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コーヒーが冷めないうちに【映画】

2018/10/03


 喫茶店フニクリフニクラには不思議な秘密がありました。その席に着くと望む時間に飛ぶことができるのです。ただし、魔法が効くのはお店のウエイトレスがコーヒーを入れた時だけで、時間旅行はコーヒーが冷める前に終えなければなりません。コーヒーが冷める前に必ずカップのコーヒーを飲み干さないと、再び現在の時間に戻れなくなってしまうのです。時間は過去でも未来でも自由に設定できますが、場所はこの喫茶店の同じ席なので、たとえば過去に戻ってもう1度会いたい人がいるような場合は、その時間この場所にその人が存在していたことが条件になります。ですから先の分からない未来へ行ってみたいという人はほとんどいません。
 そして過去に戻って伝えられなかった思いを相手に伝えたとしても、起きてしまったことを変えることはできません。
 ウエイトレス時田数は、母のあとを継いでこの店で働いているのですが、なぜか表情は暗く口数も少なく、あまり楽しそうではありません。ただ、魔法を使えるのは時田家の娘だけなので、彼女がウエイトレスを辞めると誰も時間旅行ができなくなってしまいます。しかし時間旅行では、起きてしまったことを何も変えられないのだとしたら、魔法を使うのに何の意味があるのでしょう。それでも数にはどうしてもウエイトレスを辞められない理由があったのです。

 幼なじみの男性に突然ここに呼び出された清川二美子は、呼びつけておいてとっととアメリカへ行ってしまった彼への不満を数やマスターの時田流にぶちまけます。その時間に戻ってもう1度彼と話しがしたいと望みますが、なかなか決心がつきません。しかもその席には女性の先客がいてコーヒーを飲みながら読書を続けており、席は空きそうもありません。数が言うには彼女は時たまトイレに立つことがあり、その隙に席に座るしかないとのことでした。女性客は過去に魔法を使い、時の迷い人になってしまった人で、ずっとその席に座っていて、誰も彼女に干渉することはできないのでした。
 そしてとうとうその機会が訪れると、二美子は意を決して席に着き、数にコーヒーを入れてもらいます。二美子が戻りたい時間を強く念じると、そこはもう過去のフニクリフニクラでした。そこには数やマスターそして彼がいました。二美子は彼に自分の正直な思いを伝えることができるのでしょうか。

 高竹佳代は認知症で、自分の置かれている現状が把握できませんが、毎日のようにフニクリフニクラに来店し、日がな1日そこで過ごしています。夕方になると房木康徳という男性が迎えに来るのですが、彼女にはその男性に見覚えがありません。自分を全く覚えていない佳代に、房木は介護人として接しているのですが、ある時意を決して時間を超える席に座ります。まだ意識がハッキリしていたころの佳代が、夫である房木に伝えたかった思いを彼は今度こそはしっかりと受け取ることになります。

 同じくお店の常連の平井八絵子は、経営しているスナックが準備中の日中をここで過ごすことが多いのですが、時折実家から訪ねてくる妹の久美が来店すると厨房の中に隠れ、どうしても妹に会おうとしません。妹が自分に託した手紙も読んだことがありません。旅館を経営している実家を久美に押し付け、気ままにスナック経営をして暮らしている八絵子は妹に会いたくないのです。ところがある時、久美は八絵子に会いに来れなくなってしまいます。八絵子は久美の思いを確かめるため、時間を超える席に着く決意をします。

 数にも、過去に戻って会いたい人がいました。数をウエイトレスとして教育した彼女の母は、その席に着き、数にコーヒーを入れさせたのです。数が淹れたコーヒーによって母は時間を超えることに成功しますが、そのまま帰らぬ人になってしまいました。コーヒーが冷める前にそれを飲み干せなかったのか、元の時間に帰りたくないと思ったのか、数は真実を知りたくても彼女自身は過去の母に会いにはゆけないのでした。母は交通事故で亡くなった父に会いに行った、数はそう思っていました。
 こうして母までいなくなった数は、叔父の流と共にこの喫茶店で働き続けていたのでした。よくこのお店を訪れ、数のことが気になっていた青年新谷亮介は、次第に数との仲を深め、彼女の心を開かせて行きます。そして2人は流も認める仲になるのですが、亮介はは数のために彼女自身が時を超えるための妙案を思いつきます。

 予告編の4回泣けますというフレーズ通り、その席で時間を超える4人のエピソードが描かれます。行きたい時間にいられるのはコーヒーが冷めるまで、それまでにコーヒーを飲みきらないと元の時間には戻れない。行ける場所はこの喫茶店の同じ席、過去に戻って何をしても、現在は何も変わらない、すでに起きてしまったことを変えることはできない。
 過去に戻って何かすると現在が良い方に好転してしまうという映画は以前にもありましたが、何も変えられないなら、過去に戻って何の意味があるのでしょう。予告編を見た時には、あまり観たいとは思いませんでした。ところが実際に観てみると、そのシナリオの素晴らしさにすっかり感動させられました。
 たとえ今を変えることができなくても、人には過去に行って確かめたいことがあるのです。確かめることによって、言えなかった言葉を伝えたり、聞けなかった思いを聞いたり、それで心が救われ、未来が開けることだってあるのです。

 みなさんには、互いに誤解したまま生き別れになってしまった、あるいは相手が亡くなってしまった、そんな人間関係はありませんか? 伝えたい思いを伝えられずに長い間そのままにし、手遅れになってしまった、そんな思いではありませんか? もしもあの時に帰ることができたら、あの時に帰って確かめることができたら、伝えるべきことを相手に伝えられたら、そんな後悔からこのお話しは生まれたのかもしれませんね。
 1杯のコーヒーが冷める前に、あなたなら何ができますか? フニクリフニクラのその席に座って時間を超えた人は、コーヒーが意外にぬるくて、今にも冷めてしまいそうなことに驚くらしいですよ。もっとたっぷり時間があれば良いのにね。
 それと時間を超える時には何やら巨大な図書館のような場所で、水に飛び込んだような状況を経験します。その時に目を開けていられれば、自分が目指す時点とは別の自分に関係深いシーンも目にすることができるようです。
 水が苦手な(たぶん)平井八絵子は、ゴーグルと耳栓着用で時間跳躍に臨んでいました。
 あと、常にその席を占有している夏服の女性の行方にも注目してください。

2018年、116分。
原作:川口俊和。
監督:塚原あゆ子。
脚本:奥寺佐渡子。
出演:有村架純、伊藤健太郎、波瑠、林遣都、深水元基、松本若菜、薬師丸ひろ子、吉田羊、松重豊、石田ゆり子ほか。

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