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桜ノ雨【映画】

2018/06/02


 音浜高校の合唱部は、部長の桜音ハルの卒業、顧問の芽依子先生の退職を控え、合唱コンクールで優勝して有終の美を飾るべく、難題に取り組んでいました。2年生の未来(みく)は、入院中の母に次のコンクールでは「桜ノ雨」を歌うと偽っていました。ハル先輩が作った「桜ノ雨」は音浜高校では誰もが大好きな楽曲でした。未来の母も音浜高校の出身でした。
 コンクールに向けて奮戦する部員たちですが、なかなか息が合わず上手く歌えません。部員たちの本音は、自分たちの好きな桜ノ雨を歌いたいのです。
 友人の鹿島友梨に強引に誘われて入部した北村蓮も、合唱部の方向性に疑問を持ち退部してしまいます。そして友梨からハル先輩が好きであることを未来は打ち明けられます。しかしハル先輩と同じ3年生の美月瑠華と彼はとてもお似合いで、他人が入り込む余地がないように見えます。
 ハルは、無口で内気だけれどひた向きに合唱と取り組んできた未来をずっと見てきました。そして1年生の指導役を彼女に委ねたのは、彼女を次期部長にしたいと考えていたからでした。
 部員たちの様々な思いや、なかなか完成に至らない課題を余所に、コンクールの日は刻々と近づいて来るのでした。

 音楽作成ソフトボーカロイドを介して音楽活動を続ける halyosy が作詞作曲した「桜ノ雨」は、卒業ソングの定番になるほどの名曲で、ネットを通じて大ヒットしました。ボカロと言えばアニソン、電波ソングのイメージが抱かれがちですが、これは学校唱歌に選定されそうなほど正統派青春歌です。halyosy はこの曲をもとに同名の小説を著し、これも大ヒットしたのですが、本作はその映画化です。
 山本舞香演じる遠野未来は、寡黙で自分の意思をなかなか表現できない少女で、その彼女の印象がそのまま映画自体を沈んだテンションにしてしまっています。合唱部のなかなか進捗しない難題と相まってちょっと退屈でした。一般評価もそれほど高くはなかったようです。それでも筆者は青春映画の傑作のひとつとして推したいです。
 3年生の桜音ハルと美月瑠華は、ルックスも才能も卓越していて他を寄せ付けない大きな存在で、部員たちは何も口出しできません。2人を信じてついてゆくのみです。2人の卒業に加えて顧問の芽依子先生の引退、3人の不在の穴はひじょうに大きなものとなるでしょう。芽依子先生は次のコンクールで金賞を取るために、部員たちにひじょうに難しい楽曲への挑戦を強います。ハル部長もそれを承諾します。しかしみんなは思いをひとつにすることができません。
 夏祭りの花火大会の夜、美月瑠華は練習を中断してみんなで花火を見ることを提案します。それでみんなの気持ちをまとめようというのです。計画を功を奏し一度は部を離れた北村蓮も未来の誘いで帰ってきます。
 心機一転、部員たちはコンクールへ向けて最後の追い込みにかかりますが、なぜか未来の心は晴れません。彼女はコンクール当日になっても、今の合唱部の挑戦に納得がゆかないのでした。
 スタッフから学校名を呼ばれ、いよいよステージに立つという時、未来はみんなを引きとめ、彼女の熱い思いを口にします。

 1年前の春、桜並木の咲き乱れる桜のアーチの下で、それを見上げてたたずむひとりの少女がいました。少女は桜の雨の中に立っていた…。未来は気づいていませんが、それがハルと彼女の最初の出会いでした。そしてその映像が、名曲桜ノ雨のモチーフになりました。まるで学園に蘇るおとぎ話のように美しいお話しですね。
 筆者がこの映画を観たのは、マイナー作品を中心に上映する小劇場でした。そこでも観客は多くなく、この名作が高い評価を得ることもなく忘れ去られてゆくのを思い、胸が痛みました。それでも映画はDVDやネットを通じて残り続けます。いつかこの作品が見なおされ、大勢の支持を得る日が来ることを待ち望んでいます。

2015年、97分。
原作:halyosy。
監督:ウエダアツシ。
脚本:小林弘利。
出演:山本舞香、浅香航大、広田亮平、久松郁実、三浦透子、井上由貴、中村大樹、きそひろこ、田畑智子、奥貫薫ほか。

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