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GANTZ【コミック】

2018/11/07


 地下鉄の駅で小学生の頃の親友加藤勝と再会した玄野計(くろのけい)は、線路に落ちた酔っ払いを助けようとした加藤に手を差し伸べ、電車に轢かれてしまいます。死んだはずの2人は、東京タワーの見えるマンションに瞬間移動しており、そこで黒い球の指示を受け、ねぎ星人をやっつけに行くことになります。
 宇宙人退治のミッションを終えると、2人は再びマンションに引き戻され、一緒に戦った他の人たちと共に解放され、元の生活に戻ります。マンションに集まった人たちはいずれも死を前にしてこの部屋に強制的に転送され、星人退治のミッションをクリアすることで再び命を得ることができるのでした。
 謎のマンションで玄野たちに指示を出す黒い球は、ガンツと呼ばれ、ガンツは招集した人間に合った専用スーツと武器を支給しました。スーツはその人の能力を何倍にも高め、武器は強力な破壊力あるいは星人を捕縛する力を持っており、それらの装備は持ち帰って通常の生活の中でも使用することができました。
 こうして元の暮らしを取り戻した玄野たちですが、また唐突にマンションに転送され、新たな星人退治のミッションに駆りだされるという2重生活を送ることになります。ひじょうに危険なミッションを生きぬいてマンションに帰還すると、ミッションで受けた傷はどんなに重症でもすっかり癒えており、ミッション中に絶命した場合は還らぬ人となりました。活躍は経験値として蓄積され、100点になると、記憶を無くして元の暮らしに戻る、死んだ人を蘇らせる、より強力な武器を得て新たなミッションに出るの3択から道を選ぶことになります。
 ミッションを繰り返すごとに、星人は強力になり数も増えます。初期のうちは星人もガンツの戦士たちも一般人からは見えませんでしたが、いつしか他からも見られるようになり多くの一般人を巻き込む戦争へと発展して行きます。戦いの舞台も東京を離れて大阪へ、そしてヨーロッパへと拡大して行き、他のガンツチームとも遭遇します。
 東京チームの一員でひねくれ者の中学生の西 丈一郎は、カタストロフがまじかに迫っていることを予言しますが、最後のミッションのあと、彼の予言を裏づけるように、巨人宇宙人の地球侵略が始まり、これまで戦ってきたガンツチームは、防衛戦に参加させられることになります。

 最初からひじょうに奇妙で印象的で衝撃的な作品でした。死んだはずの人間が、次の瞬間にはマンションの一室に移動しており、しかもいつの間に製作したのかそれぞれの人間に合ったそれぞれのスーツが用意されています。黒い不気味な球が星人退治のミッションを告げ、今度は戦場に瞬間移動させられます。あてがわれたスーツを出撃までに着用しなければ生存率が極端に低くなります。スーツはすさまじいパワー、運動能力、防御力を着用している人間に与えますが、あるていどダメージを受けると効果を失います。しかし武器の方はほぼ無尽蔵にエネルギーを射出できます。
 星人と交戦し負傷した場合、それがどんなに重症であれ、生きていればミッション終了後マンションに転送された時点で完全に回復します。ミッション中に絶命するとそのまま死去し、ガンツの志望者リストに記載されます。
 玄野計と加藤勝は、ガンツのミッションを繰り返す間にさまざまな人間と親しくなり、協力して星人を退治し、いよいよ訪れるカタストロフに立ち向かいます。人気モデルの下平玲花、温厚なおじさん鈴木良一、九州から日本一の格闘家を目指して上京した風大左衛門、パンダの開開(ホイホイ)と彼にやたらなつかれているイケメン稲葉光輝、超能力者の桜井弘斗。玄野の学校に転校してきた和泉紫音は、かつてガンツの一員で100点メニュで普通の人間に戻ったものの、再びミッションの興奮を味わうために新宿で銃乱射事件を起こして、大勢の人間を殺害します。大阪ミッションの死闘で出会った大阪チームの山咲杏は加藤の恋人になります。杏はすべてが終われば加藤の弟 歩と、杏の娘と4人で一緒に暮らそうと懇願します。

 玄野にはほどんど顔を合わせない弟がいますが、彼は自分の正体に気づいていませんが、じつは吸血鬼でした。やがて吸血鬼仲間と出会い自分の正体を知ると同時に、兄が吸血鬼たちに狙われていることが判ると、不仲の兄に危険を知らせます。日本刀使いの氷川率いる吸血鬼集団は、黒スーツすなわちガンツチームが自分たちを狩ろうとしていると誤解し、玄野たちをつけ狙います。氷川は後にガンツミッションのチームに加入し、ガンツににホストザムライというあだ名をつけられます。
 非情なミッションを選ばれし者たちに課するガンツですが、奇妙なユーモアを持っていて、チームのメンツにいちいちあだ名を付けます。くろの、かとうちゃ、巨乳(玲花)、ハゲ(鈴木のおっちゃん)といった具合です。またミッション開始時にはラジオ体操の歌を歌い、へんな日本語で指示を伝えます。「てめえ達の命は無くなりました 新しい命をどう使おうと 私の勝手という理屈なわけだす てめえ達は今から この方をヤツっけに行って下ちい」云々。

