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嗤う淑女【小説】

2018/05/10


 いじめられっ娘の高校生野々宮恭子は、転校生の蒲生美智留が身代わりになることで難を逃れます。しかし美智留はただやられるだけではなく、いじめの首謀者を巧妙に追い詰めてしまいます。このことで恭子は美智留と親しくなりますが、美智留はじつは恭子の母方の従姉でした。
 それから恭子は重度の貧血症で倒れますが、その時も美智留の骨髄提供により助かります。
 美智留の家に行った際、恭子は美智留の父典雄が彼女に性的暴力を働くところを目撃してしまいます。美智留は典雄を自殺に見せかけて殺す計画を恭子に持ちかけますが、恭子は敬愛する美智留の力に慣れると喜んでそれに加担します。

 月日が流れ、美智留は生活プランナーとして活躍し、恭子はその助手を務めていましたが、銀行員の鷺沼紗代から金銭トラブルの相談を受けます。過酷な仕事と女性に対して閉ざされた出世へのフラストレーションから、紗代は浪費癖がついてしまい、多額の借金を作ってしい、会社のお金も着服していました。美智留は紗代を追いつめた責任は会社にあると諭し、銀行からさらに巨額のお金を着服したうえで、それを埋める手管を教えます。近々上場される某制約会社の株が確実に利益を生むので、横領した金でその株を買えというわけです。紗代に選択の余地はなく、横領のために架空の口座を作り、口座開設に必要な受取人には恭子がなりました。
 ところが横領したあと、美智留と恭子はお金と共に消え、紗代は騙されたことを知ります。

 失業した夫が作家として成功することを夢見て職にも就かず、家計を圧迫していることに悩んでいた古巻佳恵が美智留に相談したところ、彼女は夫の保険金の額を上げて自殺に見せかけて殺す方法を伝授します。単独自殺は疑われやすいので、佳恵は夫と共に車で海に転落し、自分だけがかろうじて助かってこれを成功させます。
 ところがこの事件に疑いを持った水元刑事が事件を洗い始め、その背景にいた美智留の存在を突き止めます。そして高校時代に父親が自殺したこと、銀行員に巨額の金を横領させ自殺に追い込み、2億円が行方不明であること、助手の恭子の弟弘樹が家族を惨殺したことにも美智留が関係していたことを突き止め、そのすべてが彼女の犯行であるとして立件しようとします。

 美智留は連続殺人犯として逮捕され裁判が始まりますが、彼女が選んだ弁護士は、債務整理専門で刑事事件の経験がない宝来兼人でした。

 才色兼備の悪女の暗躍を描いたサスペンスです。蒲生美智留は高校生の頃から他を寄せ付けない美貌と、淑女然とした態度の持ち主でした。母親はなく、甲斐性なしの父に性的虐待を繰り返され、前髪の下に大きなあざを隠すという暗い素顔を寸分も表に出さず、不敵な笑みをたたえていました。
 上述したあらすじを読まれると、美智留が狡猾な悪女としか思えないでしょうが、小説本編の彼女は、思慮深く温情に満ち、生活に失敗し疲弊した女性たちを優しくいたわり、けっして見捨てることなく親身になって助言します。その淑女ぶりに読者もだまされると思います。少なくとも彼女を憎く思う読者はいないと思われます。
 清々しいまでに完璧な悪女ぶりに誰もが絶賛してしまうでしょう。彼女のアドバイスを信じ、落とし入れられる者たちは、美智留の淑女ぶりとは裏腹に、かなり凄惨な犯罪に手を染めます。
 しかしそんな才女に印籠を渡す敏腕刑事が立ちふさがります。水元刑事は、古巻佳恵が巻き込まれた自動車転落事故を偽装殺人だと疑い、佳恵を詰問し、美智留にたどりつきます。そうして彼女の過去を全て明るみにしてしまいます。
 ついに年貢の納め時です。それでもその際にも彼女は顔色ひとつ変えず毅然としています。彼女を美しいモンスターにしてしまったのは、幼い頃から彼女を性のはけ口にし暴力を揮い続けた鬼畜の父親だったのでしょうか。
 その暗澹としたシチュエーションとは裏腹に、スリリングでひじょうにおもしろいサスペンスの秀作です。

2017年、実業之日本社。
著者:中山七里。

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