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人間椅子【小説】

2018/03/31


 女流作家の佳子は、外交官の夫が出勤した後、書斎にこもり、お気に入りの椅子に身を沈め、ファンレターに目を通していました。その中に短編小説ほどの長い手紙を見つけますが、その内容は、差出人が犯した罪を告解するものでした。
 差出人は椅子作りの職人を自称し、醜悪な容姿のため世間から隠れるようにして暮らし、ひたすら椅子を作り続けているのだと言います。彼の腕には定評があり、高貴な人たちからのオーダーも多く、ひじょうに高価な品も手がけていました。
 彼は、ふとした思い付きで、重厚な椅子の中に人がひとり隠れるだけのスペースを作り、その中に潜入しました。そのスペースに水や食料も持ち込み、彼は椅子と共に出荷されました。
 大型で重厚な椅子は、彼が入っているためにひじょうに重くなっていましたが、だれも彼の企てには気づきませんでした。椅子はホテルのロビーに設えられ、彼はホテルの営業終了後に椅子を抜け出して盗みを働くという暮らしをはじめました。
 ところが、金品を盗むことよりも、様々な客が自分のひざのうえに座り、自分の胸に背をもたれさせることに奇妙な快感を覚えるようになります。薄皮1枚隔てたところに男が潜んでいるとも知らず、様々な人が彼に腰を下ろします。その感触で人の個性を見分けることができるようになります。
 狭くて暗く、身動きもできない椅子の中が、彼にとっては至福の世界になりました。
 やがてホテルのオーナーが代わると、彼を入れた椅子は売り払われ、古道具屋を経由して、女流作家を妻に持つ外交官に買い取られることになりました。

 筆者が江戸川乱歩の小説に夢中になったのは中学生の頃でしたから、40年以上前の話しです。そしてこの短編小説が発表されたのは1925年、じつに今から90年以上も前になります。筆者は半世紀むかしに書かれた小説に夢中になっていたわけです。
 その江戸川乱歩は、19世紀に活躍したアメリカの作家であり詩人のエドガー・アラン・ポーに憧れ、ペンネームを江戸川乱歩としたそうです。
 彼の作品は、名探偵明智小五郎を主人公にした一連の探偵小説から、猟奇的あるいは耽美的な怪奇小説まで、読者を独特の恐怖世界へと誘います。もうずいぶんむかしに書かれた作品なのに、現在も多くの読者を魅了し、多数の映画化、テレビドラマ化がされています。
 中学生の筆者には、20世紀前半の古い作品は、表現が古かったり難しかったり、風土的に見たことのない世界であったりしたわけですが、内容は解りやすく、感情移入もできました。この人間椅子もその頃に読んだのですが、あまりにも奇抜なアイディアとシチュエーションに背中に悪寒が走ったのを覚えています。数々の名作の中でもとりわけ印象深い作品でした。

 現在、江戸川乱歩の作品は、その多くがネット上や電子書籍で無料で読むことができます。江戸川乱歩で検索すると懐かしいタイトルは次々と上がってきます。少年時代に心ときめいた名作たちにもう1度読み耽ってみるのも悪くないですね。

1925年。
著者:江戸川乱歩。

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