 とにかく世界観があまりにも異質です。星人と呼ばれるターゲットたちも、ねぎ星人、田中星人、あばれんぼう星人、おこりんぼう星人、カッペ星人、チビ星人等々。宇宙人なのか化け物なのか、仏像なのか訳が解りません。訳が解らないので次がどうなるのか想像もつきません。大阪編では日本古来の妖怪たちが大挙して押し寄せますが、その長である ぬらりひょんは恐ろしく強く、変幻自在に姿を変え、あらゆる攻撃が通じません。無数の裸婦が絡み合った巨大な裸婦に変じた時には、あっけにとられてしまいました。
 絶対に勝てるわけがない、そんな絶望と恐怖の中で、キャラたちの悲痛な独白や息遣い、鼓動がクローズアップされます。見たこともないような奇妙な化け物たちに、人々が引きちぎられ、内臓が飛び出します。読者はいつの間にかその地獄の中に引き込まれてしまうことになります。
 地獄絵巻の中で、玄野はどんな苦境に立たされても絶対にあきらめない不屈の精神を宿します。「フッフッフッ、死ぬかよーっ」荒い息遣いをしながら、目を見開き化け物に立ち向かいます。その姿は、幼少の頃に加藤が憧れた快男児計ちゃんそのものでした。玄野にこれほどの闘志を与えたのは、ガンツの過酷なミッションや共に戦った仲間たちとの友情のみならず、彼に初めてできた恋人 小島多恵の存在でした。最近の彼はクラスメイトや先生から昼あんどんと呼ばれる無気力人間で、ある時ゲームに負けて、目立たず冴えない小島多恵に告白して1週間付き合うはめになったのですが、その遊びが本気に変じ、ついには熱烈な恋愛に発展したのでした。地球がいよいよカタストロフに直面した時には、玄野はただ多恵を守るためだけに戦います。

 この作品は、ご存じのように大ヒットし、ゲーム化、アニメ化、小説化、そして実写映画化と様々なメディア展開を果たしていますが、原作コミックは、エログロとバイオレンスに彩られています。裸とセックスシーンが随所に登場し、熾烈な暴力が繰り返されます。手足や首がポンポン飛び、内臓が飛び出します。巨人宇宙人に捕まった人たちはみんな全裸にされ、腹を裂かれて血抜きをされたり、生きたまま食べられたりします。
 この作品の成功の秘訣は何だったのでしょう。何が人々を惹きつけたのでしょう。玄野や加藤の不屈の精神に読者が共感したからでしょうか。あまりにも異質で芸術的ですらある星人たちに魅せられたからでしょうか。大阪編やカタストロフの緻密で壮麗な描写に圧倒されたからでしょうか。ガンツスーツがかっこいいからでしょうか。ひじょうにエロくてグロいのに、エログロ作品と銘打たず、SFファンタジーの中にそうした要素を内在した点が多くの読者に喜ばれたのかもしれませんね。みんなじつは好きじゃん……。

 玄野や加藤と彼らが率いるガンツチームは、宇宙からの侵略者から地球を守るために戦うヒーローですが、多くのヒーローもののように人々の喝采を浴びることはありません。人々は救出された時には涙を流して感謝しますが、自分たちが無関係だと判ると平然と玄野たちを宇宙人に売ろうとします。傍観者と化した群衆は、救ってもらった恩も忘れ、罵声を浴びせたり、命を差し出せと野次を飛ばしたりします。他人の窮地が自分とは無関係と判ると、それをおもしろそうに眺め、舌なめずりするのです。ひじょうに残忍で非情な群集心理です。それを象徴するように、群衆の顔は醜悪でにくたらしい描画になっています。
 群衆に対するこの評価も、この作品の大きな特徴になっています。そしてふと気づけば、物語の残酷シーンを一心に見つめる私たち読者も、ここに描かれている群集と同じなんじゃないのか、という不安にかられてしまいます。
 矛盾に思える点や不可解な点も少なくありませんが、それも含めて大好きな作品です。それが全巻を通じて2度読んだ感想です。ただ、感動のラストシーンをもう少し引っ張って欲しかったです。共に戦ってきた仲間たちとの余韻の時間を描いて欲しかった、そんな気がします。

2000〜2013年、週刊ヤングジャンプ。
全37巻、ヤングジャンプ・コミックス。
著者:奥浩哉

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