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ファースト・マン【映画】

2019/02/19


 空軍でテストパイロットをしていたニール・アームストロングは、幼い娘の病死後、NASA のジェミニ計画に応募します。計画に参加することになった彼は、妻のジャネットと長男と共にヒューストンに向かいます。妻子を寮に残して厳しい訓練と学科教習を修めた彼は、ジェミニ計画で宇宙空間における宇宙船同士のドッキングテストのパイロットに選ばれます。先に打ち上げられ衛星軌道上を漂う無人宇宙船を見つけ出し、それにドッキングするテストは無事に成功しますが、船が回転し始め制御不能に陥ります。同乗したデイヴ・スコットが失神してしまうも、ニールは自力でコントロールを取り戻し、帰還を果たします。
 有人宇宙飛行や宇宙遊泳でソビエトに差をつけられていたアメリカは、ケネディ大統領の意思を継いで月へ人間を送るアポロ計画を進めます。しかし、ベトナム戦争で疲弊したアメリカ国民の多くが、この無謀とも思える挑戦を非難しました。
 NASA はそれでも計画を進め、巨大なサターン5型ロケットで宇宙船を宇宙に送り出すテスト飛行を繰り返します。そしてアポロ11号がついに月へ向かうことが決定し、その船長にニールが選ばれたのでした。それは無事に帰還できる保証のない危険な挑戦でした。

 アメリカのアポロ計画においてアポロ11号が月着陸に成功したのは 1969年でした。小学生だった筆者も親の許しを得て、着陸の瞬間の実況中継をテレビで見ました。といっても実際の映像はなく、着陸船の航路を示す画像だけでしたが。世界はそのニュースに湧き、翌年の万国博覧会では、アメリカ館に月の石の実物やアポロ宇宙船の模型が展示され、何時間も並んでそれを見ました。ソ連館にも友人宇宙船ソユーズの実物が展示されました。宇宙船のコクピットは驚くほど狭く、宇宙飛行士は型にすっぽりはまった状態でほとんど身動きもできない状態で宇宙へ射出されます。その実態を目の当たりにして驚きと恐怖を感じたものです。
 ベトナム戦争を通じて米ソは激しく対立していた時代でしたが、万博に両国は顔をそろえ、筆者らは初めて目にする外国人たちに興奮したものです。
 ジェミニ計画およびアポロ計画では、多くの犠牲が出ました。優秀な宇宙飛行士が悲惨な事故で次々と命を落とし、アポロ計画は税金の無駄遣い、非人道的な米ソ競争と非難されました。そうした混乱の中でも、人々には夢と希望があり、その象徴として有人月着陸の成功は世界に驚きと喜びを与えました。政治の混乱の中で暗殺されたケネディ大統領の 1960年代中にアメリカは人類を月に到達させるという宣言は、その最後の年に達成されたのでした。

 月に最初の1歩を残したニール・アームストロング船長の「これは小さな一歩だが、人類にとっての大きな飛躍だ」の明言は世界を駆け巡りました。日本でも月面に残された最初の足跡の写真を使った記念切手が発売され、月着陸船と母船のプラモデルが発売されました。筆者も着陸船を買ってせっせと組み立てましたが、出来栄えは悲惨なものでした。
 アポロ11号に登場したのはニール・アームストロング船長、バズ・オルドリン、マイケル・コリンズの3人で、うちアームストロングとオルドリンが月面に到達しています。コリンズは指令船に残り着陸船の帰還をサポートします。

 映画の中に登場するジェミニ宇宙船およびアポロの司令船コクピットは、筆者が子供の頃に万博で見たものそのまんまでした。こんな小さくて狭苦しくてきゃしゃに見えるものに押し込まれて、宇宙飛行士は未知の世界へ旅立つんだ、その恐ろしさと不安が映像でもリアルに伝わってきました。ハッチが閉められ厳重にロックされると、もう逃げ場はありません。閉所恐怖症の人でなくても耐え難い状態です。小さな窓からかろうじて外が見えます。そしてロケットのブースターの噴射が始まると、すさまじいG(加速度)がかかり、船体が激しく振動します。今にも船体がバラバラになるのではないかと不安になるような金属のきしむ音が続きます。まるで拷問です。特殊な訓練をクリアした宇宙飛行士でなければ、発射時のGと振動に耐えられないでしょう。
 1960年代の技術で宇宙へ向かうのは、イカダで太平洋を横断するよりも危険だ、そう感じました。実際に多くの宇宙飛行士が訓練や発射テストでも命を落としていますし、月着陸を断念して帰還したアポロ13号の奇跡の生還は映画にもなりました。

 危険にいどむパイロットもさりながら、彼らを支える家族もたいへんです。生還できないかもしれない夫の旅立ちに際し、妻のジャネットは気丈にニールに進言します。彼の口から子供たちに現状を伝えるように。
 夫が宇宙に旅立つ度に、ジャネットは宇宙船と地上管制基地とのやり取りをモニターしながら、それを見守ります。そして帰還後はマスコミの取材の嵐にさらされます。彼女の精神力と忍耐も大変なものです。
 この映画は、ニール・アームストロングにスポットを当てて、未知の宇宙に挑戦する人々の壮絶な戦いを描いた人間ドラマです。感動の月面到達シーンや地球への生還という華々しい場面よりも、宇宙飛行士と家族が味わった恐怖と苦悩が克明に描かれています。それゆえに、ひじょうにリアルで迫力ある映像であるにも関わらず、地味な表現になっています。観客の中にはもっと感動的なドラマを想像していて拍子抜けしてしまった人も少なくないかも知れません。

 アポロ計画は1972年まで続き、計6回の月面到達を成功させています。その後はスペースシャトル計画が始まり、それも現在は完了しています。今は、アメリカ合衆国、ロシア、日本、カナダ、欧州宇宙機関(ESA)による国際宇宙ステーションの運用が続いています。
 宇宙旅行もジェミニ計画やアポロ計画の頃に比べると安全性快適性が向上しているでしょうが、まだまだ旅客機ほどの信頼性は確保できていないようです。それでも人類は宇宙を目指し続け、民間による宇宙事業、火星への有人飛行と挑戦は続きます。
 そしていつかは民間人も宇宙旅行が楽しめるようになるのでしょうが、そこに到達するまでには、先人たちの苦労と犠牲があったわけです。
 宇宙飛行士の大変さももちろんですが、宇宙計画を支え続けた多くの人々の苦労についてもドラマ化されるといいですね。

原題:FIRST MAN。
2018年アメリカ、141分、翌年日本公開。
原作:ジェイムズ・R・ハンセン。
監督:デイミアン・チャゼル。
脚本:ジョシュ・シンガー。
出演:ライアン・ゴズリング、クレア・フォイ、ジェイソン・クラーク、カイル・チャンドラー、コリー・ストール、キアラン・ハインズほか。

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