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ミスター・ノーボディ【映画】

2017/10/03


 西部で名の知れた早撃ちガンマンのジャック・ボレーガードは、年齢と共に老眼が進み、引退しヨーロッパで余生を送る決意をしていました。彼の命を狙うガンマンはたくさんいて、食事中もひとりの若者が爆弾の入ったバスケットを届けに来ました。若者は、ジャックの華々しい生涯について語り、最後に盗賊団ワイルド・バンチをやっつけて有終の美を飾るべきだという話しをします。
 自らノーボディ(誰でもない)と名乗った若者は、ジャックを彼の弟レッドの墓に案内し、復讐を焚きつけます。レッドと共に強盗を働いたサリバンは、独占した金で事業をして大儲けしていました。
 サリバンは、ジャックを恐れ刺客を雇いますが、ジャックはそれを退け、サリバンの許を訪れます。しかし彼は弟の復讐をすることもなく、サリバンからそこそこの金をせしめて立ち去ります。
 サリバンの鉱山で採掘された金を積んだ列車を奪ったノーボディは、引退のためにニューオリンズへ向かう列車を待っていたジャックのところへそれを差し向けます。そしてそれを追って総勢150人のワイルド・バンチが迫ってきます。ジャックはライフルを手にワイルド・バンチを迎え撃つしかありませんでした。

 1960年代にマカロニ・ウエスタン(イタリア製西部劇)を大ヒットさせたセルジオ・レオーネが原案、製作総指揮を務め、彼の弟子トニーノ・ヴァレリーが監督を務めた大作です。トニーノ・ヴァレリーのマカロニ・ウエスタンと言えば「さすらいの一匹狼」「怒りの荒野」があり、セルジオ・レオーネは「荒野の用心棒」でマカロニ・ウエスタンを世に知らしめ、「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」と合わせて三部作を人させたあと、「ウエスタン」「夕陽のギャングたち」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の新三部作を世に送り出しています。
 セルジオ・レオーネはマカロニ・ウエスタンの父として知られていますが、作曲家エンニオ・モリコーネとの関係も有名です。彼の代表作はいずれもエンニオ・モリコーネが音楽を担当しています。そしてこの作品の音楽もエンニオ・モリコーネが作曲しました。
 マカロニ・ウエスタンの開祖とも言われるセルジオ・レオーネ一家が産んだ西部劇ですが、その後は観るべき作品はなく、これが最後のマカロニ・ウエスタンであるとも評されています。……そうですか、マカロニ・ウエスタンが終焉を迎えてもう40年以上になりますか。
 古い映画をもう1度観ると、ずいぶん色あせて見えることが少なくありませんが、この作品は今観てもやはりおもしろいです。エンニオ・モリコーネによる音楽にも心が震えます。この作品は喜劇として作られましたから、テーマ曲もコミカルな作風になっていますが、往年のマカロニ・ウエスタンの雰囲気は活きており、思わず「さすがだ」と感嘆してしまいます。

 主役のテレンス・ヒルと言えば「風来坊」「風来坊供廚離泪ロニ・ウエスタンを思い出しますが、この作品は雰囲気的にその続編といった感じがします。「風来坊」もコメディタッチの作品で、テレンス・ヒルはトリニティというガンマンとして大活躍します。ノーボディの風貌とコミカルな雰囲気がトリニティを思い起こさせます。この作品では、名無しの権兵衛に徹した彼は、名声を名優ヘンリー・フォンダ演じるジャック・ボレーガードに譲っていますが、ただの傍観者というわけではありません。ジャックの華麗な幕引きを演出するために立ち回る彼こそが、やはりこの映画の主役です。
 なにも求めず、目的もよく判らない、名無しの風来坊を決め込んでいますが、ジャックに憧れ続けていること、彼の引退は認めるが歴史に名を残す引き際を見せてほしい、そんな奇妙な野望はハッキリしています。
 それにしても西部に名をとどろかせる早撃ちガンマンとは言え、単身で150人のワイルド・バンチを相手にすることなど可能なのでしょうか。決め手は、盗賊団が列車を襲う武器としてダイナマイトを調達し、それをバックルに入れて持ち歩いていること、バックルには派手に輝く金属の装飾があることで、ノーボディはそれを知っていて、ジャックにさりげないヒントでそれを伝えます。あくまでも手柄はジャック、歴史に名を残すのはジャックです。
 ノーボディは、すでに有名なジャックにさらなる名声を与えるだけで満足なのでしょうか、彼自身の野心はないのでしょうか。もちろんそうではありません。ジャックの最後の偉業が大きければ大きいほど、彼の名を継承するノーボディの格も上がるのです。
 そしてジャックの名の継承は、1体1の決闘という形で大衆の面前で行なわれなければなりません。
 ネタバレを書いてしまいましたが、この映画はさらに奥深くて、この決闘には裏があり、意外な結末があります。素晴らしいですね、書いていてもゾクゾクします。

 ジャックは老齢を理由にガンマンを引退するのですが、時は流れ世の中の仕組みもどんどん変わり、ガンマンのような古いタイプの人間にとって西部はひじょうに住みにくくなって来ていました。まだ若く、これからここでガンマンとして生きて行こうとする君は大変だ、彼の教授が身に沁みます。そしてそれはセルジオ・レオーネのマカロニ・ウエスタンの幕引きのメッセージのようにも思えました。弟子のトニーノ・ヴァレリーもその後は作品を成功されられなかったようです。
 筆者がマカロニ・ウエスタンにハマった頃には、すでにブームは過ぎており、大作が作られることもなくなりつつあったのですが、テレビの洋画劇場では往年の名作が繰り返し放映されていました。日本公開が遅れていた作品も少なくなく、10年前に作られた映画を新鮮な気持ちで観ていたものです。マカロニ・ウエスタンを劇場で観賞したのは、この最後のマカロニ・ウエスタンが最初でした。最初だったのですが、次はありませんでした。

 1970年代、洋画ブームがハリウッド黄金時代より続いており、テレビは連日洋画劇場を放映し、書店には「スクリーン」や「ロードショー」といった洋画情報誌が平積みされていました。その情報誌に、この作品は製作前から情報が公開されており、最初のタイトルは確か「Smell of Onion」じゃなかったっけ。すなわち「タマネギの匂い」なんじゃそりゃ。中学校の同級生と笑い合っていました。でもセルジオ・レオーネだぜ、テレンス・ヒルだぜ! エンニオ・モリコーネだぜ!! 首をキリンにして公開を待ち望んでいました。

原題:My Name is Nobody。
1973年イタリア、(フランス、西ドイツ)、115分、1975年日本公開。
監督:トニーノ・ヴァレリー。
原案:セルジオ・レオーネ 。
脚本:エルネスト・ガスタルディ。
出演:テレンス・ヒル 、ヘンリー・フォンダ、ジャン・マルタン、ピエロ・ルッリ、レオ・ゴードン、ジェフリー・ルイス、R・G・アームストロングほか。

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