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DISTRNY 鎌倉ものがたり【映画】

2018/01/27


 これまで異性とは疎遠だったミステリー作家一色正和が、臨時で来訪した編集担当の亜紀子に一目ぼれし、彼女の方も正和に惹かれ、電撃結婚することになります。2人が暮らすことになった鎌倉はひじょうに古い町で、妖怪や死者、死神が生者と普通に暮らしています。亜希子はそんな奇妙な町の暮らしにもすぐに慣れ、家に住みついてしまった貧乏神にも優しく接します。
 貧乏神は亜希子の優しさに心打たれ、一色家を没落させることなく家を去り、その際に彼のわずかな元物の持ち物のうち亜希子が気に入った古い茶碗を授けます。代わりに亜希子は100均で買った茶碗を貧乏神に譲ることにします。
 ある時、石段でつまずいた亜希子は妙な違和感を覚え、死神から、自分が肉体から分離してしまった霊体になってしまったことを知らされます。彼女の肉体はけっきょく見つからず、このままでは黄泉の国へ行くしかありません。
 正和は、親しくしていた元編集担当の本田が亡くなった際に、一定期間家族の近くに留まれるように死神に計らってもらったのと同じように、亜希子をこの世に残してもらえるように死神に頼みますが、それには彼の生きている時間を削るしかないということで、亜希子は自分のために正和の命を削るのは耐えられないと、黄泉の国へ行くことを決意します。
 どうしてもあきらめられない正和は、亜希子の肉体を探し続け、それが突然死んで家族の元を去らなければならなくなった女性の霊に乗っ取られていることを突き止めます。死神が言うには、亜希子はまだ死ぬ予定ではなかったし、肉体がこの世に存在するなら元に戻せるとのこと。しかし時すでに遅く、彼女の魂は黄泉の国へ行ってしまったのです。
 正和は、彼が敬愛していた幻想文学作家甲滝五四朗の未完の原稿から黄泉の国へ行く方法を見つけ出し、そこへ向かう列車に乗るのでした。

 ミステリー作家の一色正和の元に嫁いできた亜希子にとって、彼の住む古い町鎌倉は、ひじょうに神秘的なところでした。幽霊や妖怪が普通に存在する町、そんなところで果たして上手くやってゆけるだろうか。しかし彼女はすぐにそこに馴染んでしまい、妖怪たちの市場で平気で買い物をするほどになります。これには観ているこっちが驚かされました。家に居ついてしまう貧乏神とも仲良くなってしまいますし、亜希子はじつは誰よりも超常的なものと相性が良いようです。
 彼女はまたひじょうに好奇心が強く、正和から決して除くなと厳命されていた納戸の中に入り、あれこれ物色します。そのおかげで甲滝五四朗の未完の原稿を見つけ、それが後に彼女を助けることになります。旦那の言いつけを守らなくて良かったですね。彼女はまた正和が嫌う貧乏神とも仲良くなってしまいますが、そのおかげで古ぼけた茶碗をもらうことになり、これもまた後で重要な役割を果たします。
 でも、彼女の好奇心が良いことづくめというわけでもありません。妖怪たちの集う通称"夜市"に嬉々として突入し、魔界松茸を買って食したおかげで、魂が抜けやすい状態になり、そこを邪鬼に付け入られてしまいます。

 江ノ電の鎌倉駅から終電後に出発する黄泉行きの列車は、死した人の魂が死神に付き添われて乗車するレトロな電車通称単コロに乗りますが、正和は黄泉の国に行ってしまった亜希子を追って生者でありながらそれに忍び込みます。
 単コロが快走する黄泉の国は、中国の山水画に出てくるような切り立った山々と雄大な川が混然一体となった世界で、絶壁にたくさんの古民家が並んでいます。でもこれは正和の心が描き出した黄泉の国で、その光景は見る人によって異なるのだそうです。
 スリリングな立体感は3D映像で観るとさらに圧巻だったろうなぁ、そう感じました。さすがは作家の心が描き出した世界ですね。壮観です。

 しかし黄泉の国に着いてみれば、亜希子をさらった張本人である天頭鬼が彼の前に立ちはだかります。死神が言うには、天頭鬼は人間の欲や業が積もり積もって誕生した妖怪なんだとか。
 滅茶苦茶強そうなこの怪物から、どうやって亜希子を取り戻しましょう? そんな時、正和の頭に警戒する甲滝五四朗の言葉が蘇ります。お前も作家なら想像力で戦え。
 この言葉は筆者の胸にも響きました。皆さん、想像力ですよ! 人間が生きて前に進むには想像力が必要です。困難に立ち向かうためには、想像力が欠かせません。想像力というのは妄想や空想だけではありません。知恵をしぼるには、難題を解くための論理を働かせるには、想像力が必要です。これはこの作品の最も重要な教訓です。

 数々の魔物や妖怪、死神、そして壮大な黄泉の国を含め、ひじょうにノスタルジックでオリエンタルで、宮崎駿の世界にも通ずるものがある、そう感じました。それらは古風ではあるけれど江戸時代やそれ以前の古さではなく、日本の近代文明が成長しつつあった頃、和の文化に西洋からの舶来文化が流入して来た頃、和の伝統に洋が混ざってゆく頃、そんな時代を思わせる古さです。作家一色正和は一貫して和服ですが、死してカエルの妖怪に変じた本田は洋装でした。死神は白髪の若い娘で、背広に山高帽という扮装でした。
 現在、伝統的な文化の多くが遺物と化してしまいましたが、日本人の心の中には郷愁めいた思いと共にそれらが今も息づいていますし、若い作家が生み出すファンタジーの世界にも息づいていて、海外へ向けて広く発信されています。

2017年、129分。
原作:西岸良平。
監督、脚本:山崎貴。
出演:堺雅人、高畑充希、堤真一、安藤サクラ、田中泯、中村玉緒、市川実日子、ムロツヨシ、要潤、大倉孝二、神戸浩、國村隼、古田新太、鶴田真由、薬師丸ひろ子、吉行和子、橋爪功、三浦友和ほか。

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