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ずうのめ人形【小説】

2019/02/26


 オカルト誌を扱う雑誌社でバイトをしている藤間洋介は、彼が担当している作家湯水が原稿締切が近づいても連絡が取れないので、自宅へ様子を見に行きます。すると湯水は両目をえぐられて死んでおり、分厚い原稿が残されていました。藤間に同行したバイトの岩田がその原稿を持ち帰りますが、それを読んだ彼は原稿の内容が湯水の死と深く関係していると主張し、藤間にも読むように勧めます。
 原稿の内容は、来生里穂という中学生の少女の手記で、身勝手な父から逃れて母と弟と妹と4人でアパート暮らしをする里穂が体験するオカルト話しが綴られていました。オカルト好きの里穂は学校では友だちがおらず、図書館に入り浸り、そこに設置された感想ノートを通じて共通の趣味を持つゆかりと知り合います。そしてゆかりから"ずうのめ人形"の都市伝説を聞かされます。
 岩田が湯水の後を追うように死に、藤間も遠くから自分を見つめる日本人形を見るようになります。顔を赤い糸でぐるぐる巻きにされたそれが"ずうのめ人形"であることは明らかでした。これを読んだ湯水や岩田も同じ人形に呪い殺されたのだと悟った藤間は、湯水が開けた穴を埋めるために起用されたオカルトライターの野崎昆に相談します。
 "ずうのめ人形"の話しを読んだり聞いたりした者は、人形に憑りつかれ4日後に死ぬ。そうした霊現象の実在を信じる野崎は、婚約者にして霊能者の真琴と共に藤間の呪いを解くために奮闘します。そして野崎も真琴も原稿を読んで人形に憑りつかれますが、その物語の中に真琴の亡くなった姉の美晴が登場してることを知り、語り手の里穂も実在する人物であることを知ります。
 日に日に人形が近づき、残された時間がなくなってゆく窮状で、彼らは里穂を探し出し、呪いを解こうとします。一方、湯水とは旧知で女性編集長の戸波も独自に里穂を追っていました。

 「ぼきわんが、来る」に続く比嘉姉妹シリーズ第2弾です。前作でデビューした澤村伊智にとってはプロになってから初めての作品です。大ヒットし映画化もされた前作のような傑作になるか興味津々でしたが、はっきり言って前作を上回る素晴らしい作品でした。ひじょうに面白かったです。比嘉姉妹シリーズではありますが、長女で日本有数の霊能者の琴子は今回は登場しません。代わりに真琴との間にいた故人美晴が亡くなった顛末が、里穂が残した原稿の中に描かれています。
 里穂の父親は異常性格者で、彼女は性的虐待を受けていたのかもしれません。そんな父から逃れて母や弟妹とアパート暮らしをしていたのですが、居場所を突き止めた父が追いかけてきて異常なふるまいをします。里穂はゆかりから聞いたずうのめ人形の話しを父に聞かせます。これで父を呪い殺せる。ところが何も知らない父は弟妹たちのもそれを話していたのです。
 では、ゆかりから人形の話しを聞いた里穂はなぜ死なないのか、彼女にそれを教えたゆかり自身が生きているのはなぜなのか、そもそも都市伝説とされる"ずうのめ人形"の話しが世間的に拡散していないのはなぜなのか、そして里穂が何を意図してこのお話し(自叙伝)を書いたのか……。ホラーには人の恨みや古い因縁にまつわる霊現象が多いですが、この小説に出てくる悪霊の出所はひじょうに意外です。こんな呪いもあるのかと驚愕させられました。

 前作もそうでしたが、このシリーズは語り手の視点が独特です。前作では語り手が章ごとに変化しましたが、今回は、バイトの藤間と、自叙伝を綴った里穂が交互に語り手になります。里穂は原稿の中だけではなく、実在の人物としても語り手を演じます。シリーズものとしては、比嘉姉妹と真琴と結婚する野崎昆が主要人物なのですが、彼らの活躍は控えめです。シャーロック・ホームズや明智探偵のようにお話しの主導権を握りません。ユニークでおもしろい構成ですね。
 そして、登場シーンは少ないですが、女編集長の戸波が大活躍します。彼女の慧眼がなければ呪いを解くことができませんでしたし、野崎や真琴、藤間も命を落としていました。ずうのめ人形の呪いの本質も解らずじまいでした。
 澤村伊智という作家は個性的にして天才ですね。次回作も楽しみです。

2016年、KADOKAWA/角川ホラー文庫。
著者:澤村伊智。

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