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十二人の死にたい子どもたち【映画】

2019/02/12


 自殺サイトの集団自殺に応募した12人の少年少女たち。彼らはサイトの管理人の指示に従ってとある廃墟の一室に集まりました。そこは廃院になったばかりの病院で、彼らは建物の中に入るドアの暗証番号と中にある金庫の番号を知り、それらをクリアすることで応募者であることが証明されました。来た順番に金庫の中の番号札を持って、指定の自殺部屋に向かうのですが、部屋には大きな机と人数分の椅子、それに人数分のベッドが用意されていました。
 しかし最初の1人が入室した時すでに、先客があり、その者はベッドのひとつに横たわりすでに絶命していました。
 早々と自殺を完了した者がいると思われたのですが、やがて番号札を持った12人がそろい、死亡者は13人目の参加者ということになりました。それにかまわず集団自殺を決行しようとする12人ですが、すでに死んでいるものが殺された可能性が浮上すると、真実が明らかにされないと死ねないと言い出す者が現れました。例えば親に保険金を賭けられている者にとっては、事件が他殺と判断されれば彼の意に反して保険金が親に支払われることになり、それでは鬼畜な親を出し抜いてやることにはなりません。
 ここでの集団自殺のルールは、全員で話し合って決行が決まらなければ実行できないということになっているので、参加者たちは犯人捜しを始めることになります。彼らひとりひとりにとって自分以外がすべて容疑者という状況の中で犯人捜しが始まります。不安と疑心暗鬼の中で、ひとりひとりの自殺の動機が明らかになってゆきます。

 少年少女たちの命がひじょうに軽くなり、それが当たり前のように受け入れられるようになった昨今の日本映画事情ですが、ここにまた自殺を肯定する作品が誕生しました。自分たちの責任において死ぬ権利を守るための殺人犯捜し、それがこの作品の内容です。
 それぞれの自殺の動機は様々です。上述の親に保険金を賭けられた者から、いじめに遇っている者、自殺したアイドルの後を追おうという者、病に冒され余命宣告を受けている者、過去の過失で兄弟を植物状態にしてしまった者、人気アイドルで業界に作られた自分から本当の自分を取り戻すために死ぬという者もいます。
 自殺など考えたことのない人間にとっては、若くして命を絶とうと考えることは愚行としか思えないでしょうが、この映画を観ているうちに、それぞれの死にたい理由がもっともだと感じるようになります。
 自分たちの死にたい理由を吐露し、他人のそれを聞くうちに、彼らはそれぞれ、自分の話しを聞いてくれる大切な仲間へと変じてゆきます。そして殺人事件と集団自殺の行方は、意外な方向へと向かうことになります。

 たいへん感動的な映画でした。そのタイトルに反して生きることへの力をくれる内容でした。しかしながら日本の現状は自殺超大国です。競争だの勝ち組負け組だのというあまりにも幼稚で短絡的な考え方がいまだに体制としてまかり通り、労働の価値が卑しめられ、人が人を踏みつけにし、1点集中型の富の独占でまともに経済も回せない、それが現代社会です。人権問題を真顔で説く識者の言動が漫才にしか聞こえません。命の価値や人間の平等性を力説しながら、若者たちの自殺を煽り続ける腐った社会体質には本当にうんざりします。こんなことをこの場で言う筆者も、企業の不正やパワハラに対して充分に闘えない非力な負け犬ではあるわけですが。何もできないなら黙ってろと言われるかもですが、自分の非力を認めてみんなで黙って世の中が悪くなってゆくことに加担しているのもどうかと思います。
 この映画には直接的な社会批判はありませんが、12人の少年少女たちの自殺の原因のひとつひとつが社会を映す鏡であり批判になっています。そして集団自殺という後ろ向きな理由であれ、人々が集まり話し合い、協力し合うことで、彼らは大切なものをつかみ取ります。人間は独りで考え独りで判断して自分の責任で行動しますが、それでも独りになってはいけない、人を独りにしてはいけない、そのことをこの映画は教えてくれます。

2019年、118分。
原作:冲方丁。
監督:堤幸彦。
脚本:倉持裕。
出演:杉咲花、新田真剣佑、北村匠海、高杉真宙、黒島結菜、橋本環奈、吉川愛、萩原利久、渕野右登、坂東龍汰、古川琴音、竹内愛紗ほか。

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