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隣の家の少女【小説】

2017/09/09


 1958年、ニュージャージー州。12歳のデイヴィッドは、川で独りでザリガニ採りをしていて、メグという少女と出会います。ザリガニを綺麗と称し目を輝かせるメグにデイヴィッドは心惹かれますが、彼女は隣の家のチャンドラー家に住むことになったことが判ります。彼女は事故で両親を亡くし、妹のスーザンと共にチャンドラー家に引き取られることになったのでした。
 チャンドラー家にはもともと、ウィリー、ドニー。ウーハーという3人の男の子がいて、デイビッドは頻繁にチャンドラー家に遊びに行っていました。そして3兄弟の母親ルースは、子供たちにとって魅力的で理解者でもありました。
 夏休み、デイヴィッドはこれまでのようにチャンドラー家を訪れ、メグにも会うことができたのですが、3人兄弟がメグをくすぐって悪ふざけしているところに出くわします。メグが思わずドニーの頬をたたいてしまったことを、3人兄弟は母親に言いつけます。するとルースは逃げてしまったメグの代わりにスーザンを罰するのでした。他人の顔をたたくのは危険で悪質な行為だ、それを止めなかったお前も同罪だ。理不尽な理屈で、スーザンは男の子たちの目の前でパンツを降ろされ、裸の尻を打たれます。
 それがルースとその息子たちの異常で残虐な行為の始まりでした。
 ルースはことさらメグを目の敵にし、地下室で拷問しました。縛り上げて猿ぐつわを噛ませ、息子たちに衣服を刻ませ、何日も食事もさせずにそのまま吊るしておきました。
 虐待はどんどんエスカレートし、近所の悪ガキのエディとその妹も呼んで、メグへの暴行と辱しめに加わらせました。
 子供のデイヴィッドは、ルースに反抗することもかないませんでしたが、ある夜、チャンドラー家の地下室に忍び込んだ彼は、ドアの鍵を外してメグを逃がそうとします。

 お話しの前半たっぷり3分の1は、デイヴィットたちの何の変哲もない日常が描かれます。けっこう退屈します。挫折しそうになると言えば大げさでしょうか。ところがデイヴィッドがメグ姉妹に対する虐待を初めて目撃してから、事態は急変します。その後は身の毛もよだつ少女に対する虐待の連続です。
 ルースは、華やかな外見の女性ですが、住宅ローンを残したまま夫に逃げられ、酒とたばこにおぼれる日々を送っていました。近所の子供たちに対しては他の大人には見られない理解を示し、内緒でビールをふるまったりしていました。デイヴィッドも内心ではほのかな憧れを抱いていたほどです。
 しかしながら、不慮の事故でメグとスーザンを預かることになってから、彼女の異常な性癖が顕現することになりました。スーザンは事故の後遺症で足に補助具をつけており、性格も姉とちがっておとなしく臆病でした。対する姉のメグは勝気な性格で、ルースの理不尽な言動に反抗することが多かったようです。
 ルースと彼の息子たちの攻撃はもっぱらメグに向けられ、地下室に閉じ込められた彼女は、手首を縛られて吊るされたまま衣服を引き裂かれ、裸のままでずっと吊るされていました。ルースの息子たちや近所の悪ガキたちのメグに対する虐待は、いずれもルースによって正当化され、彼らの残忍な好奇心はどんどんエスカレートしてゆきます。
 メグは体中あざだらけになり、生傷から血を流し続け、徐々に衰弱してゆきます。そしてナイフで卑猥な文字を刻まれ、重傷を負います。

 流血の多い残酷描写のホラー映画が嫌いではない筆者ですが、この作品の残忍性はすさまじいものでした。虚構の世界での暴力とは異質の生々しさがありました。それは小中学生が夏休みに体験するような日常とはかけ離れた異常で人間離れした行ないでした。
 ルースは美貌の持ち主でしたが、女ざかりを過ぎ、借金と失業に苦しんでおり、怒りの矛先を若くてきれいなメグに向けました。直情的で身勝手な理屈を並べたて、メグをなぶりものにし続けるのでした。
 子供たちは、大人から奨励される異常な体験に興奮し、屈折した欲望がどんどんエスカレートしてゆきます。この心理は中世の魔女狩りのそれに似ています。自分たちのしている恐ろしい行為が正当な行ないであると奨励され、人々は興奮して残虐行為に手を染めたのです。

 メグに対して唯一手出しをしなかったデイヴィッドは、出会いの時から彼女と心を通わせており、一緒に観覧車に乗ったり絵を描いてもらったりしていましたから、魔女狩り側の人間にはなれませんでした。そうでありながら、ルースや彼女の配下の少年たちに抵抗することも叶わず、何度も逃げ出しては、またやって来て傍観するという立場をとっていました。
 彼は親や警察に相談しようとしますが、思うように行かず、夜中に彼女を逃がそうとしますがそれも失敗、あげくの果てにメグ側の人間として地下室に幽閉されることになります。

 この小説の題材になった、1965年のシルヴィア・ライケンス事件は、公判で検察官が「インディアナで起きた最も恐ろしい犯罪」と表現しています。小説に書かれたようなことが実際にあったわけです。
 世の中にはしばしば信じられないような残忍な猟奇犯罪が起きますが、この事件は主犯の女性が子供たちを犯罪に加担させたという点でかなり特殊です。分別のない子供たちは、好奇心だけで異常な行為に溺れ、性的な興味に興奮し、被害者への虐待を増長させてゆきます。
 深い裂傷は血が止まらず、火ぶくれが破れて液汁があふれ、腫れ上がったまぶたで目を開けることもかなわないメグは、もはや醜悪な肉塊でしかなく、そこにどんな暴力を加えても少年たちには罪悪感がありませんでした。小動物をなぶり殺すのと同じ興味に突き動かされ、彼らは自分たちの性と暴力への衝動を充足させ続けるのでした。

 常識人はこのような行為を嫌悪し、自らそれに手を染めるようなことはないでしょう。しかしながら上述の中世の魔女狩りのように、異常な状況に陥った人間たちは何をするか解りません。それはこのお話しのような子供たちに限ったことではありません。魔女裁判の裁判官役のルースの残忍性こそが全ての元凶です。
 それは、自らを人を統率する者に任じ、戦争を奨励し、戦場で殺戮や拷問や破壊が行なわれるのを嬉々として眺める異常者の心理には及ばないかもしれませんが、かなり近いものがあります。他人を虐げたり、蹂躙することで自らの価値を高めようとする行為を、人間社会はしばしば奨励してまいりましたが、そうした蛮行は本来認められるべきではありません。それを認めるのはまともな人間社会ではありません。

 この小説は、デイヴィッドを語りべに、彼の目線で描かれている点で、反犯罪的であり、このお話しを読んで残忍性に目覚める人は少ないと思います。バイオレンスホラー好きの筆者ですら目覚めませんでしたから。
 そしてデイヴィッドは、生涯を通じてこの体験を悔い続け悩み続けることになります。

原題:The Girl Next Door。
1989年発行、アメリカ。
著者:ジャック・ケッチャム。

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