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博士と彼女のセオリー【映画】

2018/12/06


 ケンブリッジ大学の学生スティーブン・ホーキングは、同じ大学のジェーン・ワイルドと恋に落ちます。しかし彼は体が思うように動かなくなって倒れ、医師から ALS(筋萎縮性側索硬化症)の診断を受けます。余命2年と聞かされた彼は自暴自棄になりますが、ジェーンは彼に寄り添い、それぞれの家族の反対を押し切って結婚します。
 2人の間に子供ができ、スティーブンはブラックホールに関する論文で博士号を取りますが、病気が進行してますます体の自由が利かなくなり、車椅子の生活を知られます。2人目の子供ができ、育児と夫の介護に忙殺されるジェーンに、スティーブンは彼女の好きな音楽を勧め、ジェーンは聖歌隊に入ります。聖歌隊の指揮者ジョナサンが、子供たちのピアノ教師として家に通うようになりますが、独り身のジョナサンは、スティーブンの世話も焼くようになります。しかしジェーンに3人目の子供ができると、その子の父親がどちらか判らないといううわさが立ち、ジョナサンは身を引きます。
 オペラに招待されてフランスに飛んだスティーブンは、公演中に倒れて病院に運ばれますが、彼の命を救うには気管を切開して呼吸器を取り付けるしかありませんでした。声を失ったスティーブンは、スペリングボードを用いて他人に意思を伝える練習を始めますが、それはジェーンの手に余り、専門家の看護師エレイン・メイソンを雇います。エレインと2人の時間が増え、ジェーンは疎外感を覚えるようになります。
 会話に音声合成機を用いるようになってもエレインは、スティーブンの介護を続け、彼は「ホーキング、宇宙を語る」を執筆し、それが世界中で翻訳されベストセラーになります。アメリカでの授賞式にスティーブンはエレインを同行することをジェーンに告げ、これが彼女との別れになります。
 スティーブンはジェーンと別れてエレインと再婚、ジェーンはジョナサンと再婚します。しかし、博士がエリザベス女王に招かれた時には、3人の子供たちと共にジェーンも一緒でした。

 イギリスの天才理論物理学者スティーヴン・ウィリアム・ホーキング博士は、脳の命令が体に伝わらず、筋肉が萎縮硬化して行く難病に冒され、ケンブリッジ大学在学中に余命2年の診断を受けますが、ジェーンと結婚し、やがて電動車椅子での生活になり、気管切開により声も奪われますが、ALS の進行が止まり、今年2018年に76歳で亡くなるまで、現役の科学者として活躍し続けました。
 この映画が公開された2014年はまだ存命中で、劇中で使用されている電子音声は、博士自身が提供しているそうです。ご本人が声の出演をされているわけです。もっともそれはコンピューターで合成されたものですが。
博士が、コンピューター合成の声で公演する姿をテレビで見たことがあります。そしてこの映画の原作は妻のジェーン・ホーキングが著した「Travelling to Infinity: My Life with Stephen」です。
 むかし科学雑誌で、ブラックホールの特異点について読んだことがありますが、ひじょうに衝撃的で夢中にさせられました。宇宙船に乗ってブラックホールに接近すると、時間がどんどん伸びて行くんですね。そしてブラックホールの強力な潮汐力に打ち勝つ強度を宇宙船が有していたら(現在の科学力では不可)宇宙船とその搭乗者が経験する時間はやがて止まってしまうというのです。アインシュタイン博士の一般相対性理論が破綻するブラックホールの特異点の存在を、ホーキング博士はロジャー・ペンローズ博士と共に証明しています。
 博士はまた、量子宇宙論という分野を開拓したことでも有名ですが、その中で説かれたホーキング放射によると、光さえも脱出できない超重量のブラックホールから素粒子が放出され、そのためにブラックホールは力を弱め、やがて爆発により消滅するのだそうです。終末を迎えた恒星の爆縮によって生じたブラックホールも、無限の重力トンネルと言うわけではないということですね。
 しかし筆者がずっと気になっているのは、ブラックホールが消滅したあとに何が残るのか、という問題です。あらゆるものを吸引してしまう超重力の元となる質量はどこへ行ってしまうのでしょう。それともブラックホールの後にはあらたな恒星を作るだけの物質が残るのでしょうか。筆者が読んだ古い宇宙論では、ブラックホールは恒星の生い立ちの最終形態で、超新星の爆発のような次世代の天体につながるようなプロセスについては説明されていませんでした。ホーキングの宇宙論を読めば、疑問は解決するのでしょうか。
 ホーキング博士はまた、過去へ向かう時間軸が存在するためには、場のエネルギーが無限大にならなければならないと説き、タイムトラベルへの夢を阻んでいます。

 自ら動くことも話すことも叶わぬ、ひじょうに無力に見える天才は、ブラックホールや宇宙創成という誰もが近づきたがらない禁断の縁に立ち、画期的な宇宙論を説き続けました。
 若くして難病に冒されたにもかかわらず、その進行を止め、76歳まで研究を続けたという奇跡は、博士の明晰な頭脳の賜なのでしょうね。2016年には43光年の彼方にある恒星系アルファケンタウリに超小型探査機を送る計画を、ロシアの資産家と共に発表しています。

原題:The Theory of Everything。
2014年イギリス、124分、翌年日本公開。
原作:ジェーン・ホーキング。
監督:ジェームズ・マーシュ。
脚本:アンソニー・マッカーテン。
出演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、マキシン・ピーク、チャーリー・コックス、エミリー・ワトソン、ガイ・オリヴァー=ワッツ、サイモン・マクバーニー、アビゲイル・クラッテンデン、シャーロット・ホープ、ルーシー・チャペル、デヴィッド・シューリス、エンゾ・シレンティ、ゲオルグ・ニコロフ、アリス・オル=エウィング、ハリー・ロイドほか。

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