kepopput.jpg

ぼぎわんが、来る【小説】

2019/01/25


 関西出身のサラリーマン田原秀樹は、妻の田原香奈との間に娘の知紗が生まれてからというものの、育児日記をブログにアップし、イクメンとして奮戦します。ブログは多くの読者に読まれ多数のイクトモもできます。ところが知紗が2歳になった頃、家族の住むマンションに奇怪な出来事が起きます。知紗が生まれる少し前、会社に彼を訪ねてきた謎の女性がいて、まだ誰にも言っていないはずの知紗の名前を口にしたと言います。そのことを彼に伝えた同僚は肩に謎の咬傷を作って入院してしまいました。以来彼は、多数のお守りを自宅に並べていましたが、それらが引きちぎられ、香奈と知紗が怯えて泣いていました。民俗学を研究する友人津田大吾の紹介でオカルトライターの野崎崑に会い、野崎はまた彼のガールフレンドで霊能者の比嘉真琴を彼に紹介します。
 田原香奈は、イクメンパパとして名をあげる夫が、じつは善き父善き夫を演じたいだけの自己中男で、家庭も育児も顧みないことに苦しめられていました。秀樹に1度は拒絶されたものの放ってはおけないと、田原家に出入りするようになった真琴に知紗はよくなつき、真琴も知紗が大好きでした。そしてそのことが香奈の心労を減らしてくれていたのですが、やがて恐ろしい呪いが田原家を襲撃します。それは真琴にも手に負えない強大な力を持った怨念でした。
 真琴が田原家に憑りついた呪いに入れ込むようになってからというもの、野崎崑も事件にかかりきりにならざるをえませんでした。田原家を見舞う怪異はついには警察沙汰にまで発展し、彼も疑われますが、真琴の姉の比嘉琴子が訪ねてきて、警察を一蹴してしまいます。彼女は日本でも有数の霊能者で、警察の上層部とも通じているのでした。野崎は琴子と共に田原秀樹の実家を訪ね、田原家にまつわる古い因縁を突き止めると共に魔導符を発見します。それは御守りの中身を逆さまにし、魔物を呼び寄せる恐ろしいアイテムで、秀樹はその古い怨念に憑りつかれていたのです。

 映画「来る」の原作小説で、映画があまりにも面白かったのでもう1度観に行った日に、小説を読み終えました。小説の方は3章からなり、各章の語り手が、田原秀樹、田原香奈、野崎崑となっていて、それぞれが各章の主人公となり、その目線でお話しが進行します。つまり1つのストーリーが別々の目線で描かれるわけですが、同じお話を3度繰り返すわけではなく、話しは順番に進んでゆき、3章で完結します。ひじょうに巧妙な手法です。
 映画では、妖魔の正体は明らかにされず、死者の世界から干渉してくるなにか、としてそれは描かれます。巫女の琴子は、映画の中では子供が一時期死にひじょうに惹かれるように、死者たちも正者に強い憧れを抱いていると、それを表現しています。そして、ひじょうに強いパワーを持ち、高い学習能力を有するそれは、呼ばないと来ないとのことでした。それを読んだのが魔導符です。魔導符には、人間の他人への強い恨みが込められていますが、それが死者の世界から強大な力を持つそれを引き寄せることになります。
 一方、小説版では、それは“ぼぎわん”の名で表現されており、霊界の存在というより妖怪のように使われています。ぼぎわんの名は、西洋の悪魔ブギーマンに由来し、西洋の文化と共に日本にやって来たと思われがちだが、それはもともと日本にいて、誰もその正体も名も知らず、後づけでその名が与えられたと琴子は言います。古来、寒村では飢饉に苦しむと口減らしのために魔を呼び寄せ、老人や子供を食らわせた。ぼぎわんが来てお山に連れてゆく、その伝承は、飢饉に苦しむ人々と生贄を食らう妖怪との間で利害が一致から生じたものなのだそうです。
 映画の中では、津田大吾が「口減らしのために殺した子や老人を化け物のせいにした」と説明し、彼はそんなもんは本当はおらへんと断じています。

 映画の中では、琴子は最後の方でようやく登場し、クライマックスの大祓いを仕切りますが、原作では彼女は小柄な巫女で、野崎と行動を共にし、献身的に事件解決に奔走します。ぼぎわんを迎え撃つのも、田原のマンションではなく真琴の家で、大掛かりなお祓いも登場しません。
 一見幸せそうな家族の心のすきに、得体のしれない何かが侵入し、徐々に大きく膨れ上がり、ついには命を脅かす怪物にまで成長する、それがこの作品における恐怖です。ぼぎわんは執念深く憑りついた相手を追い詰め、学習して知恵を着け、周りの人間に成りすまして近づいてきたりします。魔物は心のすきや、人間関係の亀裂に魔物はつけ入ってくる、だから家族の絆は大切にすべし、そんな教訓が伺えます。真琴も、あれを遠ざけるために家族に優しくしてくださいと秀樹に忠告しています。

 この小説は、比嘉姉妹シリーズの第1作で、以降毎年1作ずつ4作がすでに執筆されています。ひじょうに気になりますね。2作目以降も電子書籍で出ているとよいのですが。

2015年、KADOKAWA / 角川ホラー文庫。
著者:澤村伊智。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


索引 韓流映画&番外編





     12
3456789
10111213141516
17181920212223
2425262728  
<< February 2019 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES










recent comment

links

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM