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いぬやしき【映画】

2018/06/05


 定年間近のサラリーマン犬屋敷壱郎は、会社ではうだつが上がらず、家庭では妻や息子、娘にうとまれ、常に肩身の狭い思いをして暮らしていました。今頃になって手に入れた新居は小さくて日当たりが悪く、家族にも不評です。そしてさらに悪いことには健康診断で癌が見つかり、医師から余命数ヶ月と告げられます。そのことを家族に話そうとしても誰も彼に関心を示しません。
 ある時、家に居ついてしまった捨て犬を連れて夜の公演に行くと、謎の物体が目前に現れ、たまたま近くにいた高校生と共にまばゆい光に包まれます。
 翌朝、自宅で目を覚ました彼は、自分が機械人間になっていることに気づいてうろたえます。普段は普通の人間と変わりませんが、何かの拍子に腕から物々しい武器が飛び出してきたりします。
 犬屋敷壱郎と同時に不思議な物体に遭遇した高校生獅子神皓もまた自分の体の異変に気づきますが、彼はすぐにその体に慣れ、高速で空を飛んだり物を自在に動かしたり破壊したりできるようになります。
 生きることに虚無感を抱いていた彼は、破壊に手を染め無差別殺人を始めます。指鉄砲で人を銃殺できるほか、テレビやパソコン、スマホを通じても自在に人を殺せることを知った彼は、次々と人を殺し、世間を騒がせます。
 彼が唯一心を許していたのは、母と友人の安堂直行だけでした。獅子神皓の超人パワーを目の当たりにした直行は、皓と共に変身したという犬屋敷壱郎を訪ね、皓を止めてくれるように頼みます。

 GUNTZ で奇妙な異星人侵略の物語を著した奥浩哉の原作の映画化です。「いぬやしき」というタイトルからは想像できないパニック映画です。ある日突然無限のパワーを発する機械人間にされてしまった犬屋敷壱郎は、窮地の人の助けを呼ぶ声が聞こえるようになり、次々と人を救い始めます。家族からもうとまれ、余命宣告まで受け、生きる希望を失っていた彼が、無敵のヒーローになったのです。一方、同じように変身した獅子神皓は、その力を利用して果てしない殺戮を繰り返すようになります。正体を明かさず人知れず人々を救い続ける犬屋敷とは対照的に、獅子神は全国的に名を広め警察を挑発し、堂々と殺人を繰り広げます。
 同じ奇跡の力を得た2人の人間が、まったく対照的な行ないをするところがおもしろいですね。不治の病の子供や重症の人を不思議なパワーで完治させ、人を救うことの喜びを知った犬屋敷は、獅子神の行為に胸を痛め、彼の友人の直行の助けを借りて、獅子神に対抗する術を磨き、彼を止めようとします。
 それまで父のことをバカにしていた娘の麻理は、学校行事の都庁見学で獅子神の破壊行為に巻き込まれ、そこで父に助けられます。この事件で彼女は初めて、人々の命を救って回る謎の超人の正体を知ることになります。どうしようもないダメおやじだと思っていた父が、唯一人類を救うことができるヒーローであることが分かったのです。

 獅子神は、母と2人暮らしで、彼女の前ではひじょうに心優しい孝行息子でした。おれがきっと母さんを幸せにする、それが彼の口癖でした。幼い頃から正義感も強く、いじめに遇っていた安堂直行を救って以来、直行は彼をずっと信じていました。そんな獅子神の善意をあざ笑うように世間や運命は冷たく、母は発癌し余命宣告を受けます。獅子神が破壊神に変じてしまった理由がなんとなく解る気がしますね。
 一方犬屋敷の方は、何をやっても上手くゆかず、会社では年下の上司に怒鳴られ、家でも誰にも相手にしてもらえず、あげくの果てに死の病にとり憑かれます。本来ならやけを起こして無限のパワーで無茶苦茶してしまいそうなところですが、彼は人の命を救うことに目覚めます。何をやってもダメだった「僕にもできることがある」それが彼の生きがいになります。
 直行から獅子神のことを聞き、彼は獅子神を阻止しようと立ち上がります。今や公然と破壊を繰り返す獅子神は世界の敵と化していました。犬屋敷の存在を知った獅子神は、あろうことか彼の娘の命を狙います。心優しく臆病者の犬屋敷は、娘と世界を獅子神の手から救うことができるのでしょうか。

 奥浩哉は変な世界を描かせたら超一流ですね。彼のデビュー作からして「変-HEN-」でしたしね。犬屋敷と獅子神に無限のパワーを与えた宇宙人(たぶん)の正体は解らないままで、その目的も不明です。原作ではこのあたりが明かされるのでしょうか。これを解明することは作品にとって意味のないこと、そんな気がします。直行の分析では、宇宙船の着陸の際に事故に遇った2人を救うために宇宙人が2人を機械人間にした、ということですが、そうであったとしても、2人が善悪の大局的な存在となって活躍するあたりは、なんだか実験的な意味を孕んでいたようにも見えます。
 ひじょうに象徴的な作品です。なにか教訓めいたものを感じずにはおれません。矢口史靖監督の「サバイバルファミリー」のように原因も判らず理由も説明されないまま大停電に翻弄される人々、そうしたSFとは異なるシチュエーションミステリーのような作風ですね。
 もしもあなたが、突然無限のパワーを与えられたらどうします? そんなことを考えさせられます。

2018年、127分。
原作:奥浩哉。
監督:佐藤信介。
脚本:橋本裕志。
出演:木梨憲武 、佐藤健、本郷奏多、二階堂ふみ、三吉彩花、福崎那由他、生瀬勝久、濱田マリ、斉藤由貴、伊勢谷友介ほか。

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