kepopput.jpg

ラスト、コーション【映画】

2018/05/27


 1938年、中国に侵攻した日本軍から逃げて香港にやって来たワン・チアチーは、大学の演劇部で運動家のクァン・ユイミンと出会い、レジスタンス活動に参加することになります。日本に与(くみ)し中国を裏切っている軍部のスパイ イーを暗殺するために、ワンはマイ夫人という偽りの名と身分に扮して彼に近づきます。
 しかしイーが昇進して上海に異動したために計画は失敗に終わり、さらにイーの手下ツァオに計画がばれてしまいます。クァンたちはツァオを殺しますが、そのショックで仲間たちはバラバラになってしまいます。
 そして1942年、上海大学に入学したワンはクァンと再会、彼が本格的な革命組織で活動していることを知ります。かつて愛したクァンの思いに報いるために、ワンも組織に入り再びマイ婦人となって今では大臣になっているイーに近づきます。ワンはイーに体を許し、イーはワンを愛人として溺愛するようになります。

 戦乱の世に、愛国心に燃える若者たちの悲しい運命を描いた名作です。多くの評価ではエロス大作のような表現をされていますし、ひじょうに濃厚なラブシーンがあるために日本では成人指定で上映されています。
 筆者の知人にも、革命運動に燃える若者たちの真摯な活動を描いた超大作なのに、エロス作品としての評判の方が先行してしてしまい残念だ、あのラブシーンは必要なのか、そんな感想を述べる人がいました。確かにその通りなのですが、筆者はエロスイコール不潔、不純、そんなイメージの方がむしろ不自然で奇妙なことのように思えます。古典絵画や文学のエロスは正当芸術として評価されているのに。
 きっぱり言って濃厚なラブシーンのうわさを聞いて観ることにしました。うわさ以上にエロかったです。でも、そこには何だか切なく悲しい美しさがありました。日本の傀儡政権の手先として常に命を狙われているイーと、自ら体を張って戦うワン・チアチーの、過酷の日常を忘れて耽溺する瞬間、それがあのシーンになった、そんな気がします。互いをむさぼるように求め合う2人は、平素の毅然としたイーあるいは童顔で虫も殺さぬようなワンからは想像もできないような姿です。だから、この作品に濃厚ラブシーンは必要でした。

 ワンを演じるタン・ウェイは、ひじょうに清楚で童顔の女優でした。彼女の他の作品を知らないので、これが彼女の普通なのか、この作品のために作られたものなのかは解りませんが、それゆえに大胆なラブシーンがより衝撃的なものになったと思います。
 ワンはまた、革命家のクァンと愛し合いながら、互いに明確に表現することができず、ただ祖国のために命をささげるという一途な信念だけで結ばれています。マイ夫人に成りすましてイーにハニートラップを仕掛けるために、彼女は仲間の中で唯一女性経験のあるリャンに性交渉を教わります。革命家の女にとって男に体を許すということは作戦の一環という機械的な行為でしかありません。
 機械的と言えば、日本軍の中国侵攻を受け入れ、人民に対して不穏分子がいないか目を光らせているイーやその部下たちも、人を狩るマシーンでしかありません。イーは笑わず常に傲慢な態度を崩さず、それはワンと2人きりになっても変わりません。そんな彼が、彼女にダイヤをプレゼントします。それは無表情な彼の唯一の愛情表現でもありました。そしてそれがワンの運命を変えてしまいます。

 人間社会は、権力者を中心に超絶な格差によって人々に序列を設け、その成り立ちでしか運営できないのでしょうか。その先にあるものは犠牲と犯罪、そして戦乱です。それに反駁して革命家が立ち上がり、彼らは映画の中で英雄になり、権力者は醜い悪者として描かれます。けれども真の敵は民衆の中にいます。人々の団結を阻み、目先の欲のために抜け駆けしようとする浅ましさの集大成が権力です。誰も求めなければ独裁者も生まれません。こう言ってもなかなか解ってもらえないですけどね。
 反戦映画は今後も作り続けられ、犠牲を美徳として生きた英雄たちが称えられ続けるのでしょうが、それが次の戦いの呼び水にもなっていると言ったら、考えすぎあるいは不適切な考え方になってしまうのでしょうか。

原題:色・戒。
2007年中国/アメリカ、158分、翌年日本公開。R18+
原作:アイリーン・チャン。
監督:アン・リー。
脚本:ワン・フィリン、ジェームズ・シェイマス。
出演:トニー・レオン、タン・ウェイ、ジョアン・チェン、ワン・リーホン、トゥオ・ツォンファ、チュウ・チーイン、ガァオ・インシュアン、クー・ユールン、ジョンソン・イェン、チェン・ガーロウ、シュー・イェン、ホー・ツァイフェイ、ソン・ルウフイ、ファン・グァンヤオ、リウ・チエ、ユウ・ヤー、ワン・リン、フア・ドン、ワン・カン、ソン・ジャンファ、竹下明子、藤木勇人、瀬戸摩純、小山典子、シャヤム・パサク、グゥ・ジャンピン、ガオ・ボウウェン、ユー・チュン、ラウ・ヤット、ライ・ヨッチーン、小島佑ニ、溝上陽子、南方文香、アニス・ファットナシ、タン・ヤジュン、シー・ホン、デン・ウェイ、リー・ドゥ、アヌパム・カー、リサ・イェンルウほか。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

目 次
能書き

思うこと全般

けぽっぷ体験

アイドルのこと

韓流映画

番外編


索引 韓流映画&番外編





1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2018 >>

サイト内検索

NEW ENTRIES










recent comment

links

プロフィール

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM