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鑑定人と顔のない依頼人【映画】

2019/02/21


 鑑定士のヴァージル・オールドマンは、業界では有数の腕利きでしたが、女性が苦手で老境に至るまで独り身を通してきました。その欠点を埋めるように、彼は秘密の部屋に大量の女性の肖像画を集めていました。高価な美術品を扱う彼が主催するオークションで、知人のビリー・ホイッスラーにお目当ての品を安価で落札させ、それを自身のコレクションにしていました。
 ビリーは、もともと画家を目指していましたが、ヴァージルに才能がないと指摘され、以来彼と共謀してオークションで儲けていました。
 ある時、両親を亡くしてその遺品である大量の美術品を売りに出したいという依頼が舞い込みます。依頼人はあれこれ理由を付けて会おうとせず、美術品の鑑定にも立ち会おうとしません。その比例に腹を立てたヴァージルは依頼を断ろうとするのですが、依頼人のクレアは広場恐怖症という特殊な対人恐怖症で、人前に立つことができないことが判ります。
 彼女の家に何度か足を運ぶうちに、クレアが別室に潜み、電話で話をしていることが判り、ヴァージルは帰ったと見せかけて物陰に隠れてクレアを一目見ようと企てます。ドアの閉まる音で、ヴァージルが家を出たと思ったクレアは、別室から姿を現します。彼女は長らく隠遁生活を続けてきたとは思えないような妙齢の美女でした。
 さらに彼女の家に通い詰めるうちに、クレアはヴァージルに気を許し、ついに彼の前に姿を現します。ヴァージルはクレアのために服を選ぶなどして、楽しい時を過ごすようになりました。
 友人で機械の専門家にして異性の扱いにも慣れているロバートに相談したところ、彼はクレアを絶対に手放すなとアドバイスし、ヴァージルはクレアに夢中になります。そして2人は恋に落ち、ずいぶん年の離れたカップルが誕生します。
 クレアの広場恐怖症は少しずつ癒え、彼女はロバートや他の人間にも会うことができるようになり、レストランでの食事も実現します。ヴァージルのプロポーズをクレアは快諾し、2人は結婚します。
 ヴァージルの家に移り住んだクレアに、彼は秘密の部屋のコレクションを見せ、彼女はその見事な光景に息をのみます。

 これは、美女と老人のラブストーリーではありません。サスペンスです。セレブな世界に展開するミステリーが絶妙です。クレアの家で見つけた古い歯車、彼女の母の肖像画、クレアがむかし行ったことのある店、あるいはクレアの言動の数々、それらを見逃さずに覚えておくと、後半のどんでん返しと謎解きが感慨深いものになります。クレアの家の向かいの喫茶店にいつもいる小人症の少女、彼女はいつも数字をつぶやいていますが、彼女も重要なカギを握っています。
 古い歯車は、その後次々と見つかり、ロバートの手によってオートマタに仕上がってゆきます。オートマタは中世の頃に作られた自動人形で、人間のような動きを見せます。

 さて、ではこの上品で格調高いラブストーリーは、サスペンスとしてどんな展開を見せるのでしょう。それは読者自身で確かめていただくわけですが、結果の上辺だけを見ているとこの作品はただ単にサスペンスとしてなかなかおもしろい、それだけです。でも、事件を巡るキャラクターたちの思いをあれこれ考えるとひじょうに奥深い作品になります。
 ちょっとだけネタバレをいたしますと、ヴァージルの秘密の部屋の名作の数々は、彼がクレアと出会わなければ老人と共に人知れず埋もれることになっていましたが、クレアとの結婚で解放され、広い世界に出てゆきます。ということはヴァージルは大切なコレクションを失うことになるわけですが、その代償として彼は別の幸せ、これまでの彼では得られなかった幸せを手にすることになります。
 ヴァージルは大変な自信家で、ビリーの無才を断言して譲りませんが、ビリーの方はじつはこれにいささか不満のようです。もしもヴァージルが彼の才能を認めていれば、人生が変わっていたみらいなことをこぼしています。このビリーの思いもミステリーに深く関わってきます。ビリーはヴァージルを親友と認め、彼の詐欺まがいの絵画の入手に加担して謝礼を得ていますが、その暮らしをずっと続ける気もなさそうです。
 この物語をハッピーエンドだと申せば、大勢の人が首をかしげるかもしれませんが、筆者はそう信じています。なぜそうなのか、本編を観て考えてみてください。ヴァージルがもしもクレアに出会わなければ、彼は秘密部屋に抱え込んだ絵画たちと共に孤独な老後を送ることになっていたはずです。それを彼女は変えてくれました。ラストシーンの彼の表情は、充実感に満ちています。

原題:La migliore offerta。
英題:The Best Offer。
2013年イタリア、124分、同年日本公開。
監督、脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ。
出演:ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、シルヴィア・フークス、ドナルド・サザーランド、フィリップ・ジャクソン、ダーモット・クロウリー、キルナ・スタメル、リヤ・ケベデほか。

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