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サイコ【映画】

2018/03/08


 不動産会社に勤めるOLのマリオンは、顧客が会社に支払った現金4万ドルを銀行に入金することになりますが、それをそのまま持ち逃げしてしまいます。このお金があれば恋人のサムとの結婚も実現できると考えたからです。アリゾナからカリフォルニアまで車を飛ばす途中で中古車店で車を乗り換え、モーテルに一泊することにします。
 幹線道路ができたせいですっかり寂れてしまったモーテルには他に客がおらず、ホテルを切り盛りしている青年ノーマンが詰めている事務所の隣の部屋を借りることになります。
 ノーマン自身の家はホテルから少し離れたところにあり、そこで彼は病床に伏している母の面倒を見ていると言います。マリオンが部屋にいると、ノーマンの家から彼と母親の言い争う声が聞こえてきました。若い女性を宿泊させることを母親はあからさまに嫌悪していました。
 そしてマリオンがシャワーを浴びていると、何者かがバスルームに近づき、彼女をナイフで何度も突き刺しました。
 ノーマンは、バスルームに倒れているマリオンを見つけると、彼女が乗ってきた車のトランクに彼女と彼女の持ち物を詰め込み、近くの沼に沈めてしまいます。部屋の血や指紋も綺麗にふき取り、マリオンが泊まった痕跡を消し去ります。
 マリオンの妹ライラは、姉が会社のお金を持ち逃げしたことを知り、私立探偵のアーボガスと共にサムの店を訪ねますが、サムはマリオンの行方を知りません。3人はマリオンがサムの元を訪れる途中で事件にあった可能性を考え、彼女の足取りを追い、ノーマンが経営するホテルにたどり着きます。

 今から60年近く前に作られた鬼才アルフレッド・ヒッチコックの名作です。まさにサイコ・サスペンスの原点ともなった古典作品です。こんなむかしにサイコパスすなわち精神疾患により反社会的人格と化した人間による殺人という題材が存在したんですね。わけても多重人格(解離性同一性障害)を持つ人間は、自分の知らない別人格が、自分の覚えのない行動をとるという信じがたい症状を発症します。中には何人もの人格がひとりの肉体の中に存在し、その中の異常性格者が殺人に手を染めてしまうという現象もあるそうで、しばしば小説や映画の題材になります。
 多重人格障害は、幼少の頃に身近な人間から虐待や性的暴行といった耐えがたい暴力を受け、それから逃れるために別人格が生まれると説明されることがあります。犯罪を犯して逮捕され、複数の人格の存在が認められたような例が実際にあるそうです。もともと温厚な性格だった人間が、逃れられない暴力によって別人格が育まれ、虐待を受けているのは他人であるかのような錯覚を覚える、そんなことがあるのだそうです。人格の解離はその後さらに進み、様々な別人格がひとりの体の中に共存し、表向きにはそれぞれの人格が交代で現れます。
 ひとつの人格が具現している時は、別の人格は眠っていて、目覚めている人格の行動を覚えていません。ひじょうに厄介ですね。

 この作品以降、数えきれないほど多くのサイコ・サスペンス(あるいはサイコ・ホラー)が製作されました。そしてこの題材は今なお鮮度を保っており、これからも多くの作品が作られることでしょう。
 この作品は、ジャネット・リーがゴールデングローブ助演女優賞を受賞しているほか、アカデミー賞4部門にノミネートされています。しかし、これ以降に作られた多くのサイコ・サスペンスは、描写がどんどんグロテスクになっていくせいもあってか、俗悪な娯楽映画、あるいはB級作品の位置づけに甘んじています。ひじょうに残念です。このジャンルで高尚な作品と評されたのは「羊たちの沈黙」くらいではないでしょうか。

 むかしの作品は、ストーリーがシンプルでいいですね。そしてこの作品のようにおもしろいものに巡り合えると、また古い作品を観たくなってしまいますが、SF作品にはご注意ください。古典的SFの傑作と称されるものの中には、何が起きているのか、何をやっているのかさっぱり解らない、そんなものもあります。人々の感性や考え方が時と共に変わってゆくことを実感させられます。まるで言葉の通じない異国の文化に触れているようです。
 その点、この「サイコ」は、今なおひじょうに解りやすく、登場人物たちの心情もリアルに伝わってきます。違和感なくおもしろいと感じることができます。

 ノーマンを演じたアンソニー・パーキンスですが、その後「サイコ2(1983)」「サイコ3(1086)」「サイコ4(1990)」と、同じノーマン・ベイツ役で出演しています。3では監督も務めています。よほどこの作品とノーマンが気に入ったのでしょう。これらの作品はストーリー的につながっていますから、ノーマンやライラが今度どうなってゆくのかが描かれています。興味深いですね。

原題:Psycho。
1960年アメリカ、109分、同年日本公開。
原作:ロバート・ブロック。
監督:アルフレッド・ヒッチコック。
脚本:ジョセフ・ステファノ 。
出演:アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー、ヴェラ・マイルズ、ジョン・ギャバン、マーティン・バルサム、ジョン・マッキンタイア、サイモン・オークランド、フランク・アルバートソン、ルーリン・タトル、パトリシア・ヒッチコック、ボーン・テイラー、ジョン・アンダーソン、モート・ミルズほか。

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