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氷菓【映画】

2017/12/14


 高校に入学した折木奉太郎は、灰色の省エネ主義で高校生活を無難にやり過ごそうと考えていましたが、海外放遊中の姉からの手紙で、古典部に入部させられることになります。姉もここ神山高校出身の元古典部、誰も入部するものがいなくなればその伝統を継ぐものがいなくなってしまうというのです。
 奉太郎はまったく気が進まないまま、部活に使っている理科準備室の鍵を開けますが、そこにはすでにひとりの少女がいました。千反田えるは千反田財閥の令嬢ですが、お嬢さまであることを鼻にかけない気さくな娘でした。でも、奉太郎が鍵を開けて入らねばならなかった教室に、えるはなぜ先に入っていたのでしょう。「わたし、気になります」知らず自分が教室に閉じ込められていたことに疑問を抱いたえるが、好奇心いっぱいの目で奉太郎を見つめます。
 省エネ主義の奉太郎には、できれば関わりたくない問題でしたが、解決するまで彼女の気がすみそうもありません。仕方なく知恵をめぐらせ、密室トリックを解決します。
 奉太郎の推理力に興味を覚えたえるは、自分のとっておきの謎を彼に持ちかけます。すなわち彼女が幼い頃に一緒に過ごしていた伯父が、失踪する前に彼女に伝えた言葉が思い出せないので、それを知りたいというのです。
 なし崩し的に入部してきた福部里志と伊原摩耶花にも背中を押され、奉太郎は、不承々々えるの依頼を引き受けることになりますが、えるの伯父もやはり神山高校の出身で、古典部の文集「氷菓」が発行された33年前、叔父は古典部の部長をしていました。
 こうして4人の古典部部員たちは、失踪した伯父関谷純がえるに残した言葉を探す調査を始めることになります。

 もうずいぶん前に読んだ小説ですが、映画化されるということで観に行くことにしました。小説は2001年に刊行されています。千反田財閥のご令嬢える様が「わたし、気になります」と大きな瞳を輝かせたら、もう誰も止めることはできません。やらなくてもいいことに骨を折る、それは折木奉太郎が最も避けて通りたい事象でしたが、その彼を追いつめ動かす力を、えるの瞳は持っているのです。
 幼少の頃に伯父から聞いた言葉を思い出させろ、えるのそんな無謀な依頼を何事にも消極的な奉太郎が推理するハメになります。自分が聞いて思い出せないことなら、専門家に頼んで催眠術で聞き出してもらえ、とは奉太郎に言わせない眼力をえるは持っています。

 えるの伯父関谷純が神山高校に在籍していたのは、今から33年前。学生運動が猛々しい昭和時代と言うことですが、筆者が高校生だったのが40年ほど前のことになり、その頃にはすでに学生運動は遠い過去の記憶になっておりましたから、この映画のエピソード自体が現在よりも古い時代、原作が書かれたことのお話しなのでしょう。
 1960〜1970年にかけて、日本でもそしてアメリカでも大学生たちによる政治的行動が過激化し、多くの死傷者がでる事件が多発しました。時の大学生たちは国の未来を憂慮し、政治に対して実力行使で反対運動を行なったんですね。学生運動の先駆けとなるのは、安保闘争すなわち日米安全保障条約に反対する市民団体や学生たちによるデモや抗議運動かと思われます。
 この映画に登場する学生運動は高校が舞台で、高校生による学生運動というのはほとんど記録に残っていません。その実態は、大学生のような直接的な政治活動ではなく、学校の生徒に対する処遇に反対する抗議活動といった形のものだったようです。
 関谷純が33年前に経験した神山高校での学生運動では、生徒たちの結束を阻むために学校側が一方的に文化祭を中止し、そのことがかえって学生たちを団結させてしまったというものでした。文化祭中止に反対する生徒たちの運動は過激化し、校舎が焼ける事件に発展してしまいますが、けっきょく学校側が折れることで解決します。学生運動は功を奏したわけですが、火事で事件が世間に明るみになった以上、誰かに責任を取らせなければならないとし、関谷純は退学処分になっています。
 学校が話し合いもなく一方的に文化祭を中止するという、運動の発端を作ったのに、すべての責任を生徒に追わせて自分たちは難を逃れるという卑劣な策が講じられたわけですが、これに抗議したり、後世に伝えようという動きはなく、みんなで見て見ぬふりをしました。

 奉太郎たち復活した古典部によって、神山高校の悲しい歴史が浮き彫りにされたわけですが、えるが求めた答えが何だったのかは映画を観てください。
 しかしそれよりもミステリーなのは、奉太郎の姉が古典部入部を進めたのは偶然だったのか、神山高校の歴史を解明する鍵を握るえるが同じように入部してきたのは偶然だったのか、ということです。そしてもうひとり、当時の事件を経験した人物が教師としてこの高校に在籍しており、彼女も重要なアイテムを持っています。劇中には姿を現さない奉太郎の姉は、何を知っていたのでしょう。
 そしてもうひとつの謎、女性とたちのセーラー服の白線が、最初は2本だったのですが、途中から3本になります。そして最後にまた2本にもどります。これはえるや摩耶花の個人的な趣味ではなく、全校生徒で起きています。気づかなければどうってことないのですが、気づいてしまうとゾッとします。自分の記憶が疑わしくなります。まぁ、どうってことないのですが、この謎も解いてみてください。

 学園ミステリーとしては、ちょっとユニークで面白い作品でした。原作と合わせてお楽しみいただきたいと思います。

2017年、114分。
原作:米澤穂信。
監督、脚本:安里麻里 。
出演:山賢人、広瀬アリス、小島藤子、岡山天音、本郷奏多、斉藤由貴ほか。



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