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スターリンの葬送狂騒曲【映画】

2018/08/12


 独裁者スターリンが粛清名簿を楽しげにチェックしていました。その夜、彼は側近たちを集め夕食会を催します。秘密警察部隊長のベリア、フルシチョフ、マレンコフといった歴史に名高い面々が顔をそろえ、だらだらとバカ騒ぎが続きます。
 明け方近くになって、ようやく側近たちを解放したスターリンは、自室でレコードを聞きます。それは音楽ホールに命じて録音させたばかりのもので、ジャケットの中には、ピアニストのマリアからのメッセージが入っていました。紙片の内容は暴君の死を願うというもの、スターリンはそれを一笑に伏しますが、突然胸を抑えて苦しみ出します。警護の兵士たちは、スターリンの部屋から異常な音が聞こえるも入室禁止に従い、立ち尽くすばかり。メイドがお茶を運んできた時には、すでに意識がありませんでした。
 危急を聞いて駆け付ける側近たち。しかし彼らは医師を呼ぶには議会の承認が要ると主張し、スターリンを助けようとしません。議会では、無能な医師を呼んだのでは責任問題にされる、しかし有能な医師はすべて、スターリンの毒殺を企てたとして粛清、あるいは投獄されています。医師の要請は遅々として進みません。
 なんとかして集められた医師たちは、脳出血のため回復は難しいと診断します。駆け付けたスターリンの娘スヴェトラーナは、これに激怒しますが、その後スターリンは診断を覆して意識を取り戻します。しかしそれも短時間のことで、けっきょく後継者の指名もなく息を引き取ります。
 1953年モスクワ、20年に渡って続いたスターリンの独裁政権が幕を閉じました。
 副首相だったマレンコフは、スターリンの方針を指示して首相となり、ベリアはこれに反対して粛清リストに載った死刑囚たちを開放し、民衆の支持を得ようとします。
 ロシア政権はこうして熾烈な勢力争いの場となり、ソビエト軍の最高司令官ジューコフもこれに参戦し、混戦を極めます。

 スターリン時代の残忍な粛清政治で、人の命に対する感覚がすっかり麻痺してしまった老練政治家たちの政権争い騒動を笑い飛ばした喜劇です。喜劇であってもコメディの要素やジョークはなく、いたってまじめに議論を続ける政治家たちの姿そのものが喜劇になっているのです。
 スターリンが亡くなられたばかりなのに、それを批判するようなベリア君のやり方はいかんねぇ、これは政権に対する謀反だよねぇ。そうそう裏切りだよ。じゃあ逮捕しましょう。党に対する謀反は重罪だよねぇ。確かに重罪だ、死刑だね。じゃあ殺してしまいましょう。ベリア君の死体はどうする? このまま広場で焼いちまいましょう。そうだね、そうしましょう。
 ソビエト政権に限らず、人間社会は、こんなふうに汚れた老人たちに牛耳られ、たちの悪い冗談のような政策に踊らされている、そんな気がしてきます。
 インターネットが世界を網羅する時代になっても、この図式は基本的に変わらず、政治家は民主政治をそっちのけで権力争いを繰り返すもの、それが常識として受け入れられていますし、国営放送も政治家の票稼ぎや民衆の支持を得るためのプロパガンダ、政敵を蹴落とすための政策といったものを当然のものとして報道します。
 与党は総選挙の前に増税を見合わせ、実施は選挙後になる見込みです。この政策により内閣支持率を回復させるのが狙いです。そんなタネ明かしを当然のように報道するのっていかがなものかと思うおですが、国民の方もそのほとんどが何とも思っていないようです。
 政敵をぎゃふんと言わせるために、不正会計疑惑を捏造しましょう。それが上手く行ったものの現職政治家の汚職は政界全体の不信感につながるので、補佐官の責任にして自殺させましょう。そろそろ国民の関心をそらさないといけないので、芸能スキャンダルを何かでっちあげましょう。政治家たちのそんな談合が目に見えて来そうです。

 でもね、それでも世の中はおおむねうまく回っています。政治家先生たちは、日夜政権争いに明け暮れているばかりというわけではありません。おおむねちゃんと責務を全うされているのです。陰でぐちぐち批判するだけで何も行動しない市民の方がよほど悪質です。
 まぁ、政治論議をここでネチネチ続けたところで虚しいだけなのでこの辺にします。
 とりもなおさず、権力批判というものは市民にとってはご馳走です。映画や小説の中で、悪徳政治家をぎゃふんと言わすヒーローの登場を、市民は待ちわびています。この映画はそうした権力批判に対する市民心をうまくつかんでいますが、劇中で政治家たちはぎゃふんと言いません。ヒーローも登場しません。観客は淡々と描かれる彼らのやり取りを傍観し、バカだ、と言って笑うだけです。
 その笑いのネタに、自国の史実と実在人物をされてしまったロシアでは、上映中止が決まったそうです。そしてそのことがまた上映国ではCMとして上手く作用しているようです。これもまた笑えますね。

原題:THE DEATH OF STALIN。
2017年、イギリス/カナダ/フランス/ベルギー、
107分、翌年日本公開。
原作:ファビアン・ニュリ、ティエリ・ロビン。
監督、脚本:アーマンド・イアヌッチ。
出演:スティーヴ・ブシェミ、サイモン・ラッセル・ビール、パディ・コンシダイン、ルパート・フレンド、ジェイソン・アイザックス、マイケル・ペイリン、アンドレア・ライズブロー、オルガ・キュリレンコ、ジェフリー・タンバーほか。

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