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七つの会議【映画】

2019/02/14


 東京建電の重役会議は、鬼の営業部長 北側誠の怒号に張り詰めていました。営業一課の坂戸課長は業績を伸ばしていましたが、二課は毎月目標未達で北側課長の逆鱗に触れ、原島課長以下課員は厳しく叱責されていました。そうしたなか、万年係長の八角民夫はそれをあざ笑うかのように居眠りしているのでした。
 一課に身を置きながら最低限の仕事しかしないぐうたらな彼を周りは居眠りハッカクと呼んでいました。年下にして上司の坂戸課長に怠慢ぶりをののしられた八角は、坂戸をパワハラで訴えます。ぐうたら社員の訴えなど相手にされないだろうと誰もが思っていたのですが、坂戸は有能であるにも関わらず異動になってしまいます。一課長には二課の原島が就くことになりますが、その人事は彼にはあまりにも重荷でした。
 一課の部下にして近く寿退社が決まっている浜本優衣は、残された会社生活で何か実績を残しておきたくて、ドーナツの車内販売を始めますが、経理課の新田雄介がそれを認可せずいつまで経っても仮営業のままでした。そして新田は東京建電で扱っているネジの発注がトーメイテックからねじ六に変更した八角を会議で吊るし上げます。前の担当が経費節減のためにねじ六からトーメイテックに変更したものをわざわざ戻し、出費を膨らませてしまったことの責任を問い、ねじ六との間に癒着があったのではないかと疑ったのです。ところが八角の所業は不問に伏され、新田が異動になってしまいます。
 八角に関わった者が次々に異動になり、彼の不可解な仕事ぶりを黙認する会社に不信感を抱いた浜本優衣は、どうせ辞める身と八角を調べ始めます。優衣の上申で動かざるを得なくなった原島課長も彼女と共に八角の行動を監視するうちに不信を募らせます。そして2人は、異動になったまま姿を消した坂戸の行方と、トーメイテックに発注したネジに欠陥があることを突き止めます。

 ぐうたら社員の居眠りハッカクこと万年係長の八角民雄は、北川誠と同期入社で、2人は良きライバルとして会社のために身を粉にして働いていました。どんな手を使ってでも商品を売る。相手の弱みに付け込んででも売りつける、それが会社のためと信じていました。しかし自分の強引な商法が顧客にもたらした弊害を目の当たりにしてから、八角の態度は一変します。ある時親会社のゼノックスの常務梨田元就から不正取引を強要され、八角はこれを拒み、北川が受けたことから2人の会社人生は大きく変わります。
 八角の動向を調べ始めた原島と優衣に対して、彼はこれ以上深入りするなと警告します。

 筆者に労働者文学について教えてくださった某作家は、長く生きてきた企業は必ず腐敗する、それをどのようにリフレッシュしてゆくかがその後の存続を左右するとおっしゃっていました。そして腐敗はどこから始まるのかという筆者の質問に対して、先生は上からだと答えられました。これは、爛熟社会と言われて久しく、国民の他に例のないほどの高齢化に直面した日本の多くの企業が抱えた問題だと思われます。筆者の勤める会社でも、会社の労働組合に対する不正な支配的介入が常識化し、社員もそれを当たり前にしてしまっています。正当な労働運動を続けようとする者は、同僚にさえ煙たがられるという異常な空気が蔓延しています。社員は労働条件や賃金面での冷遇を陰でぼやきながら、保身のために正当な権利を主張することもしなくなっています。こうした悪しき体質が現在の深刻な経済停滞や粗悪製品の蔓延を招いているわけですが、誰も動こうとしない。動いている者はゼロではないのですが、数としてまったく足りない。ひじょうに恐ろしい事態です。
 今の若い世代を親に寄生しているなどと、たいへん失礼で不快なことをぬかしやがる老害がマスメディアでデカい面をしていますが、国の明日を担う若い人たちに低賃金重労働を課し自分らだけ勝ち逃げを決め込んだ張本人が、ふぬけた老害どもなのです。しかしながら、この失礼な老害どもがほざくことがらはもっともでもあります。若い人たちの親世代は間もなく企業定年を迎えて定収を失い、死して年金も失います。そうなった後に若い人たちにこの国で生きてゆく術はありません。
 企業はもっともっとお金が欲しいと言って株を上場し、株式市場で言うところの優良企業であり続けるために、右肩上がりの業績を続けてゆかねばなりません。そのためには不正にも手を染めねば生き残ることはできません。出費を抑え人件費を抑え、業績を上げるためには手段はいとわない、それが業界の常識になっています。企業コンプライアンスなんて言葉がありますが、企業がそれを強いるのは社員の素行に対してだけで、企業の悪しき体質は変わりません。

 こんな日本の実情の中で、たとえ虚構であってもこうした生々しい映画を造るのはすごいことだと思います。独裁主義の国で独裁者批判をやるようなものです。穿った見方をすれば、こうした勧善懲悪ドラマを作ることで民衆のガス抜きをしているとも言えるわけですが、世の中の腐敗に対する批判であることには間違いありません。これをドラマのこと、他人事とみんなが思っているうちは世の中は良くならないので、変化を嫌う向きはご安心を。
 深刻な話はさて置いても、ひじょうに面白い内容なのでご堪能ください。痛快にしてひじょうに真面目、考えさせられる内容でありながら大いに楽しめます。

2019年、119分。
原作:池井戸潤。
監督:福澤克雄。
脚本:丑尾健太郎、李正美。
出演:野村萬斎、香川照之、及川光博、片岡愛之助、音尾琢真、藤森慎吾、朝倉あき、岡田浩暉、木下ほうか、吉田羊、土屋太鳳、小泉孝太郎、溝端淳平、春風亭昇太、立川談春、勝村政信、世良公則、鹿賀丈史、橋爪功、北大路欣也ほか。

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