造人間シュライクが迫ります。

 都市というか国ごとまるごとキャタピラに乗せて高速移動するロンドン、それを予告編で見た時には大いに興味を惹かれました。異動都市とはすごいテクノロジーですが、見たところその技術はひじょうに古臭くてアナログで、ディーゼルエンジンのような感じです。ロンドンは移動しながら小さな移動住居を狩り、食料や燃料、旧時代の技術などを集めています。
 歴史家のヴァレンタインは、若いころに旅している途中にへスターの母と出会い、伝説の60分戦争で世界に終末をもたらした究極の兵器の心臓部であるコンピューターを手に入れます。最終兵器メビウスを起動させ、ロンドンの力を不動のものにするという彼の計画は、独裁者マグナス市長さえも反対する悪行でした。
 これを知ったヴァレンタインの娘キャサリンも父の暴走を阻止しようと立ち上がります。一方、ロンドンを脱したへスターとトムは、大地に根を下ろし大自然と共に暮らしている地上人たちの楽園シャングオにたどり着きます。彼らは堅牢な壁を築き、移動都市の侵攻を阻んでいました。マグナス市長は、シャングオがロンドンを豊かな土地から締め出して滅ぼそうとしていると信じています。
 たった60分で世界に終末をもたらした最終兵器メビウスを再起動させれば、シャングオの壁を破壊することができます。しかしさしものマグナム市長も、これを使うことには反対です。世界は今度こそ本当に終わっています。サディス・ヴァレンタインは、この市長の考え方を古いとしており、彼を無視して計画を進めます。メビウスはロンドン内部にあり、ヴァレンタインはこれを起動するためのコンピューターも手に入れていました。

 ヘスターを付け狙う不気味な人造人間シュライク、彼は旧時代の殺人兵器の様相をていしていますが、彼の過去のエピソードはとても悲しくて切なくて、涙なしには聞けません。彼は人間の愚行の象徴のような存在ですが、そんな彼の長く孤独な日々に一条の光をもたらしたのは、母を亡くした幼い少女ヘスターとの出会いでした。その彼が無敵の殺戮マシーンと化し、人々に恐れられ、ヘスターを付け狙うようになった理由は何だったのでしょう。

 終末戦争の後の世界を描いたSFでは、科学力は著しく後退し、人々は古い時代の暮らしを送っています。「風の谷のナウシカ」や「スクラップド・プリンセス」では、荷馬車を馬に引かせる中世のような暮らしをしていますし、「北斗の拳」や「マッド・マックス」では、無法者が支配する西部開拓時代のような世界が展開します。そしてそこには覇権を巡る争いが展開します。権力者は圧政を以て世界を支配しようとし、これに対して勇敢なヒーローあるいはヒロインが立ち上がります。
 本作品では、時代はイギリスの産業革命あたりまで後退しているように見えます。人々の衣服や文化も、どういうわけか現代よりもはるかに古い時代のものになっています。ファンタジーあるいはSFファンタジー作品では、王政であるとか中世の生活様式、あるいは騎士や魔法使いなどが蘇るのが定石みたいになっていますが、人々のそうした文化への憧れみたいなものがあるのでしょうか。この作品には王様も魔法使いも登場しませんが、文化的に時代が逆行していることや、絶大な権力者に人々が服従している世界観は同じです。権力の暴走ゆえに世界が滅んで、その後にも新たな権力が動乱の世の中を築くのだとしたら、人間って本当に救われない生き物ですね。
 私たちが、こうしたファンタジーに見るべきは、人間のそうした宿命ではなく、異世界に投影された現代社会の構図です。ファンタジー世界のヒーローは、悪しき権力に抗い、主権を民衆の手に取り戻すために戦っています。優れた指導者の到来を夢見るのではなく、民衆の中から立ち上がった者たちが力を合わせて巨悪に立ち向うことを賞賛しています。

 聞くところによると、この作品に登場する60分戦争とは、アメリカと中国による全面戦争だったそうです。世界が崩壊したあと、権力者は、巨大な輸送機関の上に18〜19世紀初頭のロンドンを復活させ、移動住居を狩り続けています。一方、これを阻む壮大な壁を建造し、その向こうにシャングオを作って豊かに暮らしているのは、中国人を統領とした共和国です。米中による世界大戦のあと、西洋と東洋の勢力図が形成されているところが、ひじょうに象徴的です。

 ヘスターとトムを助けた女傑アナ・ファンは、お尋ね者であり高額の賞金首です。そのことをものともせず危険に飛び込む彼女は、この映画で最もかっこいいキャラです。演じるのはジヘという韓国の女優。アナ・ファンは移動都市ロンドンが支配するエリアでは重罪人ですが、シャングオでは英雄です。ロンドンがメビウスを起動した際には、その攻撃を阻止するために精鋭部隊を率いて突撃します。部隊の中には女性パイロットもいます。女性の活躍がとくに目立ちましたね。主人公も女性ですし、サディス・ヴァレンタインの娘キャサリンも父の悪行を阻むために立ち上がります。

 映像もストーリーもひじょうに素晴らしい、感動の超大作なのに、意外に知られていません。筆者も劇場予告編以外のコマーシャルを見たことがない。プロモーションに全然力が入っていないせいで、多くの人たちに存在を知られないまま公開に突入しました。知名度のある俳優も少なく、サディアス・ヴァレンタインを演じたヒューゴ・ウィーヴィングくらいしか筆者も知りません。これでは大作もヒットしませんって。「カメラを止めるな!」みたいに口コミで良い評価が広まればいいんですけどね。

原題:Mortal Engines。
2018年アメリカ、128分、翌年日本公開。
原作:フィリップ・リーヴ。
監督:クリスチャン・リヴァース。
脚本:フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエン、ピーター・ジャクソン。
出演:ヘラ・ヒルマー、ロバート・シーハン、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジヘ、ローナン・ラフテリー、レイア・ジョージ、パトリック・マラハイド、スティーヴン・ラング、コリン・サーモン、レジ=ジーン・ペイジ、メニク・グーンラタン、カレン・ピストリアスほか。

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