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アマチュアイズム

 オタク文化を支える横社会では、創作活動におけるプロとアマチュアのちがいはあまり重要ではありません。素人による創作が当たり前になっているオタク社会では、作品の内容が面白ければ、それが職業作家が作ったものか素人作品なのかはどうでもよいことで、内容が優れていればプロ・アマを問わず多くのファンに広く支持されることになるのです。
 かつては、専門業界が人材を発掘し、多くの人手と多額の費用をかけてアニメを作ったりコミックを出版したりするしか、万人に支持される作品を世に出す方法はなかったのですが、技術の進歩はアニメやコミックの素人作品のクォリティをどんどん向上させ、ゲームや楽曲ですら素人が独自に製作できるようになり、人々はアマチュアの力量を実感するようになりました。業界が用意した新人賞に応募して職業作家にならなくても、人々に夢を与える創作が可能であることを知ったのです。
 そして21世紀は、政治経済の破綻と共に、アマチュアがプロを超えることが当たり前の時代になりました。富裕層の人間が富を独占し、お金をせき止めたまま回そうとせず、未来を担う若者たちにまともな給料を払うのもイヤだと言うなら、素人が自分らで作品を作って勝手に楽しもう、そんな風潮が高まって行きました。というのはいささかこじつけなのですが、不況と将来不安が素人作家に筆を折らせることはなく、むしろますます創作意欲をあおり、ファン層もこれを支持するようになっていったのです。
 電脳ネットワークには、素人作品や創作に必要なツールや素材がごろごろ転がっています。作品作りとその頒布はますますお手軽になって行きます。素人に優しく職業作家にとっては厳しい状況ですね。

 素人が平気でプロを超越するようになり、プロ・アマの隔たりが希薄になる傾向は、今後ますます進むと思われますが、そもそもプロとアマチュアのちがいとはいったい何なのでしょう?
 プロフェッショナルとは、いわゆる職業作家のことで、創作や製作や表現で食って行く人、つまり専門家ですね。一方アマチュアは、趣味で漫画や小説を書いたり、本やCDを作ったり、歌やコスプレ等の表現を楽しんだりする人です。アマチュアは、作品作りに必要な費用や労力、時間をすべて自分で用立てて、持てるキャパシティに応じたものを自由に創造します。一方、プロの作品作りは、最初から商品化が目的で、売って利益を捻出するために多くの人手と費用が費やします。どんな作品が売れるか、どのように宣伝すればより多くの客を獲得できるか、多くの人の目を引く装丁やパッケージはどうするか、研究と調査を重ね、売り込む努力をしなければなりません。
 こうしたプロの仕事には、計画性と一貫した理論が重要で、それぞれの作業を担当するエキスパートたちは、高度な専門知識と技術を習得しています。きちんとした方法論が確立されており、どう表現したら笑いをとれるとか、臨場感を出すにはどうしたらよいか、といったことを熟知しています。
 プロの作品作りは言わば、セオリーとマニュアルの集大成であり、製作に携わるスタッフたちは、学校と企業からそうした専門知識を短期間で叩き込まれ、即戦力として現場に出ます。
 一方アマチュアは、独学で知識を学び、経験と感と失敗を重ねて技術や表現力を会得します。それが専門職じゃないので、本業に多くの時間と体力を奪われるうえに、充分な製作環境も整っていません。プロとのハンデは歴然としています。作品を完成させても強力な販売ルートや宣伝能力もないので、友人知人を中心に地味な頒布活動をしなければなりません。
 それでも彼らを突き動かすのは、創作に対する熱い情熱で、これだけはプロに負けません。様々な事情で専門家になれなかったものの、高い創作意欲と豊かな完成を持った人はたくさんいます。
 こうした素人作家に活躍のチャンスを与えたのが、同人誌の製作を請け負う業者と展示即売会、そしてインターネットですね。
 素人作品は、こけてなんぼのものなので、客の反応をあまり気にすることなく自由な発想と独自の方法意識で作品を著すことができます。その多くは自分にはウケても、他人には伝わりずらかったり、説明高く難解であったりすることが多いのですが、まれに多くの人々を魅了する力作が出現します。また、セオリーやマニュアルといった既成観念にとらわれない独創性や型破りが、人々にインパクトを与え、プロにも影響を与えるような秀作としてヒットすることがあります。
 優れた才能を広く認められずに眠らせているアマチュア作家はたくさん存在すると思われます。プロの作品であっても残念な内容のものに出会うと、プロとアマを隔てているものは才能よりも運じゃないのかと疑ってしまいます。

 アマチュアの利点は、業界の常識や流行から自由であること、独創性を妨害するものがないことです。これらの点においては商品化を目的としたプロに勝ち目はありません。プロは失敗を恐れなければならないという宿命を背負っており、それは冒険するにはあまりに荷が重すぎるのです。
 そうしたプロの軛(くびき)から逃れるために、職業作家でありながら同人活動を手掛ける方もいると聞きます。
 アマチュアの作品のレベルが高くなり、プロの作品を超えて人気を博すような事態は、単純に考えるとプロにとって危機的状況であるように思えますが、そのように悲観するのではなく、マニュアルやセオリーに倣う合理的な手法を見直す良い機会だと捉えればよいのではないでしょうか。プロがアマチュアのやり方から学ぶものは少なくないと思います。
 プロの作品よりも同人の創作の方が面白い、そんなことを言う人は少なくありません。筆者も同じようなことを感じた経験があります。プロの見え見えの売れ筋ねらいよりも、素人の意外性の方が面白い、なんていう意見もよく耳にします。

 アマチュアの技量が向上すると、プロの技術力に見る側はあまり驚かなくなります。技術レベルが低くても、ストーリー性や発想、キャラクター性で人々に感銘を与えることができます。
 専門知識が少なく既成概念に捕われないアマチュアイズムは、時として斬新で優れた作品を産み出します。一方、短期間に専門知識と技術を叩き込まれたプロは、そのせいで感性を曇らせてしまうこともあります。商品化という目的のために、作りたい作品を思うように作れないという苦悩とも戦わなければなりません。
 アニメやコミック、ゲームの業界は、他の様々な芸術作品の業界に比べ、アマチュアイズムの導入および共存という点で優れています。そしてそのことが業界のパワーにもなっています。アマチュアイズムとは、やりたい作りたいという思いに最も忠実な、言わば基本を見つめなおす作業なのかもしれません。それゆえの強さがあるのです。
 オタク業界において、アマチュアイズムは今後も大きな力を発揮し続けるでしょうし、そのことが業界の仕事を疎外するとか、著作権が脅かされると言ってアンチアマチュアを唱える人たちは大敗を帰することになるでしょう。アマチュアが大いに活躍できることこそが業界の繁栄の力であることを知り、プロもアマチュアから多くを学ぶべきだと思います。
 アマチュアが築くネットワークすなわち横社会は、大衆による大きな波として今後ますます世の中を良い方向に導いてゆくことになるにちがいありません。


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