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ユダヤ人を救った動物園〜アントニーナが愛した命〜
【映画】

2018/01/20


 1939年ポーランド、ワルシャワ。ワルシャワ動物園は、欧州最大の動物園として高貴な人たちにも人気がありました。ヤン・ザビンスカとアントニーナ夫妻は、たくさんの動物たちの世話に追われる日々を送っていましたが、やがてドイツ軍がポーランとに侵攻し、動物園も戦火に見舞われました。
 動物たちにも多大な犠牲が出ました。ワルシャワに駐留するドイツの軍人ヘックは、平時は科学者として活躍しており、希少動物の保護を買って出ますが、それでも多くの動物たちが戦時下では飼育不能ということで射殺されました。
 ヤンとアントニーナ夫妻にはユダヤ人の友だちもいましたが、ドイツ軍はユダヤ人を強制収容区ゲットーに連行し、町からユダヤ人はいなくなりました。
 動物園には、メンテナンスのための地下設備がありました。ヤンはそこにユダヤ人たちを匿うことを提案し、アントニーナもそれに賛同します。
 2人の計画はこうでした。駐留するドイツ軍のために動物園で豚を飼育する。餌は、大勢のユダヤ人が生活するゲットーで出る生ゴミを与える。豚肉が供給されることを喜んだドイツ軍がこれを許可すると、ヤンはトラックに乗ってゲットーに侵入し、満載した生ゴミの中にユダヤ人を少しずつ忍ばせ、動物園の地下へ運ぶ。計画は上手く運び、2人は大勢のユダヤ人をゲットーから連れ出し、地下に匿うことに成功しました。

 地下室のユダヤ人たちは、昼間は睡眠をとり、夜間のドイツ軍の監視がゆるむ時間帯に活動するという不自由な暮らしを余儀なくされましたが、過密状態で病気が蔓延するゲットーの暮らしよりも、動物園はずいぶんましでした。日が暮れて安全が確認できると、アントニーナはピアノを弾き、それを合図にユダヤ人たちは夫妻の住む屋敷に上がってくることができました。
 ある時、ヤンの知人のユダヤ人昆虫学者が動物園に残していった標本を見に、ゲットーからドイツ人科学者が訪ねてきました。彼はヤンとアントニーナの計画に気づいており、ゲットーの主要施設から町の外へも出られる通行証を手渡します。科学者仲間ということでゲットー内で自由に動けるようになったヤンは、より多くのユダヤ人を救うことができるようになりました。

 このお話しは実話で、ヤンとアントニーナ夫妻は、300人以上のユダヤ人の救出に成功しています。そしてワルシャワ動物園は現在も営業しているそうです。
 権力者が残忍な大量虐殺を好み、大勢の軍人が嬉々として弱者をなぶり殺す異常行為に手を染める、あのカラクリはいったいどういうものなのでしょう。軍律のもと異国の弱者を虐待したり殺したりすることはそれほど楽しいのでしょうか。権力者にとって多くの人の人生を破壊するというのは、最高の栄誉なのでしょうか。権力とそれにかしずく体制というものは、人間の最も醜い恥部にしか思えないのですが、それがヒロイズムとして喧伝され世界中に蔓延しています。
 しかし大勢の人々がそんなものを信望してはいないでしょう。戦争による虐殺も個人的な殺人も同じです。そんなものが正義であるはずがないのです。反戦映画を作る人はひじょうに勇敢ですね。それを上映する興行主もすごいと思います。映像の中で兵士を愚者のように描き、それに立ち向かう人たちをヒーローとして描くことは、ヤンとアントニーナと同じように尊い行ないだと思います。

 アントニーナを演じたジェシカ・チャステインは筆者にとっては「女神の見えざる手」の名演がひじょうに鮮烈で印象的だったのですが、今回の彼女は、情愛にあふれた優しい女性で、飼育動物たちに対する愛情に等しく人命に対しても愛を注ぎます。愛する動物たちを戦争の下に虐殺した人間の愚行にうんざりしたりしません。救える命は危険を顧みずに救おうとします。「女神の見えざる手」のエリザベス・スローンとは対照的です。エリザベスとアントニーナを演じ分けるなんてすごいですね。
 映画のタイトルは、アントニーナを称賛していますが、動物園にユダヤ人を匿うことを思いつき提案したのはヤンで、身の危険を顧みずゲットーから大勢のユダヤ人を連れ帰ったのも彼です。彼の不在の間、動物園でユダヤ人たちを匿い続けたアントニーナの勇気も素晴らしいですが、ヤンはそれ以上の危険を冒していますから、等しく讃えられるべきですね。ただ、あの時代の女性の活躍というのが驚異的だったのかもしれませんが。
 日本の国営放送は、歴史大河ドラマと称して、世に戦火をもたらした権力者たちを礼賛し続けていますが、筆者は人間社会を真に支えてきたのは、市民の努力だと信じたいです。

原題:The Zookeeper's Wife。
2017年チェコ/イギリス/アメリカ 、127分、同年日本公開。
原作:ダイアン・アッカーマン。
監督:ニキ・カーロ。
脚本:アンジェラ・ワークマン。
出演:ジェシカ・チャステイン、ヨハン・ヘルデンベルグ、マイケル・マケルハットン、ダニエル・ブリュールほか。


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