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フルメタル・パニック! 戦うボーイ・ミーツ・ガール【小説】

2018/08/16


 いかなる国家にも属さない秘密傭兵組織ミスリルの士官相良宗介が、ひとりの少女をソ連軍のヘリの追撃から救出する作戦から帰還して間もなく、今度は日本人女子高校生を警護する任務に就くことになります。2人の少女の共通点はウィスパード(ささやかれた者)であること。人型機動兵器アーム・スレイブ等のありえない謎のテクノロジーを世にもたらしたのがウィスパードであるとされ、ウィスパードの可能性を持つ少年少女はその情報を持つわずかな機関によって狙われていました。
 そのひとつがミスリル、西太平洋艦隊を指揮する若干16歳のテレサ・テスタロッサもウィスパードでした。そしてもう1つソビエトに属する秘密機関がそれを知り、大掛かりな実験施設を建造していました。

 陣代高校に通う千鳥かなめを狙うソビエトの組織から彼女を守るため、転校生として彼女の旧友に成りすました宗介ですが、物心ついた時から紛争地帯で戦っていた戦場を故郷とする彼が、日本の学園生活に上手く順応することは難しく、何事も軍事的に考え、騒動を繰り返します。彼による器物破損の被害額はたいへんな額に登りますが、校長は彼の生い立ちを考えるとやむなしという判断。
 一方ミスリルは、かねてから捜索していたソビエトの極秘研究施設の位置の特定に成功し、強襲揚陸潜水艦トゥアハー・デ・ダナンの巡航ミサイルでそれを撃破します。ソビエトのウィスパード研究施設が壊滅したことにより、千鳥かなめが狙われる危機はとりあえず去った、そう判断されますが、宗介は休暇もかねて陣代高校の修学旅行に参加します。
 高校生たちを乗せた旅客機は沖縄へ向かうはずですが、北朝鮮の軍事基地に不時着します。生徒たちは謎の軍事集団に包囲され、千鳥かなめは連れ去られます。敵の目を欺いて飛行機から脱出した宗介は、衛星通信機で、ミスリルに連絡し、現状とかなめが誘拐されたことを報告します。
 そして謎の襲撃部隊の中に、かつての宗介の宿敵ガウルンの姿を認めます。ソビエトの施設が失われたあと、ガウルンはウィスパードの情報を持ち出し、世界規模のテロ組織アマルガムにその情報を売ったのです。かなめは今度はガウルンとアマルガムから狙われることになったのでした。

 単独でかなめの奪還に成功した宗介は、敵のASを奪って近くの森に逃げ込みますが、ガウルンが操縦する新鋭機の力は圧倒的で、奪ったASは大破してしまいます。
 絶体絶命のピンチを救ったのは、デ・ダナンから発進した2機のASでした。宗介の同僚クルツ・ウェバー軍曹とメリッサ・マオ曹長の操る2機のASはガウルンのASを退け、飛行機に仕掛けられた爆弾を処理し、続いて到着した航空部隊に生徒たちを誘導します。
 しかし、それでみすみす獲物を逃がすガウルンではありませんでした。

 テレビシリーズの続編が実現し、DVD&BDの発売が開始になったので、BDが全巻そろうのに向けて、原作小説を読み直すことにしました。本編が12巻、短編集が9巻ありますが、双方取り混ぜて発売順に読んでゆきましょう。ビデオがそろうまでに21巻読み切れなくても、アニメがまだ途中なので大丈夫です。
 そんなことはどうでも良いのですが、これはその原作小説第1巻になります。アニメの中でもミリタリィファンはぜひチェックしておきたい作品と評される本格的SF戦争アクションでありながら、学園ラブコメの要素を充分に備えるユニークな構成ですが、日本のアニメにおいては、これは特別斬新な発想というわけではありません。日本アニメでは女子中高生の魔法少女が地球を救いますし、メイドさんが戦闘のプロだったりします。
 でも、そうした日本アニメ事情の中で、この作品がとりわけ優れていて多くのファンを魅了するのは、学園ラブコメの要素を充足させながら、戦闘のリアリティの高さです。この小説を読んでいると、ミスリルもASも現実のもののように思えてきます。現代戦において、全高約8mの人型機動兵器など存在しませんが、フルメタの仮想現代社会では、ウィスパードと呼ばれる特殊能力者がもたらしたブラックテクノロジーがそれを現実のものにしています。
 本著が発行された1998年、ロシアはまだソビエトと呼ばれており、フルメタの仮想現代ではソビエトはそのまま存続し続けます。しかしソビエトがウィスパードの研究施設を失ってからは、その国家は本編では重要性がなくなりますので、フルメタの仮想現代で同国の崩壊については語られません。

 ヴェノムタイプと呼ばれる強力な新鋭機を操縦するガウルンは、宗介がミスリルに入る前からの宿敵で、一度は宗介の銃弾に倒れたのですが、宗介がミスリルの陸戦ユニット SRT の軍曹として作戦に加わるようになって再び彼の前に姿を現しました。宗介をカシムと呼称し、その命を狙うガウルンにとって、宗介がミスリルの一員になっていたことはある意味好都合でした。図らずも世界規模のテロ集団アマルガムに与することになったガウルンは、ミスリルVSアマルガムの交戦においていつでも宗介と対峙することができるからです。
 そしてガウルンの存在は、アニメ第1期24話を通じてテッサことテレサ・テスタロッサ率いる西太平洋戦隊にとって大きな脅威となります。原作小説では1〜3巻にあたります。

 フルメタの魅力は、リアルな戦闘と共にキャラの魅力にあります。この点についてはアニメの力がひじょうに大きいと思われますが、原作では各キャラの心理描写もあきらかにされますから、さらに親近感が深まります。キャラに関してはアニメを観てから原作を読むのがよろしいかと。
 キャラ立ての素晴らしさは成功するアニメの最も重要な要素ですよね。西太平洋戦隊の司令および実践部隊は精悍な精鋭ぞろいですが、その頂点に立つ戦隊長テッサは、運動が苦手なドジッ娘いわゆる萌えキャラです。それがここ一番という時に見せる断行力の素晴らしさには目を見張ります。マオとクルツは精鋭にしてユーモアを解する素敵なお姉さんお兄さんですが、宗介は笑顔のない気真面目人間で、社交性のかけらもありません。学園ではまったくの世間知らず。自分の靴箱に髪の毛を挿み、それがなくなっていると敵になにか仕掛けられたと思い、靴箱を爆破処理します。ラブレターを果たし状と思い込み、狙撃兵のように何時間も待ち合わせ場所を監視します。いったい何やってんのよ、と突っ込むかなめに対して、問題ないとニコリともせずに答えます。戦地では優れた兵士である彼が、学園では救いがたい間抜け野郎と化します。そこが大いに笑えます。
 恋愛とはおよそ疎遠だった宗介が、すぐに手が出るじゃじゃ馬娘のかなめを守りたいという衝動に駆られ、飛行機ハイジャック事件ではセオリーを無視した衝動的行動をとってしまいます。彼の中で彼自身が気づいていない心の変化が芽生えようとしています。この辺りの微妙な心理は、小説でないと味わえません。
 アニメでフルメタのファンになりながら、小説をまだ読んでない方は、ぜひともご一読ください。アニメが好きなら、なおさら小説がおもしろく読めるはずです。

1998年、富士見ファンタジア文庫。
著者:賀東招二。

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