kepopput.jpg

のみとり侍【映画】

2018/06/28


 越後長岡藩のエリート藩士 小林寛之進は、歌会の席で、藩主牧野忠精の読んだ川柳が盗作であることを親切心から指摘し、牧野の怒りをかい、城を出て猫の蚤とりになることを命じられます。生真面目な寛之進は殿の命とあれば立派に勤めねばと、猫の蚤とり屋を訪れますが、親方の甚兵衛は、侍が蚤とりに身を落すとは、身分を偽って密偵でも行ない仇討でもするのかと思い込み、寛之進に協力することにします。
 猫の蚤とりの裏稼業について何も知らない寛之進は、仲間たちと共に声がけしながら町を回るうちに、仕事を依頼し職人を指名するのが女性ばかりであることに驚きます。そして、おみねという女性に指名された寛之進は、猫の蚤とりの実態が欲求満たされぬ女性に愛をお届けする闇家業であることを知ります。しかし経験浅薄な彼は、おみねに「下手くそが!」と一喝される始末。
 生真面目な寛之進は、これでは立派に蚤とりを勤めあげられないと悩み、たまたま出会った清兵衛に女性の喜ばせ方の指南を頼みます。浮気癖のある清兵衛は、嫉妬深い若妻おちえによって股間にうどん粉を塗られ、浮気すればばれるようにされたというのです。そんな男なら女性の扱いも卓越しているにちがいありません。清兵衛は寛之進の事情を聞くと、自らも天職とばかりに猫の蚤とりになり、女との絡みを寛之進に覗かせ、その手管を教えようとします。
 しかし越後の老中 田沼意次の失脚により、新政権は猫の蚤とりなどという不埒な商いを認めず、寛之進と清兵衛は、蚤とり仲間と共に捕らえられ、さらし者の刑に処されてしまいます。

 猫の蚤とりましょー、あでやかな着物を着た男たちがそう声がけしながら町をねり歩くと、近所の家々の小窓から、勝手口から若い女性が手招きします。指名を受けた男たちが、ひとりまたひとりと女たちの許へ吸い込まれるように消えてゆきます。表向きは飼い猫の蚤をとるのが彼らの仕事で、実際に蚤とりの技術を有しているのですが、それは裏稼業を隠すための借りの仕事、彼らは女性の性欲を充足させるために女性に金で買われる男たちなのです。江戸時代、日本にも男尊女卑の風潮が根強かった頃に、こんな仕事が実在したのでしょうか。
 江戸時代には猫や金魚を飼う、ペットブームが巻き起こっており、猫の蚤とり屋という商売も実在したそうです。飼い猫を湯に浸からせ、毛皮でふき取るとノミが毛皮に移動し、その毛皮を火であぶって退治するのだそうです。しかし誰でもできる方法なので、すぐにすたれてしまいました。この映画の原作「蚤とり侍」の作者小松重男は、この蚤とり屋が蜜売夫の裏稼業の隠れみのであったとし、それを喜劇として描いています。実際の蚤とり商いがすたれたのちも、裏の本業を残す形で続いていたのでしょうか。男手がなくかつ小金のある家の女性なら、猫の蚤とりを専門家に委ねるのも不自然ではない、そういうことでこの稼業は当時の風俗としてまかり通っていたのでしょうか。
 男なら遊郭へ女郎を買いに行くところを、女性の場合はホストの宅配サービスがあった、だとしたら当時の女性たちはずいぶん飛んでいた、進んでいた、ものですね。

 実直で生真面目な寛之進は、生真面目がゆえに殿の詠む川柳を、それは盗作にございますとアドバイスし、かえって怒りをかってしまい、生真面目がゆえに猫の蚤とりを立派に勤めようとします。そして政権が移行し、蚤とり業が取り締まられることになると、これまた生真面目に運命を受け入れてお縄を頂戴します。
 寛之進や清兵衛たちが受けたさらし者の刑すなわちノコギリの刑は、路上に拘束具で固定され、かたわらに木製のノコギリを置かれるというもの。通りかかった人たちが、罪人を憎いと思えばこのノコギリで露出した首をギコギコとひくがいい、そうして2日の後に首が無事なら放免するというのです。 切れ味の悪い木のノコギリなので、殺傷能力よりも苦痛を与える効果がありそうですね。恐ろしいですね。
 しかし、寛之進の誠実な性格から、彼を知る人たちは同情し、誰にもノコギリを使わせないように見張りをします。今は取り潰されてしまった蚤とり屋の甚兵衛とその女房お鈴も先陣を切って見張りに参加します。

 お笑いと人情にエロスを加えた、少々風変りな時代劇です。武家社会の世で、士農工商のトップのカーストに君臨する武士は、町民にとっては怖い存在ですが、この映画に登場するような情に厚く優しい武士も実際には存在したのでしょう。
 下町で貧しい子供たちにボランティアで勉強を教えている佐伯友之介が高熱で倒れた時には、ご近所の方々が総出で看病にあたり、寛之進は医者を呼びに走ります。武士たる彼がこうして下町暮らしに溶け込んで、人の情に触れ、人々もまた彼を信頼するようになり、彼がノコギリの刑に処せられた時にも大勢の味方が駆けつけたわけです。
 そして彼を何かと手助けし、女性を扱う手管ばかりか下町暮らしの水先案内をも買って出た清兵衛も、元はと言えば武家の出身であったようです。小間物問屋近江屋の入り婿となった彼は、恐妻おちえの尻に敷かれながらも、彼女の目を盗んでせっせと浮気を働く、根っからの女好きですが、それを除けばなかなか出来る男です。

 こんな時代劇を観ると、思い出すのはやはり「猫侍」ですね。武士道一筋に生きる斑目久太郎が、突然士官をクビになり、浪人として庶民生活に放り込まれ、人の情に触れます。むかしの時代劇なら「必殺仕事人」のように、ここ一番では剣を揮って悪を斬るところでしょうが、最近の時代劇は血なまぐさい話しがあまり出てこないのが特徴ですね。

2018年、110分。+15指定。
原作:小松重男。
監督、脚本:鶴橋康夫。
出演:阿部寛、寺島しのぶ、豊川悦司、斎藤工、松重豊、風間杜夫、大竹しのぶ、前田敦子、桂文枝ほか。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


索引 韓流映画&番外編





1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2018 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES










recent comment

links

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM