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オタクと横社会

  ここでひとつ予言をしておきます。オタク文化における横社会の構築は、今後ますます成長し政治的にも大きな力を発揮し、国家を主体とする縦社会を揺るがして行きます。縦社会を否定するわけではないし、その崩壊を望んでいるわけでもありません。これは自然の流れなのです。これからの時代では縦社会は横社会から人間社会の本質を学ぶことになります。縦社会の利点は少なくないし、これまではそのやり方で国が繁栄してきたわけですが、時間と共に弊害の蓄積が進みました。中央集権はますますうまく機能しなくなり、それに反比例する形で政治の民主化が進みます。縦社会でも、横社会に倣った信頼関係のネットワークが強化され、地域格差が小さくなり、政治は人々を束ねるものではなく、人々が利用するものへと徐々に変わって行きます。経済を回すための虚飾の文化は鳴りをひそめ、文化が経済をリードしてゆくようになります。
 これは理想論ではありません。成長し続けることでしか存続できない経済の在り方が、先進国といわれる国々で限界に来ており、社会を構築するシステムが次々に破綻を来している現在、政治経済の民主化が進行することは必然なのです。言わば縦社会自身がこうなることを内包していたのです。

 横社会の実例として今もっとも顕著なものが、オタク文化の拡大とそれを維持するネットワークです。そもそも横社会というものは、人間の生活のあらゆるところに存在するありふれた人間関係の進化型です。筆者が横社会と称している事象は、そのありふれた人間関係が地域の壁を越えて成長し、大規模なネットワークを構築した状態を言います。
 縦社会は上下関係とパワーバランスで維持された、経済主体のシステムですが、その原点は家長制度であったり師匠と弟子の関係であったり、人と人との信頼関係で結ばれた自然な流れです。それが巨大化し高度にシステム化されるにつれて、人間よりも組織を重視する殺伐とした社会構造へと変貌して行きます。競争が生じそれが自衛と攻撃に発展します。
 一方、横社会はひじょうに大規模なネットワークに発展してからも人と人との信頼関係が保たれ、それが社会システムを維持します。営利目的で他人を利用するようなシーンがないわけではなく、そこから力関係による縦社会化が生じて来るようなこともありますが、それは一時的なものである場合がほとんどです。
 オタク文化における横社会では、文化というものが社会の骨組みになっており、経済効果は副次的に発生します。オタク文化に必要な情報は、ネットワーク上に垂れ流し状態で公開され、ネットワークへのサクセスができれば自由にそれを利用できます。情報の公開と取得が自由にできる環境の維持が、横社会の原動力になっており、このシステムによって人々に利益がもたらされます。
 このように分析すると、何だか堅苦しいシステムのように思えてしまいますが、オタクたちは別に横社会というものを創って、縦社会に対抗しようと企んでいるわけではないし、自分たちの行ないが横社会を構築しているという意識もないでしょう。ただ、アニメやコミックが好きで、一生懸命に趣味に生きているだけです。
 歳相応でない趣味に埋没し、自室に閉じこもってアニメやゲームに興じ、インターネットの電脳世界を泳ぎ回っている、それがオタクの実態ではありますが、その営みの中で莫大な量の情報が取引され、作品が公開され、物流が生じています。
 最近は世の中におけるオタクの認知度も上昇し、かなり年配になってからもオタクであり続ける人が増え、長いオタク生活の中で、オタク流の生き方、オタク流の人間関係が人類の未来を変えるのではないかと感じている人は少なくないと思います。その意識が横社会の原動力です。
 オタク社会には、中央集権が存在しません。地域格差や年齢性別による格差もあまりありません。情報の多くはインターネットを通じてやり取りされます。掲示板やチャット、ブログ、動画公開用のコンテンツ、それらがオタク社会のメディアであり、ジャーナリズムの専門家を必要とせずに個人の人間が自由にメディアを利用しています。あるいはネット通販やネットオークションを通じて、物が流通します。
 オタク社会では、インターネットという政治システムを個人が自由に利用することによって社会の仕組みが成り立っています。自由度と匿名性がひじょうに高いので、悪用される危険性もたいへん大きいです。しかし、悪用が蔓延すれば社会が円滑に運営できなくなるといこをほとんどの人が理解しているので、そのことが社会秩序を維持しています。自由平等は、信用と信頼の上に成り立っているのです。
 ネット社会における弊害がよく指摘されますが、実際にはそれは一握りにすぎず、システムはおおむね良好に維持されています。ネットを通じて視野を広げ、ネットを通じて知識を高め、ネットを通じて作家デビューを果たす。ネットを通じて見知らぬ人から励ましを受け、自殺を回避できた人もたくさんいます。
 この自由参加型で維持される政治システムは、人間社会の進化形として今後も発展して行き、人類の明るい未来を切り開くでしょう。オタク文化の情報交換と物流の多くがこの政治システムでまかなわれているわけですが、他の分野にもこの方法はどんどん波及して行きます。そして縦社会の中央集権システムは少しずつ、誰も気づかぬ内に機能を縮小してゆきつつあるのです。
 不況の風が吹き荒れる現在、政治批判と将来性への憂慮が人間社会に蔓延していますが、国民は何でも政治の責任にし過ぎです。高度情報化社会の強力な情報ツールを活用すれば、政治に多くを依存しなくてもやっていけることがたくさんあります。
 筆者の文筆活動の大先輩で、こんなことを予言した人がいます。「将来の政治というものは、鉄道のレールのようにあらかじめ敷かれたシステムとして存在し、人々が自由にそれを利用できるようなものになるだろう」……オタク文化における横社会の構築は、明るい未来を予感させてくれます。


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