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レッド・ファミリー

2018/03/06


 夫婦とその娘、祖父という家族構成の平凡な一家が、とある下町に越してきます。お隣さんは、夫婦とその息子、祖母という似たような家族ですが、夫婦は不仲で言い争ってばかり、口汚くののしり合う両親に高校生の息子もうんざりしています。越してきた一家が理想的な家族に思え、羨望を覚えます。
 越してきた家族は、表向きはごく普通の家族でしたが、家の中では妻役のペク・スンヘをリーダーとした北朝鮮のスパイでした。彼らは平凡な家族を装って韓国社会に溶け込み、その動向を探る諜報活動を行なうという使命を帯びているわけですが、主だった仕事と言えば、脱北者や反逆者の暗殺で、潜入生活を送りながら何人もの北朝鮮人を手にかけて来ました。
 ケンカばかりしている隣の家族を、スンヘは資本主義の限界と罵倒し、ものを大事にしない暮らしぶりも堕落であると批判していました。その反面、ご近所付き合いを重ねるうちに、次第に情がわいてくることも禁じ得ませんでした。高校生の娘を演じるオ・ミンジは、隣の息子と仲良くなりますし、隣の祖母は、祖父役のチョ・ミョンシクを慕うようになります。
 ある時、一家は脱北者家族を暗殺しますが、常に毅然とした態度を崩さないスンヘが、小さな赤ん坊を撃ち殺すことをためらいます。彼女の代わりに手を下した娘役のミンジは、スンヘを激しく非難します。
 暗殺の功績を認められ、4人は表彰されますが、その反面、隣家と親しくなってゆく様を別のスパイに監視されていました。
 そこへ、夫役のキム・ジェホンの本当の妻が脱北したとの情報が入ります。スンヘは、大きな業績を上げてジェホンの妻の脱北の特赦をもらおうと焦り、韓国の政府に内通しそのまま韓国に寝返ってしまった大物の暗殺を実践します。しかしその大物は、韓国に寝返ったことを装い、諜報活動を続けるエリートスパイだったのです。
 重大な失態を犯したチームは、死をもって償うしかありません。さらには北朝鮮に残してきた家族も無事ではいられなくなってしまいます。なんとか家族だけは助けてもらうよう懇願するスンヘに、近隣のスパイを統括している男は、チームを堕落せしめた原因である隣家を皆殺しにすることで祖国への忠誠を示せば、上層部へ掛け合ってみると言います。
 チームは隣家に赴き、再び引っ越さねばならなくなったので、最後の思い出作りに両家でキャンプに出掛けることを提案し、その家族を近くの無人島に誘い出します。

 「嘆きのピエタ」「メビウス」「殺されたミンジュ」といった問題作を次々に手掛けるキム・ギドクが、製作、脚本、編集で参加し、北朝鮮の諜報活動の実態を生々しく描いています。
 潜入スパイと言えば、北朝鮮ではおそらくかなりのエリートなのでしょう。彼らは優れた知性と格闘術を身につけ、人知れず暗殺を挙行します。しかし、その冷酷な行動の背景には、家族を人質にとられているという逃れられない宿命が横たわっています。家族を人質にとって忠誠を誓わせる政権とはいったい何なのでしょう。北朝鮮の正式名称は、朝鮮民主主義人民共和国というそうです。はぁ? と耳を疑いたくなりませんか? 世界でも有数の人の命の価値が軽いあの国が民主主義国家であり君主制ではなく共和制を重んじるとおっしゃるのです。人を人とも思わぬ軍事政権の何をもって共和制であり民主主義だというのでしょうか。
 厳しい訓練を積んでスパイを養成し、それを大量に韓国に送り込んで、いったい何をしているのでしょう。平民の暮らしの中に資本主義の堕落と限界を観察できたら、それが成果なのでしょうか。諜報活動と称し、彼らがやらされていることは、祖国を裏切った仲間の処刑と同僚スパイの監視、そして疑わしきを迅速に処分してしまうことです。軍事政権のもとで、いったいどれだけの北朝鮮の人々が犠牲になっているのでしょう。犠牲者は北朝鮮の人々だけではありません。映画の中の隣家の家族のようにスパイを堕落させたとして暗殺される韓国人もいるのでしょう。拉致される韓国人や日本人についてもその実態が公表されていますよね。

 北朝鮮から送り込まれる潜入スパイたちは、冷徹な殺戮マシーンであるわけではないようです。スンヘ班長も夫役のジェホンに、夫婦なのに触れ合うこともないともらしていますし、小さな赤ん坊に向けた銃の引き金が引けませんでした。20年以上祖国へ帰らずスパイ活動を続けるミョンシクは、息子とも会えず、孫の手をとり動物園に出かける願いもかなえられないことを、自分たちを監視するスパイ仲間にこぼしています。彼は心労から腹にリンゴの大きさの腫瘍ができています。
 これだけ悲惨な目に遇っても、人間というものは権力にはそむけないものなのでしょうか。そむけないでしょうね。日本の会社組織の中でも、社員は企業の不正に加担し、腐敗に目をつぶり、平気で仲間を裏切るのですから。会社組織が作為的に劣等社員や裏切り者を作り、見せしめ人事を行なうことによって大勢の社員を盲従させるように、北朝鮮にとっても裏切り者の存在とそれを処刑することは価値があることなのでしょう。
 権力の前で、人の命というものは本当に軽いです。そんな境遇の中で人としての尊厳を保とうとする前線のスパイたちの苦悩に心打たれます。

2013年、100分、翌年日本公開。
監督:イ・ジュヒョン。
脚本:キム・ギドク。
出演:キム・ユミ、ソン・ビョンホ、チョン・ウ、パク・ソヨン、パク・ビョンウン、カン・ウンジン、パク・ミョンシンほか。

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